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キャッツ引っ越しセンター

ピンポーン

「きたきた、はーい」

 「おはようございます!キャッツ引っ越しセンターです!」

「あれ?」

 「下です下!」

「え、うわっ!猫!?」

 「猫です!」

「キャッツ引っ越しセンターって、猫!?」

 「キャッツなんで!みんな猫です!どんどん出していきますね!」

ぞろぞろと2足歩行の赤いつなぎを着た10匹くらいの猫が入ってきて、手際よく体の倍以上はあるダンボールや家具を運んでいく。さっき出迎えた黒猫が話しかけてくる。

 「お客さん猫飼ってます?」

「え、はい」

 「2匹ですか?」

「はい」

 「やっぱり」

「…」

 「…」

「いまは動物病院に預けてます」

 「動物病院って保険きかないんであれですよね〜」

「あー、そうすね」

 「…」

「…」

 「これキャットタワー取り替えた方がいいすね、無料で処分できますが」

「あー、いや、まぁ、持って行ってください」

 「了解です!」

そう言って4匹がかりでキャットタワーを運んで外に出て行った。その様子を1階自宅の窓から見ると、そういえばトラックらしきものが見当たらない。ベランダに出てみるとようやく見えたのが、人間の背丈の半分くらいの車高のトラックが数えると11台並んで停めてある。そこに猫たちが荷物を詰め込んでいくのだが、1台につきダンボール4つでいっぱいになっていた。キャットタワーはどうするのかと思ったらマウンテンバイクを運ぶみたいに車体のてっぺんに固定していた。

 「これで全部ですかね?」

「あ、はい」

 「ではお見積り通り、10万7千トンお願いします!」

「え?あ、10万7千円」

 「あ、お金じゃなくてですね、10万7千トン、鰹節で、塊でもヒラヒラでも粉末でも大丈夫ですよ!」

「あー、えー、ちょっと用意してないすね聞いてなかったんで」

 「あーそうなんですね、大丈夫です大丈夫です!では引っ越し先でダンボールの回収に伺った際に、今週末ですかね、そのときにお支払いいただければと思います!では時間もあれなんで先に向かっちゃいます!」

「いやちょっと」

黒猫は颯爽とトラックに乗り込んでブーーーンと10台を引き連れて行ってしまった。



タクシーで新居に到着したら、まだ来ていなかった。5分ほど中で待ってると7777(77)7777から着信があり、出るとさっきの猫が慌てた様子だった。

「申し訳ございませんお客様!うちの先頭トラックが巨大都会ネズミを轢いてしまいまして、そこから11台全ての玉突き事故で、なるべく対処して早めにお向かいします!もちろん破損したものの補償はさせていただきますのでご安心ください!」


トラックが到着したのは4日後だった。
鰹節の原木みたいなやつを車体の上に乗せたトラックが、100メートルくらい先の曲がり角まで連なっている。中はヒラヒラか粉末なのだろう。

 「このたびは、大変申し訳ございませんでした!!」

「っていうか先頭ってお前やんけ」

 「はい!!申し訳ございません!!」

猫に謝らせてる工事現場の看板を思い出しながら、頭だけ撫でて帰ってもらった。

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