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【詩】 何も分からず


ぼくは
どうしてここに来たのだろう
どうしてここにいるのだろう
見上げてみると
月だけが朧に輝いている
外の世界がどうなっているかなんて
ぼくには分からない
そのドアを開けてみないと

眠れぬ夜
ぼくは消えそうになって
存在が消えてなくなりそうになって
たまらずそのドアを開けた

なんてことはなく
猫がぼくを出迎えてくれた
森閑とした夜の空気
まだ汗ばむ初秋だというに
ぼくは凍えてしまいそうで
無という世界にふるえ
子猫がふいに通りすぎ
ぼくを一瞥しては走り去った

タバコの煙は宙に消えて
何もなさそうで何かある
それは
そこになさそうで
じっとこちらを観察している
ぼくは
どうしてここに来たのだろう
どうしてここにいるのだろう

喉を潤すと
ぼくに生気が戻る
帰って来てほしいと
泣いてせがむ 子猫ちゃん

重い腰を上げた
どうしてここに来たのか
どうしてここにいるのか
本当に分からないのだ




2014年作

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