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九本目 『自分の柔道スタイルについて考える(前編)』

Frohes neues Jahr!!(あけましておめでとうございます。)

めちゃめちゃ久しぶりのDJMです。

ドイツでは昨年11月から再びロックダウンに突入し多くの選手が畳の上での練習ができない状態が続いております。国内国外で感染者が増え続けている状況をからまだまだ終息の目処は立っていません。

これまでの2ヶ月ほどは仕事も大学の講義もオンラインですることがほとんどだったので11月には有給を取り家族で日本に一時帰国してリフレッシュしてきました。
そこでいろいろ柔道についても考え、書きたいことはたくさんあるのですが、なかなか考えを文章にするのは時間のかかることで、また子育てや大学の課題などやること多いしな〜と言い訳をし、書くことから逃げていました。

が、ここは開き直ってとりあえず書けるときになんでもいいから書いとこうと思い今パソコンに向かっています。
アウトプットしないとせっかく考えたことも忘れそうなので。

てなわけで今回のテーマは「自分の柔道スタイルについて考えよう!」です。
前回の記事で紹介したTTA(技術的・戦術的要求プロフィール)の補足的内容というか、僕が自分の柔道プロフィールを作るならどうするかを改めて考えたものになります。詳しくは前回の記事を参照ください。リンクを貼っておきます。

今回の記事の内容は日本で柔道をしてきた方はなんとなく頭で理解しているであろうことだと思います。なのでどちらかというと日本の柔道家はどのように自分の柔道スタイルを確立していくかを書いたドイツ人向けの内容とも言えます。(この記事を見ているドイツの方もいるので)

そしてそのなんとなく理解している部分を具体的に言語化、図解で可視化していくという作業になります。「そんなもんわかってるがな」と思われるかも知れませんが、一つ自分の柔道を振り返るいい機会と思って、暖かい目でご覧ください。

それではまいりましょう。「はじめ!」

試合のコンセプトを考えよう!

まずはじめに考えるのは、自分がどんな柔道をしたいか、または、できるのかということです。ざっくりとした考えでいいので思い浮かべてください。今回は相四つの場合で考えます。

ちなみに僕のコンセプトは「両手で正しく組んだ堅実な柔道」です。

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コンセプトはなんでも大丈夫です。好きなように決めてください。
・豪快に一本を取る超攻撃的柔道
・奥襟/背中も喜んで!インファイター
・投げられても寝技で決める超寝業師
・指導でもなんでもいいから絶対に勝つ!粘っこ柔道
・足技で十分。技巧派柔道
・etc...

すみません。適当に思いついたものを挙げています。

さあ自分の柔道を知ったところで次は得意技について考えましょう!

自分の得意技って何だろう?

皆さんはどれくらいの技をかけることができますか?
自分が乱取りや試合でよく使う技をTTAの図をもとに書いてみます。

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さて、挙げてもらった技の中に皆さんはいくつ得意技と呼べる技を持っていますか?もしくは試合の組み立ての核となる技は何が思い浮かびますか?

僕の場合は主に内股・大外刈をよく乱取りや試合で使っていました。そして一番こだわりを持って練習してきた技は内股なのでこれを得意技としておきます。

これも人によって様々だと思います。別に足技が得意技でも、直接ポイントには繋がらなくても寝技に移行するための支釣込足や崩しが得意技などでもいいと思います。

得意技がもっとたくさんある人もいるかと思いますが1つか2つに絞ってみてください。

自分の得意技がわかったところで次は組手について考えましょう。

得意技の威力が十分に発揮できる組手・状況は何か?

得意技をかけるとき、どのような状況が自分にとって理想的なのか考えて行きます。自分の組手の位置は?相手の組手の位置は?相手の足の位置は?

どのような状況を作りたいのか具体的に考えます。先ほど書いたように相四つの場合を想定して書きます。飛び込んで入るタイプの内股を想定したとして、以下のようなものが挙げられます。

・自分の引き手で相手の袖口辺りを絞り、相手の釣り手を落とす、または下げる。
・釣り手で前襟を持ち、鎖骨と肩関節の間に圧力をかけて相手の肩・上体の可動域を制御する。
・自分の釣り手側の肘をコントロールされないような場所を持たせる。
・できるだけ相手と自分の下半身・腰の間に空間を作れるように距離を取る。
・相手が極端な右姿勢(右足・右肩が前に出てくる状態)にならないようなポジショニング

これらの基準はいったいなんなのかというと、自分の柔道のコンセプトである正しい組手作りと、返し技や透かし技をくらうリスクをなるべく減らすための堅実な状況作りのために必要な過程を自分なりに分析して言語化したものです。

