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嘘つきバービーというバンドの話

ニガミ17才というバンドがいます。

こちらです。

この美女がメインボーカルかと思いきや、ボーカルは短パンのボブ河童おじさん。

世間的にはそんな入り口。

でも僕にとっては違いました。

このPVを見た時に僕は「岩下さんやないか!!!!!」と強烈に喰いつきました。

ニガミ17才って、え、岩下優介さんのバンドなのか!!!!!と。それは一方的で突然の再会。


この感情を語るには欠かせないバンドがいます。

岩下優介さんは以前「嘘つきバービー」というバンドを組んでいました。2002年に結成、2013年に解散しています。

こちらです。サイケデリックでありつつ曲の疾走具合はミッシェルを彷彿させるのにどこか邦楽的なロック感、そしてサブカル満載というこの雰囲気。本物か偽物かまだ判断つかない危うい感じ。この雰囲気が当時大学生、モテキのような恋に憧れまくっていた僕のハートを鷲掴みにしました。

「まだわからないけど嘘つきバービーに全部betしてみたい!」みたいな感覚だった記憶があります。

当時の邦楽のロックシーンは、大型ロックフェスが大体10周年を迎えて第一段階の成熟期というあたり。世間ではAKBかEXILEばかり流れていて、スマホもない時代でした。来場者は音楽が本気で好きな人ばかり。ロックフェスも映えるかどうか、そんなことを気にしなくていい最期の時代。

嘘つきバービーは、そんな中の2008年頃に上京。

この時、嘘つきバービーは2点でカテゴライズされやすい状況にいました。「サブカル」と「ポストゆらゆら帝国」です。

理由はわかりやすくて。

スリーピース、正体不明なプロフィール、サイケデリックな曲調がぴったり来ていたということ。そしてゆらゆら帝国の解散による、日本国内でサイケデリックロックのメインストリームが消滅した環境でした。

そんな中、嘘つきバービーは一瞬だけポストゆらゆら帝国(を探せ!)というような位置づけに立たされます。

まさにそんな状況を示しているような記事がこちら。タワレコでこんな記事が出るくらいでした。

https://tower.jp/article/feature/2011/01/05/73462/73463/73518

こちらのサイト、まだスマホ最適化もされてない時代なのが伝わります。当時は毛皮のマリーズなど、新進気鋭でサブカルチャーを体現しつつももろさがあり短命、そんなバンドが続出します。

同時進行で「森ガール」というサブカル女子が現れ、平成のサブカルチャーがいっとき沸点に達した時代感が確かにありました。(サブカル×ロックバンドの頂点のような青春群像劇のソラニンが実写映画になったりもしましたね。)

その勢いに乗って嘘つきバービーは2011年にメジャーデビューします。

が、この年この世に起きた出来事はそれ以前とそれ以後の時代の空気を明確に別世界にするものとなります。

まず一つ目に東日本大震災です。さらに、ほぼ同時にスマートフォンやLINEも急激な拡大を見せ始めます。

急速に広がる「はしゃいでていいのか」という重苦しい自粛ムードと、一瞬で広がる情報、連絡スピード、既読スルー、そして新たな概念の「映え」。

すると何が起きたか。ここからは当時音楽ばかり聴いてた僕の超主観。

急速にサブカルっぽいものそれ自体が軽薄に映り始め、実験的なロック音楽そのもののシーンも冷え込み、どちらかというとハートフルさや勇気与える系の曲が世の中に求められていきます。

少し遅れてロックフェスも突然変質し始めました。大小様々なフェスが乱立し、SNSでの映えを意識した作りこみが顕著になります。

さらに、ほぼ同時に岩下さんが病に倒れます。Wikipedia曰く「突然死するかもしれない病気を患っている。一度心肺停止からの蘇生を経験し、体にはICD(植え込み型除細動器)が埋め込まれている。」とのこと。たしかに、当時いきなり岩下さんが病に倒れライブが全キャンセルになったりしてました。

そんな中、残念ながら2013年に解散。岩下さん曰く「面白いであったり素晴らしいと思うものを共有できなくなり、このままバンドとして作品を出し続けるのは只の嘘だ。そうなった以上きちんと解散するべきだ」とのこと。

うん。。なんとなくだけど、その時は「仕方ないのかな。。」と諦めている自分もいました。明らかに時代背景的にもノレない状態でした。

その後、ギターと椅子の千布さん、ドラムのしげるさんとは離ればなれに。

ラストライブの「嘘つき、バービー」は圧巻。でもなんだか観てても悔しさと寂しさがありました。バンドがサブカルの雰囲気を消化しきれない。僕の中でも1つの音楽のノリが終わったな。と思う出来事でした。


そこから7年、僕は岩下優介さんの消息を辿ることはありませんでした。

そこに、いきなりの衝撃が走る出来事が。

芸人であり、オードリーのオールナイトニッポンはじめ多くの番組を抱える放送作家のさとみつこと、どきどきキャンプの佐藤満春さんのラジオ特番「ニッポン放送 佐藤満春のあなたの話聴かせてください」で流した曲がニガミ17才。

ニガミ17才というバンド名は知ってました。でも何故かスルーしてました。川谷絵音さんに近い雰囲気なのかなー、と去年ニガミ17才が参加したフジロックに行っても観に行くことはなく、今に至っていました。が、このタイミングで、え!!!!と衝撃の出会い。

「岩下さん!岩下優介さんやん!!」と。そこから急激に調べ始めるのでニガミ17才のファン的には超後発です。

聴けば聴くほど、PVやライブ動画を観るほどに感じることは下記。

・嘘つきバービーの頃に消化しきれなかったサブカル感があくびさんがいることでバンドの強みと魅力に転換できてること。(なんと言っても初見の人が入りやすい)

・曲そのものもサイケなのに邦楽の軽い感じ(ゆらゆら帝国、ミッシェルあたりのフォロワー的な音質感)から脱却、昇華されている感じ。ベースのノリとキーボード、岩下さんがギターに持ち替えた結果かもしれないです。

ていうかドラムもミドリのひとやん!と興奮。


ああ、まじでよかった。というか岩下さんが元気に過ごされててよかった。


岩下さんの活躍は、僕にとって本当に嬉しいカムバックです。


そんなニガミ17才は来週のさとみつさんのレギュラーラジオ、「佐藤満春のジャマしないラジオ」にゲスト出演するそうです。


ああ、本当に良かった。そんな話でした。


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