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揺れる電車に気をつけろ

友人Rには、変な人を惹きつける力がある。

公共の乗り物に乗ると、だいたい毎回隣りに独り言のでかいおっさんが座る。
バスはガラガラなのに、酒臭い男がわざわざ隣に座る。
ファミレスでちゃんと席を選んでも、隣の人が退席したあと口を押えずくしゃみするサラリーマンが座る。

常々うんざりしていた。
なんでこう、変な人が近寄ってくるんだろう。
私は決して光り輝く美人とかセクシーな体つきをしてるわけじゃない。
(本人がこう言ってたんです)


ある日Rから報告があった。
「ねえ、私こないだ珍しいことがあったの。
 電車で変な人が隣に来なかったの」


そりゃすごいね、さすがにその「力」も弱まってきたのかな。
私が言っても、なぜか彼女の顔は曇ったまま。


「でももっと悪いことが起こった」
は?
Rは語る。


電車に乗って座ってたの。そこそこ混んでたけどちらほら席は空いていて、OL風お姉さんの隣に座れた。
座ってたら駅について扉があいた。
酒臭いオヤジが乗ってきた。

いつもなら大体オヤジは私の隣か、目の前のつり革をつかんで立つ。
でも今回はそうはならなかった。
隣のお姉さんの目の前に立った。
お姉さんには悪いけど、ほっとした。


オヤジは酔ってるから、つり革と靴底を軸にぐるぐる自由運動をしてる。
前後に揺れるから、お姉さんすごい嫌そうにしてて、
「わかる…わかるよお姉さん」って勝手にシンパシーまで感じてた。
これは次の駅でお姉さん移動するかな?っていうぐらいオヤジが前後に揺れてたその時、


電車が大きく揺れた。


その瞬間、オヤジの右手がつり革をすっぽぬけて友人Rの頭にガシッ!!
頭をわしづかみにされるR!驚くお姉さんとオヤジ!!(お前は驚くな)


「私人目もはばからず、えぇ~~~!?って大声出しちゃった。
 知らないオヤジに頭わしづかみにされたらそうなるでしょ」
そりゃそうだ。


「それで結局、私は一生こういう運命なんだって思った」
「だからこれからも何か理不尽な目にあったら話聞いて」
いつでも聞くよ。



「ちなみにあんたも最初知り合ったときは不審者だったよ」
え?私?
「大学の講堂で入学式したじゃん、あのとき隣だったじゃん」
はぁ、まあそうだったね。
「眼鏡をかけたりはずしたりかけたりはずしたりしてた」
あんときは花粉がひどくて仕方なかったんだって!
「あの辺からだからね、変な人が近くに来るようになったの」

私か……。


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