空中小便器
小学4年生のときですかね。
お盆に父方のおばあちゃんの家に集まるのが恒例で、トイレにおしっこしに行ったんです。
その頃はちょうどボットン便所から洋式トイレに変わったばかりの頃で、自分ちにはあるのにどこか珍しい感覚になりました。
田舎の古い家に最新トイレ、教室にいる本当の子どもたちの中に1人小学生姿の上田がいるコントがリチャードホールっていうコント番組であったけどそういう違和感です。
もちろんリチャードホールに出会うのは中3とかなので当時そう思ったわけではないです。
でまぁ便座を上げて用を足しながらふと、トイレの小窓に目をやってその目を疑ったんです。
おばあちゃんちは、家|廊下|納屋、という造りになっており、トイレの小窓からは廊下と納屋が眺めるのですが、その吹き抜け屋根付き廊下の天井カド、納屋側の天井カド付近の壁に、1台の小便器が埋め込まれているんです。
埋め込まれているというか、その天井カドを挟んだ廊下奥側の壁にはエアコンが設置されており、(エアコンもこんなとこにあった覚えはないのだけれど、)それら白い色味からしても、小便器が『設置』されているという印象を強く受けました。
とてもとても不思議で興味深いその天井小便器を見ていると、トイレのドアが開いて3つ上のいとこの兄ちゃんが「わっごめん」と閉めて僕はちんちんを閉まって「兄ちゃん兄ちゃん!見て!」と声をかけて呼び戻して小便器を指差しました。
「ありゃ天狗やな」
兄ちゃんは名探偵のようにあごを指こすりしながら言い放ったんです。
「天狗なんかおらへんわ」
兄ちゃんは優しくておもろいけど嘘ばっか言うから返す刀、だって小便器を見たときに明らかに初見(しょけん)でしたから、適当言ってるとバレてるんです。
「今はおらん、先祖が天狗や、天狗は空を飛べるやろ?背中の羽根をバタバタさせながらあそこでしっこしとったんや」
「昔にあんなトイレないやろ」
「それは、改築されたんや、ほらこのトイレもボットンから改築、改築ちゃうか、改装?」
「改装でええんちゃう?」
「改装されたやろ?それと一緒やまぁある種、老朽化で安全性を守るために、城の改修もようやるやんあの、姫路城みたいに、老朽化してあんな高いとこから便器が、まぁ当時は木か竹か知らんけどそういうのでもあんな位置から落ちてきて頭打って死んだらかなんがな、せやからこのトイレと一緒に改修したんやろ」
「改装か改修かどっちやねん」
「どっちでもええねん細かいな」
「天狗なんか山でしっこでもうんこでもするやろ、てかうんこはどうしててん」
「うんこは山でしててん」
「なんでうんこだけ山ですんねん、じゃあ大便器も作ったらよかったやんあの位置に」
「それはぁ」
「てかなんであの位置やねん、空飛べるからってあの位置にする意味なんやねん」
「お前な、思うときないか?」
「なにが?」
「さっきもそうや、お前カギかけんとしっこしてたやろ」
「うん」
「俺はそんなんせんけどや、当時やと考えてみ、刀でズバーーーッて背中やられてんで自分、アホか」
「誰がアホやねん」
「身を守るためや、空飛べる武士なんかおらんからや、空中トイレを作ったんや知恵や先人の知恵や」
「まぁわかったわ、それは理にかなってるけどもやな、羽根をバタバタさせておしっこしてたんやろ?」
「せや」
「羽根、壁に当たらんか?」
「どういうことや」
「あんんんなカドやで、天井カド、なんやったら天井にもバシバシ当たるで羽根、壁と天井にバシバシバシバシ当たって羽根として機能せえへんであんな位置」
「お前どんな羽根想像してんねん」
「どんな羽根って、アニメとかで見る分くらいの羽根や、デビルマンみたいな」
「電ボ電ボ」
「でんぼ?」
「知らん?おじゃる丸の電ボ、あんくらいやで」
「えちっちゃ!いや無理やろ天狗ってだってでかいやろ人間より」
「なんやったら肩幅もないよ羽根、背中の中央から生えてて、肩からはみ出ん」
「支え切れんって、飛べんってそれでは」
「タケコプターでも飛べんねんで、あっ、タケコプターで飛んでたって説もあるわ」
「変えたやん」
「変えたっていうか説や、俺もこの目で見たわけじゃないからな、当時は竹もあったから」
「動力はないやろ竹があっても、現代でも無理な技術なんやから」
「お前マジで細かいな、いま天狗の話してんねんで?天狗なんかなんでもできるやろ」
「元も子もないこと言うなや白けるわ」
「まとめるとな、あの小便器はやな、頭にタケコプター付けた天狗が使っててん」
「想像したらめっちゃおもろいな」
「やろ?」
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