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取締役会で何を発言するか

こんにちは。公認会計士のKです。社外非常勤役員(監査役)に就任しております。
定期的な重要業務の1つに取締役会への参加があります。
就任後、会計士として気づいたことは取締役会内で申し上げてきましたが、弁護士の社外非常勤役員の方の発言を聞いて、会社法を踏まえて発言をしないとと思うことが多く、復習も兼ねてこちらまとめてみることにしました。
持論と反省入りの復習記事であることをお断りしたうえで、よかったら読み進めていただければ幸いです。

経営判断の原則

監査役が取締役の職務の執行を監査する際にどういう観点で見るのかというのが有名な「経営判断の原則」です。
日本監査役協会による「監査役ガイド」では

経営判断の原則は、取締役が行った経営判断が裏目に出て損失を被った場合
に、取締役に法的責任があるか否か(善管注意義務違反があるか否か)を判断する際の基準となる考え方です。監査役としては、取締役が責任を問われることのないよう注意深く監視し、必要に応じて助言・勧告をします。

とあり、

監査役監査基準では、以下の観点で「監視し検証し、必要があると認めたときは、助言・勧告をし、又は差止めの請求を行う」とされています。


① 事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと
② 意思決定過程が合理的であること
③ 意思決定内容が法令又は定款に違反していないこと
④ 意思決定内容が通常の企業経営者として明らかに不合理ではないこと
⑤ 意思決定が取締役の利益又は第三者の利益でなく会社の利益を第一に考えてなされていること


すべての情報があり結論が明らかな中で意思決定することはほとんどなく、不確実な状況でスピード感ある判断をせまられる場合が多いです。
賛成反対を決めるに当たって、上記の観点を踏まえ、

・合理的な情報収集・調査・検討等が行われたかどうか
・法令定款に違反していないかどうか、専門家に確認をとっているか
・その状況で合理的な判断がなされたか

について説明がなければ「質問」してよさそうです。
多くの場合は、質問する以前に説明がなされると思いますが。

①誤りがないこと、③違反がないこと、は、比較的確認しやすいのですが、合理的かどうかや不合理でないこと、については、何をもって合理的な判断とするか、自分の中で尺度が必要となります。

「社外取締役・監査役の実務」第3版によれば、当然と言えば当然ですが、会社の事業の内容をよく理解しておくことが重要、とあります。


・会社の目的、経営戦略、中長期の経営計画及び予算
・会社の営む事業のおかれている環境
・代表取締役および取締役の経営リスクに対する姿勢及び考え方
・代表取締役及び取締役の報酬に関する方針 など


これらと照らし合わすことで、意思決定が会社の目的、経営戦略、予算に沿ったものか、事業環境からみてあまりに大きなリスクをとりすぎていないか、自己の利益を優先していないか、などがみえてくるであろう、と。

質問例(あくまで私見です)

上記理解のもと、合理性については、自身の理解と会社の判断が異なる場合はその相違について、理由や背景を質問するのかなと。
以下、あくまで私見です。

<一般質問>
・素朴な疑問で恐縮ですが、なぜ〇〇なのか(〇〇という社内用語の意味につき)、教えていただけませんか。

<個別議案に対して>
・〇〇についてはご判断にあたり、事実確認/資料入手/検討をされましたでしょうか。(YES/NO質問)
あるいは
どのような事実確認/資料入手/検討をされましたでしょうか。
(判断に必要な資料が出ていないと思われる場合)

・このご判断をされるにあたり、複数の仮定をおいたシミュレーションをされたかと存じます。その仮定と、今の案を採用された理由についてお聞かせいただけますか
あるいは
・私の知見では、〇〇という理由で××という選択が合理的だと考えました。今回▲▲を選択された背景となる考え方をお聞かせください
(合理性の確認)

・この案を実行した場合、〇年後の利益率(ROEなど)への貢献はどの程度を想定されていらっしゃいますか(具体的数値が明示されていない場合)

などになりますでしょうか。

せっかくなので意味ある発言をしたいです

監査役の立場だと、どちらかというと適法性の観点による確認や、手続きに漏れがないかといった観点での発言が多いです。
それ以外、何か言わなければという発言のための発言や、事務局を振り回してしまうような発言は、ご迷惑なので控えたく思っております。

しかし、意外と「素朴な疑問」作戦は、(毎回ではないのが残念ですが)何回かに1回は、なるほど、外から見るとそう見えるのか、と、思っていただけることも時にはあるようです。

企業価値向上に何らかの貢献ができるよう引き続き研鑽したく思っております。よろしければご意見などいただければ幸いです。

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