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Philippine Economic Briefing Tokyoを取材

日本からフィリピンへの投資を呼びかける経済会議「Philippine Economic Briefing Tokyo」が6月21日に開催された。フィリピン大使館から取材の機会をいただいたので、会場に足を運んでみた。

フィリピン政府の経済閣僚が勢揃い

会場は、三井住友銀行東館(東京千代田区)内にあるSMBCホール。

三井住友フィナンシャルグループの中島達(なかしま・とおる)社長が、フレデリック・ゴー投資・経済担当大統領補佐官を紹介する形で始まったブリーフィングは、約500人収容できる多目的ホールがほぼ満杯になるほど盛況だった。

三井住友フィナンシャルグループの中島達(なかしま・とおる)社長(筆者撮影)
フレデリック・ゴー投資・経済担当大統領補佐官

フィリピン代表団のメンバーには、マルコス現政権で経済政策を担う閣僚らが勢揃いしていた。

記念撮影に応じるフィリピン政府の経済閣僚たち(筆者撮影)


ラルフ・レクト財務長官、国家経済開発庁のアルセニオ・バリサカン長官など、壇上に立った全ての登壇者が日本企業へ「フィリピンへのさらなる投資」を呼びかけていた。

ラルフ・レクト財務長官(筆者撮影)


国家経済開発庁のアルセニオ・バリサカン長官(右)と予算管理省のアミーナ・パンガンダマン長官
筆者撮影


重要人物との交流を狙う企業担当者

この種の経済会合では、パネラーの発表が終わった後に参加者同士の交流会がある。企業の営業担当は大抵、この交流時間にお目当ての重要人物とつながりを作り、契約獲得の機会創出を狙っていく。

今回のブリーフィングには、貿易、エネルギー産業、インフラ整備を担当する各閣僚だけでなく、フィリピン経済において、非常に強い影響力を持つ財閥関係者も参加していた。

大手財閥サン・ミゲル・グループからは、ラモン・アン社長が参加していた。フィリピンの富豪ランキングで上位常連のラモン・アン氏だが、司会に紹介されると手を振りながら気さくな笑顔を見せていた。

大手財閥サン・ミゲル・グループのラモン・アン社長(筆者撮影)


そのほか、アヤラ、SM、ルシオ・タングループなど、有力財閥の関係者の姿もあった。

イベントが終わっても会場では、企業の営業担当者らによる名刺交換はしばらく続いていた。

名刺交換の熱心さや積極性をみると、多くの日本人参加者にとって、「本当に狙っていたチャンス」はこの交流の時間だったのだろう、と改めて感じた。


唯一のイスラム教徒閣僚、パンガンダマン長官

フリーランス記者である私の参加目的は、「今後の取材に役立つ情報の発掘」と「ネットワーク作り」だ。

今回は、フィリピン予算管理省のアミーナ・パンガンダマン(Amenah F. Pangandaman)長官に一番注目していた。

マルコス現政権唯一の女性経済閣僚 アミーナ・パンガンダマン長官

パンガンダマン長官は、マルコス現政権の経済閣僚の中では唯一の女性。そして、イスラム教徒として初めて予算管理省の長官に上り詰めた人物だ。長官就任前は、フィリピン中央銀行に務めていた時期もあった。

マラナオ族としてのアイデンティティ、和平プロセスの重要人物

経済スペシャリストのパンガンダマン長官にはもう一つ、他の閣僚と異なる特徴がある。それは、フィリピン南部ミンダナオの民族「マラナオ族」としてのアイデンティティだ。

フィリピン南部では、1960年代後半からムスリム勢力と政府軍の間で武装闘争が長く続いてきた。筆者がマニラで記者をしていた2014年、ムスリム勢力「モロイスラム解放戦線(MILF)」と政府間で包括的な和平合意が締結され、高度な自治への道筋が定まった。

あれから10年、「バンサモロ自治政府」の成立に向けて一歩一歩着実に前進を続けてきた。2025年5月には自治政府議会議員を選ぶ、初めての選挙が予定されている。

そして、パンガンダマン長官は現在、バンサモロ暫定自治政府とフィリピン政府間の連携機構で共同議長を務めている。

マラナオ族指導者層の家系に生まれた彼女が今、和平プロセスでの重要人物の一人になった。

「フィリピンの事典(同朋舎)」によると、マラナオとは「湖畔の人々」を意味する。元々は主として南ラナオ州のラナオ湖周辺に原住していた民族で、17世紀以降にイスラム教が普及したという。

マラナオ族はスペインやアメリカの平定・植民地化に抵抗してきた歴史がある。パンガンダマン長官の先祖や知り合いにも、占領軍や政府軍との交戦で命を落としたり、負傷したりした人がきっといるのではないか。

長く和平プロセスを研究してきた専門家からは、現政権下では大きな進展を実現するのは難しいとの分析もある。

本当に和平が実現するまで、決して楽観視はできない。

だが、マラナオ族の血筋を引き継ぐパンガンダマン長官の活躍に期待したい。

今回のブリーフィング会場で、パンガンダマン長官の秘書と仲良くなれたので、いつか単独インタビューを狙いたい。

公式プログラム日程

頂戴した温かいご支援は、取材と執筆に活用させていただきます。ここまでお読みくださり、感謝申し上げます。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。