ディストピアSF作家が百田尚樹氏の発言を受けて真剣に感じたこと【発言は撤回済み】
概略
最近、日本保守党の百田尚樹代表がYouTube番組で発言した内容が大きな波紋を呼んでいます。彼は少子化対策を議論する中で、「小説家のSF」と前置きした上で、「女性は18歳から大学に行かさない」「25歳を超えて独身の場合は生涯結婚できない法律にする」「30歳を超えたら子宮摘出する」といった過激な提案を行いました。
これに対し、同党の有本香事務総長が「SFでもいくらなんでも」と指摘すると、百田氏は「時間制限を分かりやすく言った。そういうことがあるともっと深刻になる」と説明しています。また、彼は自身のX(旧ツイッター)で「あくまでSF小説としての仮定としての一例としてあげた話。現実にはあり得ないとも断っている」と述べています。
ディストピアSFの本質とは何か
すでに発言も撤回され、謝罪までされているとのことなので、私は百田氏のことをあまり声高に悪く言うつもりはないです(むしろ、永遠のゼロとかは大好きな作品で、ファンだったりします。)
しかし、ディストピアSF作家の端くれとして、私はこの発言に深い懸念を抱いています。私の作品は百田氏の1/100も売れていないかもしれませんが、それでもディストピアSFというジャンルに誇りを持っています。
ディストピアSFは、未来の社会における問題点や危機を描き出し、現代の私たちに警鐘を鳴らすためのフィクションです。しかし、その中心には常に人間の尊厳や自由への渇望が存在します。私たち作家は、抑圧的な社会に立ち向かい、変革を求める人々の姿を描くことで、読者に希望と考察の機会を提供していると思うからです。
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現実とフィクションの境界線の重要性
百田氏は「SFの仮定」として発言したとしていますが、彼は作家であると同時に政治家でもあります。その影響力を考えると、彼の言葉は単なるフィクションとして片付けることはできません。特に、女性の人権や自由を著しく制限する内容は、社会的・倫理的に大きな問題を孕んでいます。現実の政策提案のように受け取られかねないこれらの発言は、社会に混乱や不安をもたらす恐れがあります。
ディストピアSFへの誤解とその影響
また、このような発言が広まることで、ディストピアSF自体が誤解され、過激な思想を助長するジャンルと見なされる危険性があります。全国のディストピアSF作家たちは、社会の問題を鋭く捉え、より良い未来を模索するための物語を紡いでいます。それが一部の過激な発言によって歪められ、世間から白い目で見られることは非常に残念です。
現代の読者に伝えたいこと
何度も繰り返しますが、ディストピアSFは、暗い未来を描くだけではなく、その中で人々が困難に立ち向かい、自由と希望を取り戻す姿を描くことが重要と私は考えています。現代の読者にとって、フィクションは単なる娯楽ではなく、社会を見つめ直すための大切な窓口です。だからこそ、影響力のある方の発言にはいささかショックを受けました。
おわりに
百田氏の発言を機に、フィクションと現実の境界や、言葉が持つ影響力について深く考えることが求められています。ディストピアSFは、現実への警鐘であり、未来への問いかけです。その本質を正しく理解し、多くの人々に共有していただけることを切に願っています。
という訳で、(ディストピア)SF作家として、一人のファンとしてあえて言わせてもらいました。日本の政治と未来がディストピアにならないよう、百田氏と日本保守党の今後の活躍に期待します。