落ち着かない日
今日は朝から落ち着かない。なんせ今夜21:00〜22:00のどこかで私がテレビに出るかもしれないからだ。出るというか映るというか、映る可能性があるかもというか、そんな可能性があることすら人生初なので、もし映ったらどんな感情になるのだろうとソワソワしている。
21:00ぴったりに番組が始まった。一応きのうから予約録画はしている。でもちゃんとリアタイもする。今日の一大イベント。何も知らない母親がこれ録画してるんだったら他の見ていい?と言ってくる。無視してじっとテレビを見る。冒頭から私が街頭インタビューを受けたコーナーが始まった。テレビ欄によると今日はまるまるこのコーナーをやるっぽい。なのでどの時間で私が出てくるかわからない。出てこないかもしれない。コーナーは売れっ子芸人10人が道ゆく女性たちのアンケートでランキングを付けられるというもの。私も実際に渋谷を歩いているときに声をかけられ、答えた。彼氏にしたいのは誰かみたいな質問だったと思う。そんなん分からないが、正直テレビをあまり見ないので半分以上は全く知らなくて、残りの半分は名前くらい聞いたことあるくらいだった。仕方がないので一番まだ知っている1人を選んだ。
あっ街頭インタビューが始まった。1人目の女性が喋っている。喋っていることがテロップにもされている。1人当たり5秒くらい。次から次に切り替わって女性が彼氏にしたい芸人の名前と理由を喋っているってあー私!いま私!
「え!いまのひーちゃんじゃないの!?」
「そうそう!」
母がビックリしている。
「唯一、知っているので…」というコメントもテロップになっていた。嬉しい!?なんだこの感情は!?
そこからしばらく母にインタビューされたときのことを説明したりしていて、そのまま横並びでその番組を見続けた。
スタジオに戻ってアンケートの途中結果を受けた芸人たちが文句を言ったりして面白かった。とくに私が選んだ人がめちゃめちゃ面白かった。数分後にまた街頭インタビューで女性が映し出され、右上のワイプに映った私の選んだ芸人が「可愛い」と言った。5秒後に切り替わった女性にも「可愛い」って言った。もうワイプは別の芸人になったがさっきの芸人が声だけで次の女性に「あー綺麗」って言った。次の女性にも次の女性にも次の女性にも。
番組が終わりシャワーを浴び湯船に1分だけ浸かって上がり母に「早」と言われ母が風呂の扉を開ける音を聞いてハードディスクのさっきの録画を再生し直した。早送りして自分の出ているところをちょっと通り過ぎて戻して、1回目の街頭インタビューのスタートから再生し直した。
「可愛い」
「可愛い」
「綺麗な人」
「すごい可愛い」
「可愛い」
「…」
「可愛い」
「綺麗」
「綺麗な人多いなぁ」
「可愛い」
こんな思いするとは思わなかった。そうやって能天気に生きてるから面白いのかなって思ったけどまぁ、別に、まぁ、私が我慢しよう。