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顕現 【詩】


もっとも会いそうな場所で
会ってもおかしくない人に出会う
そこにいてもおかしくない人たちに
偶然だが
当たり前のように出会う
なんの疑いの余地もない
いっけんそのように思われがちだ

現実はそれが起こってもおかしくないように
現実を装って 現実たらしめ そこに顕れる
それはぼくの現実だ
きみの現実はぼくとはまた違った様子で顕現するだろう

その人は
承認されるや否や 息を吹き返す
わたしはここにいると
ぼくはどこにいるのだろうと
地底をさまよっていると

「こんにちは」とあいさつしてくれる人がいる
ああ そうか
ぼくはここにいたんだ
あまりにそれは現実らしく成り立っている
あまりにそれは現実だとしか思えなく
ただの偶然だと 次の瞬間には
別の世界を夢想している

それは
今ここで起こっても
なんの疑いもなく/
顕現する風景は いつもと相変わらず
現実は現実を装う
とても巧みに

樹葉の中に隠れるように
それはそれと気づくこともなく
ごく当然のこととして
目の前に顕現する

あの人はなぜわたしの前に現れたのだろう
もっとも出会いそうな場所で
当然の顔をして





2014年作

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