見出し画像

十六本目 『柔道サマースクール@リンダウ(Lindow)』

今回は8月7~13日にベルリン郊外のリンダウという街で開催された柔道のインターナショナルサマースクールについてのレポートです。

それでは参りましょう。「はじめ!」

柔道サマースクールとは

柔道のサマースクールと言われても、あまりピンとこないとは思いますが、ドイツの夏休み期間中にスポーツ学校などで開催される柔道の講習会・交流イベントのことです。

今年で47回目の開催となったこのイベントですが、今年は10カ国以上の参加国、160人以上の様々な年齢層の柔道愛好家が集まり、共に体を動かし、柔道や形の理論を学び、講習会後には毎晩ビールを飲みながら交流会を行いました。

このLindowという街はブランデンブルグ州にあり、旧ドイツ民主共和国(旧東ドイツ)通称DDRに統治されていた街です。

今では毎年Lindowで開催されている柔道サマースクールですが、以前はフランクフルト(マイン)で開催されていました。

1989年のベルリンの壁崩壊による東西ドイツの統一をきかっけに、翌年1990年から今まで32年間この街のスポーツ訓練センターで柔道サマースクールが開催されることになります。

具体的に何をするの?

実際に柔道サマースクールでは何を行っているのか、簡単に説明します。

今回は10人ほどの指導者がゲストとして招かれ、午前・午後と決められた時間に複数ある柔道場やセミナールーム、屋外を使って各指導者が専門の講習を行います。

  • Taiso(体操)…パートナーや帯を使って柔道要素を取り入れたエクササイズ、リズム運動や柔軟運動(日本で言う体操のようなエクササイズをフランスやドイツではこのように呼んでいます)

  • 護身術…日常で使える護身術の動きや技

  • 柔道「形」(固の形/柔の形/講道館護身術)…自分の段位に合った「形」を学び講習会最終日に昇段審査を受けることができます。

  • 柔道技術(立技/寝技)…そのままの意味。技術練習です。

  • 柔道乱取…そのままの意味。乱取をします

  • スポーツバッヂ(Sportabzeichen)…ドイツオリンピックスポーツ連盟から授与される平均以上で多彩な身体的パフォーマンス(持久力/パワー/スピード/調整力)を証明する資格を取得するためのプログラム

参加者は上記の中から参加したい講習を自分で選択することができます。朝から夕方までみっちり講習に参加するもよし、体力を考慮し部屋や、カフェでゆっくりと過ごすもよし、あくまで自主的なスポーツへの参加を目的としています。

Sportabzeichnen(スポーツバッヂ)とは

ドイツスポーツバッジ(DSA)は、競技スポーツ以外では最高の賞で、ドイツオリンピックスポーツ連盟(DOSB)が授与しています。ドイツ連邦共和国の栄誉を称えるバッジであり、勲章の性格を持つ。ドイツスポーツバッジに求められる実績は、水泳、陸上競技、自転車、体操の人気スポーツをベースに、持久力、体力、スピード、調整力といった基本的な運動技能に体系化されています。また、参加者はそれぞれ自分の泳力を証明する必要があります。ドイツスポーツバッジは、日常生活での運動を奨励し、年齢、傾向、能力に応じてスポーツを推進することを目的としています。ドイツのスポーツバッジは、質的に保証された体力テストを受ける機会を提供し、それに合格することで参加者は健康に良いことをすることができるのです。「スポーツは健康である」というモットーに加え、「スポーツは楽しい」というモットーを参加者に伝えていくこと。スポーツバッジの共同準備、トレーニング、審査は、楽しみながら、コミュニティを強化し、同じ志を持つ人々とのコンタクトの確立と維持の両方をサポートするものなのです。

"Was ist eigentlich das Deutsche Sportabzeichen?"©︎Kübler Sport Magazin

スポーツバッヂとは、国民が積極的にスポーツに取り組むための制度として作られた称号のようです。スポーツの先にある目標のために集まったコミュニティの形成と強化が主な目的だと考えられます。

具体的なプログラムが見れなかったのが残念ですが、多種多様なスポーツを参加者は楽しんでいたようです。

日本人指導者のゲスト

さて、これだけ長く続く歴史と伝統のある柔道サマースクールですが、過去に多くの日本人の指導者がゲストとして招かれています。

  • スイス🇨🇭ローザンヌ柔道会の片西 裕司(かたにし ひろし)先生

  • 鹿屋体育大学教授の濱田 初幸(はまだ はつゆき)先生

  • 世界柔道「形」競技大会で2度の優勝経験を持つ小室宏二(こむろ こうじ)先生

などなど名だたる日本人指導者が過去にゲストとして呼ばれているそうです。(他にもゲストとして招かれた方がおられましたら教えてください)

この中に同じ日本人指導者として肩を並べるのは恐縮ですね。笑

ただ僕の場合は、現在在籍しているトレーナーアカデミーの指導法の実技試験のプレテストも兼ねてこのサマースクールに招待してもらっていました。

このサマースクールの主催者であるRalf Lippmann(ラルフ リップマン)通称リッピーはトレーナーアカデミーの教授であり、僕の指導担当教授でもあります。

今回は彼の好意で、講師としてサマースクールに参加しつつ、講習会の時間以外は家族と好きに時間を過ごせるようにと、家族の同行も許可してもらいました。

他のドイツ人家族とアイスを食べている息子
柔道の帯を使ったエクササイズに参加中

合宿や大会などで長らく家を空けるのは僕としても心苦しいので、このような心遣いは非常に嬉しく思います。

家庭と仕事と学業、全てを成り立たせるのはもちろん簡単なことではありませんが、家庭の調和をとることに対して協力的であるのはとてもありがたく思います。

プログラムの内容

今回僕は4日間、午前/午後1回ずつの計8回講習を行いました。
僕が指揮をとった各講習の様子を撮影した動画をYouTubeに順番にアップしていくので、興味があれば以下のリンクから見てみてください。

Day1(午前) 柔道ベーシック「崩しと引き出し」
https://youtu.be/1Ow4z-GHZT8

Day1(午後) 背負投ベーシック
https://youtu.be/cAt1oPscDow

Day2(午前) 内股ベーシック

Day2(午後) ケンカ四つ打込

Day3(午前) ケンカ四つ組み方

Day3(午後) 小内刈ベーシック

Day4(午前) 相四つ組み方「引手の切り方」

Day4(午後) 寝技「手枷」

各講習の様子を撮影した動画がYouTubeで見れますので、リンクを貼っておきます。*リンクのないものは後日動画編集が終わり次第追加していきます。

柔道サマースクールを終えての感想

様々な地域から集まった老若男女が心から楽しんで柔道やスポーツに参加している様子を見て、コミュニティの力は偉大だなと思いました。同じ場所で同じ時間を共有することで繋がりはさらに強くなります。

話を聞いていると多くの人が10年以上前からこの柔道サマースクールに参加しており、毎年楽しみにしているイベントだと聞きました。親子三代にわたって参加している方もいました。

柔道も乱取などのハードな練習をするだけでなく、いろんな選択肢の中から自分の体力や興味に合ったものを選んで取り組むことができるので、初心者から上級者までいろんなレベルの柔道家が交流できる学びや経験の場所としてすごくうまく機能しているなと感じました。

このようなコミュニティの形成が、大学卒業後や引退後も柔道を続ける理由やモチベーションになり、柔道家人口減少の歯止めになりうるかも知れませんね。

今回はこんな感じでまとめて終わりたいと思います。
ありがとうございました。それまで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?