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【詩】 幻影

ゴミ袋からのぞく
ミルクコーヒーの残骸
他者の生活に
ぼくは無理矢理に脱力する
確かにその紙片はぼくを見つめる
存在を主張する
ここに私たちが生活しているのだと
静寂の中
空気が凍る
そんなこと考えたくもないのに

此岸と彼岸のゲートを渡った
その刹那
ひとりの少女がひとり言を
まるでぼくにあびせるかのように
その言葉は空に消えていくが
ぼくは何が何だか理解できず
ぼくはまた無理矢理に脱力する
その少女はふわりふわりと宙を飛んでいるようで
ポスターをしきりに見やっていた
ぼくはゲートの奥へと彼岸の階段を上った

憂うつである
不可解なことが多すぎる
そのことで
ぼくがなぜ頭を悩ませなければいけないのか
それがまず不可解だ

辞書で言葉を紡ぐようにして
寒さをどうにか暖めようと
ぼくは鏡でも見ているのだろうか



2014年頃作

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