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コワーキングにおける弱いつながりの価値:今日のアウトテイク#254(2024-07-29)

<アウトテイク>
・SNSに投稿するのではなく、これを自分SNSとした投稿
・記事として仕上げる前の思索の断片、または下書き
・一部、筆が乗ってきて文字数多いのもあり〼
・たまに過去に書いたネタを展開する場合も
・コワーキング関連のネタが多め
・要するに「伊藤の現在地点」
・いずれKindle本にまとめる予定


#今日のBGM

#今日のコトバ

"おそらく、人が言いたいことは子供の頃に形成され、それを言おうとして残りの人生は費やされる。"
(バーバラ・ヘップワース)

“Perhaps what one wants to say is formed in childhood and the rest of one's life is spent trying to say it.” –Barbara Hepworth Photo by Sebastian Łuczywo

Posted by Memphis Muse on Thursday, July 25, 2024

#『あまから手帖』のオススメ

毎月、楽しみにしている『あまから手帖』の今月号の特集は「カレーの夏、ニッポンの夏!」。いや、なんか、夏にありがちと思ったが、そんな心配を吹っ飛ばす濃い〜内容に感服。

ぼくが言うのもナンだが、とにかくどの記事もクオリティが高い。カレーという実に大きな題材を取り上げてても、取材のひとつひとつがそれぞれに意味をなしている。被っていない。パラパラと見るつもりだったのが、熟読してしまった。あー、これがプロの仕事やなぁ、と思い知らされる。

モノ書く人、写真撮る人、編集する人、あ、その前にメディアを企画する人、読んでおいて損はないと思います。

ついでに、こういう雑誌では個人経営の店舗もよく取り上げられている。その店主たちのこれまでの来歴、理想としていること、どこを目指しているか、なんでそう考えてるのか、をごく短い文章で読める。ときにこれが、ローカルコワーキングの参考になる。いやほんまです。

ちなみにぼくは、ある記事を読んでコワーキングマネージャーもかくあるべきか、と思わせられた。勉強になります。

#コワーキングにおける弱いつながりの価値

面白いデータがある。

ボストンで新しい仕事に就いた数百人を調査したところ、1年に1回会うか会わないかの「弱いつながり」の人が、1週間に2回以上会う親しい友人の2倍近くも就職先情報をもたらしていることが判った。1973年、Mark Granovetter氏が「The Strength of Weak Ties」と題した論文に書いている。

それから50年が経って、LinkedInが2,000万人以上を調査した大規模な研究によって、弱いつながりを築くことが、実際に人々が新しい仕事を得るのに役立つことがあらためて証明された、と。

では、なぜ弱いつながりがそれほど重要なのか?

大きな理由のひとつは、彼らはあなたの親しい友人よりも、あなたに欠けているかもしれない斬新で重要な情報を持っている可能性が高い。

一方、あなたの親友は、あなたとほぼ同じ知識世界に住んでいる可能性が高く、従って、あなたにとって未知の新しい洞察に出くわす可能性は低い。

小学5年生の子は、あなたのバブル(外部と遮断された状態・区域・領域)の外側に住んでいるため、本当に重要な情報を教えてくれるのだ。

言われてみれば、そう。では、このことが、ソーシャルメディア上でどう作用しているか。

インターネットでは、信頼できるニュースソースだけでなく、「聞いたこともないニュースサイトの見出しが、見知らぬ誰かのフィルターを通してあなたに届く」。口コミでバトンリレーされる情報の中には、いわゆるフェイクニュースも含まれる。

で、絆の強さ(強いつながりと弱いつながり)が偽のニュース記事を信じるか信じないかの決定に与える影響を調べるためにオンライン実験を行った結果、参加者は、「弱い結びつきからのフェイクニュースの方が、強い結びつきからのフェイクニュースよりも信じられる」と認識したという。

これも、前述のバブルの外側(弱いつながり)からもたらされる情報が未知で斬新なものであることが多いからだろう。新奇な情報には我々はつい強い関心を寄せる。知らないと乗り遅れるという意識が働く。誰しも思い当たるのではないかしらね。

