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社外役員就任までの話を語ってみる

フォローさせていただいている女性会計士さんが、社外役員就任についての裏技を書かれていました。
さすがのコミュニケーション力をお持ちだと感心しながら読ませていただきました。

みなさんが大手監査法人でパートナー経験者だったり経済界で有名な方だったら、いくらでも先方からお話が来るでしょうから以下読む必要はないでしょう。

逆に言うと、そうでなくても社外役員の就任のお話が来る、というところが「風」が吹いている時代ならではであり、人生いろいろで、おもしろいなと思っています。

はじめに

大手監査法人内だと、役員クラス、パートナー(ディレクター)の中でも序列があります。以下管理職がシニアマネージャー、マネージャー、非管理職のシニアスタッフ、スタッフ・・という純然たるヒエラルキーがあります。
監査法人の内部にいる限り、スタッフがパートナーを超えて責任ある業務に従事する、ということは本来ないのです。
しかし外に出てみたら、マネージャーやシニアスタッフ時代で退職した方でも東証プライム企業の社外監査役に就任しているというケースはそれなりに見聞きします。
監査法人のパートナーの方から、「監査結果報告」をクライアントの監査役として拝聴し、監査法人の監査の結果が相当であるか判断する立場になるのですから。まさに人生いろいろです。

・・・とまあ、人生おもしろいというだけではなく、
監査法人のパートナークラスの方と対峙できる知見、胆力、キャラクター、コミュニケーション能力を評価されてみなさんご就任されているようにお見受けします。

紹介されるために

社外役員の就任は紹介ルートが強いので、会う方会う方にその希望を言いまくる、というのは本当によく聞くtipsです。
いろいろな集まりにでていって知り合いを増やすというのが前提です。
役員はある方の任期が終わったら、その席には誰か別の方が座るわけです(再任のケースもありますが)から、そういうタイミングで声がかかるように活動すれば就任の確率は上がるかもしれません。
こまめに年賀状出しておくとか事務所にご挨拶に行くとか地道な活動のうえで、ある日予想していなかった先から突然お声がかかったの、というのがよく聞くお話です。

エージェント経由の場合でも、数打てばあたるというわけではなく、既に何人もその会社に人材を送り込んでいるなどの強い信頼とリレーションがある方に出会えるかがポイントだと思います。ご紹介をいただいたときに、どこまでそのご担当者が会社の事情を知っているかを聞いてみるのも一つです。
こちらも就任にはリスクがありますから、可能であれば、いつからのお付き合いなのか、また、募集背景の裏まで知っていてほしいところです。

そうやってご縁があってエントリーしても、あっさり書類で落ちたり、面接にいっても何か違うなとこちらから辞退したり、と、紆余曲折があり悩んだりしつつ、最近おとなしくなったなと思ったらプレスリリースがあって、実は決まったんです、なんて話を聞くことが多いです。

なぜこの人、という理由を作る

昨今役員人事はを知り合いだから選任するというのはやりにくくなっており、どこにいっても、コンペならぬ複数人からの人選になります。
その中で選ばれるには、「なぜその方に」という理由が必要なのではと思います。

考えるに
一つはご本人の知見。監査の経験、コーポレートガバナンスにかかわる経験、過去業務でその企業と同じまたは類似の業種を経験しているなど。ただし募集要項上、業種経験は不問という案件もあります。
どちらかというと、事業会社の役員(非上場であっても)を経験しているというのは差別化になりえます。役員会でとんでも発言をしない(ふるまい方を知っている)と判断されるからかもしれません。

一つはご本人の熱意。役員面接であり新卒の就活じゃないんですから、御社の商品が好きで、みたいなのを全面に出すのもどうかと思いますし、to-c向けのサービスや消費財ではない場合、なかなかとりにくい方法ではあるのですが。
女性向けのサービスや消費財だと女性役員を増やすにも社内外の納得感があるのか、案件が多いです。
その会社の商品サービスが好きな方にはいいですね。
なお他の候補者も女性の場合は、きっと同じことをお考えでしょうけど。