この理想的状況・条件を要約して先ほどの図のとなりに書いておきます。

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さあこれで自分の柔道の中核・根幹を成す重要なパーツができました。これからこの核となるパーツに肉付けをしていきます。

柔道の幅と深さを考える

ここで少しドイツのTTA(技術的・戦術的要求プロフィール)について振り返って見ましょう。

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このプロフィールでは選手が身につけるべき技術(組み方・投げ技・技に入る体捌き・フェイント・連絡技・連続技・変化技・寝技への移行方法・寝技)のサンプルがずらりと並べられています。

初めてこれを見たとき、ドイツの柔道スタイルは幅が広く、そして各技術が対等な関係性で独立して並んでいるという印象を持ちました。

それに対して日本の柔道スタイルは、技術の幅はそこまで広くはないが、その分一つ一つの技術を深く掘り下げていくという印象を僕は持っています。

自分の今ある状況に合わせて自身の技術・戦術も変化させるのがドイツ、どの状況でもいかようにして自分のスタイルに持っていくのが日本と言ったところでしょうか。もちろんあくまで一般的な範囲での話です。全員が全員そうではないというのは理解しています。

この違いを理解したところで、ドイツ版のプロフィールにはなかったものを付け足していきます。

組手と状況のヒエラルキー(序列)を考える

ここで行うのは、自分にとっての組手や、相手との立ち位置、置かれた状況の序列を考えるということです。

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図の右側に僕自身の作りたい試合展開の序列(優先順位)をまとめてみました。

上に位置するほど理想的なもので、下に行くほど望まない自分にとってピンチな状況となっており、同時に自身のコンセプトである正しく組んで柔道ができているかという指標にもなっています。

この序列を組手の状況に絞って要約すると以下のようになります。(この組手にした大まかな理由は図に書いています)

袖と前襟を持った2-1もしくは2-0の絶対的チャンス
袖と奥襟を持った2-1もしくは2-0の有利な状況
脇と前襟を持った2-1もしくは2-2のやや有利な状況
袖と前襟を持った2-2の五分五分な状況
クロスグリップを取られた2-2もしくは1-2のやや不利な状況
腰や背中を持たれ引きつけられた1-2のもしくは0-2の不利な状況
奥襟・背中を叩かれ頭を下げさせられた0-2の絶望的ピンチ

この2-1などの数字は自分と相手の有効な組手の数(引き手と釣り手で相手をコントロールできている部位の数)を表しています。

この序列はあくまで僕自身の柔道スタイルの序列であり各選手によって様々でしょう。常に奥襟を叩いて柔道をする選手からすれば前襟を持っての柔道は、本来自分の持ちたいところを持てていないわけなのでもっと優先度でいうと下の方になるでしょうし、僕とは逆に体幹の強さに絶対的自信を持っている選手は腰を抱えに行く組手や自身のクロスグリップなど上位に位置するであろうことも考えられます。

みなさんここまでは理解できたでしょうか?

なんのためにこの序列をわざわざ書き出したかというと、このあと書き出してもらった自分の技と組手・状況の序列をさらに結びつけて図解するためです。

が、しかし今回の頭の中にある考えの言語化・文章化・可視化がえげつない労力でしたので続きは後編で説明して行きたいと思います。

前編の最後に

これまでの説明と図を見てなんとなく理解している方もいるとは思いますが、これまで散々触れてきた正しく組む柔道ついて現時点での僕の考えを書きたいと思います。

僕の柔道のコンセプトの中では誰もが基礎として習う組み方である、袖と前襟を持った組手を序列の最上位に持ってきていますが、別にこの組み方が正しい組手と思っているわけではありません。(あくまで伝統的で基礎的な組み方なだけ)

何が正しい組み方なのかと定義を定めるとするならば、「道衣を握った引き手・釣り手を伝って相手の上半身ないしは両肩(相手が反撃・防御できないようにする部分)をコントロールできている組み方」こそが正しい組み方かなと思います。

なので、奥襟だろうが、脇だろうがそれこそ帯取り返しの組手だろうが、組んだ両手で相手を完全にコントロール下に置いて投げることができれば、それは自分にとって有利な状況を作ることができている正しい組手と言えるのかなと思います。(組み方が変則になるほどコントロールも難しくなるとは思いますが...)

この定義もあくまでただの若輩者の自論なのでもしもみなさん他に意見や感想がありましたらご連絡・ご指導ください。


今回も長々と文章を読んでいただきありがとうございました。

いつ図解・説明が完成するかわかりませんが後編でもよろしくお願いします。

それまで。ではまた!

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