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【企画】あなたが言われて嬉しい言葉は何ですか

とても興味深い企画をされていたのをたまたま拝読させていただきましたので、私も勝手ながら参加をさせていただきます。

松下さんが記事でも書いているように、言われて嬉しい言葉というのは、シチュエーションで様々あると思います。何気ない一言が本当に嬉しかったりという事もあるのではないでしょうか。基本的に「嬉しい」と感じると言うのは、自分の存在を認めてくれるという事になりますので、自分を認めてくれる言葉というのは、何を言われても嬉しいものなんですが、それを言ってしまうと、せっかくの企画が台無しになってしまうので、


私がこれまで生活していた中で、一番嬉しかった言葉を頂いたエピソードをお話したいと思います。


私にはこれまでの人生の中で、「師」と仰ぐ方が二人います。一人は私を最初に拾って頂いた上司で、もう一人は私の働いていた老人ホームに入居されていた利用者様です。私はこのお二方の影響を多大に受けています。お二人の言葉の全てが私には宝物なんですが、その中でも特に嬉しかったのは、


利用者様から頂いた言葉です。


その方と私は、2ヶ月くらいしかご一緒させてもらっていません。なぜかと言いますと、その方は末期の癌で私の所に来た時には手の施しようがなく、病院でも音を上げて、病院から私の方に助けを求めて来たくらい、いつ亡くなってもおかしくない状況でした。年齢は70代男性。大手企業の重役をされてた方です。癌という病気がある以外は全く問題がなく、語弊のない言い方をすると、老人ホームにはそぐわない方でした。
もちろん事前にご家族にはうちでできるケアは納得して入って頂いておりますし、その方も納得して入って来られておます。その方を一言で表しますと、


ジェントルマンと言うのは、この人に当てはまる言葉なんではないかと言うくらい、態度、言動、容姿の全てが落ち着いてる方でした。


私がその方からお願いされてる事は、「毎日5分お話すること」ということだけです。その話というのも、その方の話を聴くのではなく、私がその方に自分の悩みや課題を聴いて頂くわけです。それはその方の願いで、


「最期の最期まで誰かの役に立ちたい」と言う気持ちからでした。


私はその願いを強制だと思ったことはありません。何故ならしっかりと私の話を受け止め、一言だけ的確な助言を頂けるからです。私はその方に敬意を込めて、御本人、ご家族の承諾を得て、


「師匠」と呼ばせて頂いてました。


師匠の言葉は本当に的確です。否定なんてされたことはないです。全て肯定された中で、「こうするとより良くなるよ」という言い方をしてくださいます。直の上司には納得出来ないことでも、師匠に同じ内容のことを言われても、腑に落ちる言い方で伝えてくださる。温かい表情で声のトーンも抑えて、身体がしんどいはずなのに顔色一つ変えずに、笑顔で迎えてくださる。本当ならば私が師匠に安心していただかないといけないのに、毎日師匠が私を安心させてくださっている。


私にとっては、この毎日が勉強させて頂いてました。


末期癌ですから、こんな時間は長くは続きません。どんな状態でも5分の時間は欲しいと言われてましたので、私は毎日決まった時間に師匠の部屋を訪問します。ある時、師匠からこの言葉を贈られました。


「君は私の最高の相棒だよ。私の全ては君に託した。この意志を繋げてくれ。」


師匠と仰いでいる方から頂いた言葉に、最高に嬉しく、また終わりが近づいていると言う現実を受け止めなければいけない悲しさが入り混じりましたが、私は涙をこらえて、「わかりました」と気持ちを込めてお伝えしました。
師匠がお亡くなりになったのは、それから一週間後です。その言葉を頂いた日から、師匠のために飲み会をしたりなど、師匠が望むことを可能な限りやりました。
師匠から頂いた言葉の全てが出来ているとは思えません。まだまだ師匠の域には程遠いです。ですが師匠から頂いた「最高の相棒だよ」という言葉は、私の人生で一番嬉しく、15年たった今でも、


ずっと残っている言葉です。





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