あと、普通に、役員としてのコミュニケーションができるか、というのは重要なのでは?と思っています。会社の経営やコーポレートガバナンスの在り方についてご自身の意見があってしかるべきかと。
まあ、会計士をやっていればクライアントの役職者レベルの方とのコミュニケーションには慣れておられるでしょう。会社の課題などについても熱意があれば調べると思いますので、あまり差が出ないかもしれませんが、この人はうちのことを良く調べている、という方のほうが選ぶ側としてはきっと、いいですよね。

条件面へのこだわりをなくす

社外役員(特に上場会社)は1社目就任のハードルが最も高いです。
募集時に「他社の役員の経験があること」という条件が付されていることも多いです。ではどうやって1社目めに就任するのでしょう。
ただ、他の候補者は2社目3社目となると、より人気のある会社、よい条件の会社を選んでいく傾向があります。
なのでまずは1社目就任を、というビギナーは、条件面は妥協する(あくまでご本人にとって、です)のも一つの考え方では、と思います。
ある紹介会社のセミナーによると、プライムの会社の非常勤監査役の場合、年収600万円(月50万円)が最頻値とのことでした。グロースやスタンダードの企業で、例えばその半分の年300万という企業であれば倍率は低くなるかもしれません。

そういう会社は、社外役員への期待値がその程度である、ということは理解したうえで
(その条件であっても、「社外役員なんて月1回の会議に出るだけで何もしないのに報酬が高い」、とお考えの可能性だって十分にあります)、

勉強のつもりで就任させていただく、というのも一つの選択かと思います。
先方にとっても経験値のない1社目の役員なんです。謙虚にいきましょう。

こだわるべきはコミットできるかどうか

私の偏見かもしれません。
監査法人などで思ったようなキャリアを構築していないとの自己認識の方が、ある意味「リベンジ」のような形で社外役員にチャレンジしているのではないか、と感じることがあります。(ほんのうっすら、ごくまれに、感じることです)

もし、もし、万が一、ですが、そんな気持ちで就任されたら、会社にも株主にとっても不誠実極まりないですし、ご本人にとっても不幸なことです。

就任すればリスクと義務、責任があるわけです。訴訟されることだってあり得ます。
なので、執行はしない、月数回の会議など限定されたかかわりではあっても、ここだったら企業成長のためにコミットできる、と思える先に就任すべきだと強く思います。

何人かの監査法人パートナー経験者の社外役員の方にお話を聞いたことがあります。

会社のことをよく理解したいので、子会社や支店、工場など現場にはぜひ行かせてほしいとお願いしているの。
執行役員にも対面でお話を聞かせてほしいと依頼しています。
監査も同じでしょ?意見を言うには、現場や生の声を聴かないと。

とおっしゃって、会議以外にも見学をされたりお話を聞いたりされているそうです。会社も歓迎されているのだとか。
(その分役員報酬が高い、っていうのはもちろんありますが・・・)
どういう態度やスタンスでこの方はかかわっておられるのか、というのは企業側からもわかるのでしょうね。信頼関係があってのことだと思います。
かかわり方もいろいろだなと、自らを振り返ったりしています。

おわりに

こういうのを書くことに特にメリットもないのですが、これからいろんな女性役員が就任されるであろう現状で、就任する前に少し立ち止まって考えたほうがよいかな、と思って自分のまとめも兼ねて書きました。

まあ、企業側も、いや先生にそんなすごいやる気を出されても、というスタンスのところもあると思います。
選任された段階で条件をみたしているはずなので、その後はお互いの期待値を調整しながらあまり肩の力を入れずに、法律規則等の要請を満たしつつ、できることをやっていく、ということになろうとは思いますが、もし、社外役員を何かサイドビジネス的にお考えなのだったら、それはさすがに違うんじゃないか、くらいなことが伝われば幸いです。


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