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氷河期世代はどこへ消えたのか?

新しい人を雇う余裕がない、教える余裕がない、お金もない、バブル崩壊後の余波で、氷河期世代の多くは非正規労働者となった。

氷河期世代が50代となり、職場において、重要な管理職の立場としていっそうの激務の中、長時間労働で酷使されている人も多いだろうが、この世代の数は圧倒的に少ない。少ないがゆえに、よけいに一部の優秀な人に業務が集中しているとも言える。
働きすぎが祟ってか、若い頃のような無理が効かなくなり、体調を崩す人も多くいる。

ある人は、大企業でバリバリ管理職として働いていた、そんなある日、目に違和感を覚えた。しかし、あまりにも忙しいので、「そのうち病院に行こう」と放置していた結果、片目を失明してしまった。緑内障だったのだ。
緑内障は、眼圧が高まる病気で、加齢とともに多くの人が経験するよくある病気だ。早期に治療を開始すれば、失明することはなかった。しかし、働き盛りで、山のような業務を必死で捌いて、受診を後回しにしているうちに、どんどんと日に日に眼圧が高まり、視神経を圧迫し、失明したようだ。傷ついた神経は戻らない。あまり知られていないかもしれないが、中途失明(生まれつきではなく後天的になる失明)の1番多い要因は緑内障である。
片目が見えない、というのはとても不便である。視野が狭くなるし、車の運転もままならなくなる。人混みを歩くのは一苦労で、白杖をもっての生活となる。

新自由主義の価値観を内面化し、バリバリ働いていた人ほど、自分が障害者になる、ということは大きなショックらしい。ほんの少しの判断の差で、人生は大きく変わる。

すべての判断を、何一つ間違えずに適切にできる自信がありますか。私にはないです。忙しい職場で、自分の代わりなんていないという職場で、病院を受診するために1日有給を取る、ということが、ちょっと前まで、本当に難しかった。最近は変わりつつありますが。
もし、この人の職場にもっとゆとりがあったら。この人の体調を一番に心配してくれる誰かがいたら。それはやばいから、休んで病院に行けと言ってくれる上司がいたら。代わりに仕事をやっておくよ、と言ってくれる人がいるような体制になっていたら。失明することはなかっただろう。

このように、病気や、障害などで、職場から離脱する氷河期世代も多くいるのではないだろうか。そう思うと、いま、この世代でフルタイムでバリバリ長時間労働をこなす人々は相当の猛者だ。多くの人たちが傷つき、疲れ、去っていったものに未だ食らいつく、恐るべき人たちだと思う。今の、若い世代のゆるさを、どのように見ているだろうか。

そして、職場から離脱していった人たちは、どうなったのだろうか?
見渡す限り、企業やなんらかの組織において、どのようなところでも、氷河期世代は少ない。しかし、相当な人口がいるはず。いったいどこで、何をしているのだろうか。
日々、何を思い、何をして過ごしているのか。管理職としてバリバリ働いていないタイプの氷河期世代にこそ、その思いを聞いてみたい。
競争社会から脱落した自分は負け組であり、自分なんかに何かを話す、語る資格はないとすら思っているのかもしれないが、そんなことはない。あまりにも、あまりにも過酷な時代だったと思う。

他人事のように言われるとムカつくかもしれないが。

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