小道具と結婚
「かなり説教くさいことを言うが…」
そういう話し出しをする父は初だった。
これはちゃんと聞かないとと思った。
面と向かって話すには照れ臭いのだろう。
運転中を口実に、合法的に前を向いたまま話すことができるのだ。
駅まではあと2分もかからない。
長い話ではないことが決定している。
助手席の窓から見慣れた景色を気持ち見る形を取りつつも、右耳はすごい尖らせている。
「結婚はまぁ、めでたいが、あれや、小道具やぞ、小道具と一緒や、お前のネタもあれ、なんやあれで見たぞ」
「YouTube?」
「そうユーチューブ、それで何本か見たが、わいはまぁシロウトやからわからんけど、ダンボールとかで作ったあれ手作りやろ?」
「うん」
「お前はずっと昔からああいうのばっか作っとったなようわからん」
「はは、そうかぁ」
「そうや、それであれや、ようできとるが、内容が伴ってない場合が、いや、気ぃ悪くせんといてほしいんやが、シロウトのわいから見るとな、あくまで、なんやろなぁ、小道具を作って、完成して、満足してるぅ、っちゅうか」
「あぁ、いや、まぁ」
「少なくともわいにはそう見えてん、小道具、小道具を作って、完成して、そっからが本番やぞ、ってわいはそう思うねん」
「うん、なるほどな」
「そこで満足したらあかん、小道具はゴールやない、スタートや」
「うん」
「結婚もまぁ、あぁ、着いてもたわ」
「いや、わかったわかった」
「まぁ、いつでもまた帰ってこいよ」
「うん、ありがと」
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