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取締役会で何を発言するか その2

2023年6月はじめ、ある会社が行った中間配当や自己株取得が会社法および会社計算規則により算定した分配可能額を超過していた、監査法人も見落としていた(この表現・・・)というプレスリリースが出て、会計士業界が大騒ぎになりました。

あくまで一般論であり、監査法人の責任問題をどう整理するかはクライアントとの関係性にもよると思いますが、中間配当も自己株取得も、まずは会社が取締役会で決議時に財源規制にかからないかどうかを検討するのではないかと思うのです。

前回、「取締役会で何を発言するか」という記事を書きました。
この件に限らず、「こういう議案についてはこれをチェックする」、というチェックリストは必要だろうなと。

先達の独立役員(監査役)がいらっしゃるのだから、どこかにそういうチェックリストはないものだろうかといろいろ探したところ、
一つは「監査役監査実施要領」がありました。

500ページ以上の大作で、月間監査役の別冊になっています。346ページの「配当にかかる監査役監査」としてチェックポイントとしては当然

①配当に関する法令・定款の定めの確認
②分配可能額の計算及び配当予定額が分配可能額内に収まっていることの確認
以下略

とありました。ただ、分配可能額をどう計算するかの記載がないので、品質や営業系の常勤監査役さんだとこれ読んでチェックするのは厳しい気がします。会計専門家系の監査役や監査等委員(非常勤だったりしますが)の役割になるのでしょうが、監査法人のマニュアルのように、もうちょっとチェックリスト的に、「この決議時はこれチェックする、計算はこうやる」みたいな本があるとよいなと思いました。

もうちょっとコンパクトな本としては、少し古いのですが商事法務による「ハンドブック 独立役員の実務」という本にチェックリストがついていました。

「剰余金の処分」を決議するときの独立役員としてのチェックポイントとしては、配当の基本方針、内部留保についての考え方などが議論されているかどうかがポイントとされていました。
こちらには財源規制をチェックするという記載はなく、どちらかというと配当政策についてや、株主への説明の観点が中心になっていました。それはそれで議論してしかるべきだなと思います。
(もちろん財源について確認した後です・・・)

上記「ハンドブック」には、剰余金の処分以外にも、役員選任議案やM&A議案についてのチェックポイント(法律や実務的な検討を実施したかどうか、という手続き面よりは、妥当性判断に寄っていますが)の記載があり、取締役会議案を検討する際に参考にできそうです。なぜか2012年に初版がでて以降重版がないのが残念です。

監査役は適法性の観点、取締役は妥当性の観点で検討する、などと言われます。独立役員になるような方々はプロフェッショナルなので失礼な話かもしれませんが、議案の種類ごとに双方の立場からのチェックポイントを示したリストがあれば、なぜこれを検討しなかったのか、という不幸なミスは減るのではないかなと思ったりしています。

まあ、私が勉強不足で探せていないだけで、既にどこかにありそうな気もしております。(商事法務さんの付録等にあるかもですね)
もし、この本がいいですよ、といった情報がございましたら、コメントなどいただければ大変ありがたく存じます。




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