でこれをまた、コワーキングに置き換えて考えてみる。

実はこの「弱いつながり」が、コワーキングの場では多様な人間関係をもたらしてくれている。ぼくは「コワーキングマネージャー養成講座」では「紐帯」という言葉を使ってこういう図を示して講義している。

太い線が強い紐帯で、細い線が弱い紐帯。真ん中の破線で囲まれた中に強いつながりの5人がいるが、その外にも弱い紐帯でつながる人たちがいる。

ここで、重要なのは「境界連結者」という人の存在。この人がいるから、(バブルの)外へつながっていく。そのつながりをたどって新しい関係、ネットワークが広がっていく。

例えば、ある仕事案件でドローンを飛ばして映像を撮りたいとする。しかし、この5人の中にはその技術を持つ者がいない。そこで、「境界連結者」がこのグループの外からその技能を持った新メンバーを連れてくる。めでたくプロジェクトチーム結成となり無事に仕事を完了して納品する。

こんなことは、コミュニティとして成立しているコワーキングでは日常茶飯事だ。仕事に限らない。情報や知見の共有はこうした紐帯をたどって共有される。

実は、この強い紐帯と弱い紐帯は、コワーキングを利用する誰もが持っている。人のつながりを持って毎日生きていて、コワーキングにも出入りしている。

そう考えて、コワーカーのひとりひとりを見てみれば判る。ぼくらはみんな、結構広範囲な人的ネットワークを持ち歩いているということ。ま、考えてみなくても判るけど。ただ、注意しないと気づかない。

もうひとつ、コワーカーのほとんどの人が(全員とは言わない)「境界連結者」と言っていいと思っている。そもそもコワーキングは共用ワークスペースであってオープンな交流の場であるから、誰しもが利用できるのが本当だ。

であるから、人的ネットワークを持ってそこに参加すること自体が他のコミュニティとの接合点を作っていることに、本人が意識するしないに関わらず、なっている。←これ、気づいていないかもしれないけれど、そうですよ。

さらには、このつながりが他のコワーキングとのつながりに発展することもあり得る。つまり、複数のコワーキングを行き来することで、コワーカーが媒介者となり、スペース同士の紐帯を作る。

だから、コワーカーは特定のコワーキングばかりではなく、利用するコワーキングを複数持っておくほうがいい。本人にとっても、コワーキングにとっても。

と書いてたら、Cat Johnson氏のニュースレターにこういう一文があった。まったくの偶然だが、コワーキングにおける「弱いつながり」についてこう書いてる。

Granovetter氏は、「弱いつながりが、自分のサークルの外にあるネットワークにつながっている。そうでなければ得られなかった情報やアイデアを与えてくれる」と言っている。

では、この弱いつながりというレンズを通してコワーキングを見てみよう。

コワーキングスペースやコミュニティは緩やかな結びつきで成り立っている。Granovetter氏が指摘するように、コワーキングコミュニティのパワーと可能性は、このような緩やかなつながりが、私たちが自分たちの輪を広げ、アイデアや可能性、リーチを広げてくれることにある。

これはコワーキングの大きなメリットだ。

コミュニティーの構築と強化に取り組んでいるのであれば、全員が大親友でなければならないという間違った考えに屈しないこと。コワーキングスペースで簡単に手に入る緩やかなつながりの中にこそ魔法がある。

紹介をし、(スペース内外を問わず)共通の興味を持つ人たちをつなげ、メンバー同士を引き合わせる方法を見つけ、頻繁に会話を交わし、人々が何をしているかを知る。

ここからコミュニティが始まる。

おんなじこと言ってる。そうそう、弱いつながりにこそ「魔法」がある。

フェイクニュースはお断りだが、人のつながりは有り難い。たとえ弱い紐帯でも、誰かにつながる可能性はゼロではない。少なくとも、コワーキングにいる限り、必ず誰かにつながる。それは、「コワーキングの5大価値」でも言ってる。必要なときに必要な人に必ずつながる、それがコワーキング。

ということで、今日はこのへんで。

(カバー画像:Claudio Schwarz


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