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アイちゃんがプペルを読み、loveちゃがファンのSSを読む12.24

 クリスマスイブにどのVtuberの動画を観るのか、という話題は古来から老若男女問わず繰り返されてきた。とあるフォロワーはホロライブのASMRを聴きながら肉を食らい、他のフォロワーはにじさんじの歌枠を流しながら洗濯をしていた。俺はというと、もはや恒例となったアイちゃんの配信を観るつもりであったが、なんとアイちゃんの配信は12月25日であり、クリスマスイブは動画投稿のみのようだった。しかし、クリスマスイブに推しの配信も動画もなく寂しそうな人もいる中で、ワガママを言ってはいられない。

 アイちゃんの動画を再生すると、えんとつ町のプペルという絵本の朗読であった。全く内容を知らない絵本だったが、シナリオとしては終盤に連続で伏線回収が為され、ハートフルな場面と寂しい展開のメリハリがある文章とムードのあるイラストとBGMがアイちゃんの演技を盛り上げるという非常に俺好みな動画であった。久々に良い朗読動画を観たぜ…と、俺は満足した。

 いや、満足していなかった。昼にloveちゃの雑談配信がなかったショックを糧に書き切ったブラックについての考察記事により指の疲れがMAXに達していた俺は、loveちゃの夜配信を聴きながら寝落ちしようとしていたのだった。

 早速始まったloveちゃの配信は、クリスマス感が薄い普段どおりの雰囲気で非常に可愛らしかった。このアカウントでは話しかけないと決めていた俺は、そんな決意も忘れてloveちゃに現金のクリスマスプレゼント=スーパーチャットを投げ、珍しい名前だと言われ喜びを感じつつ、そのまま眠ろうとしていた。しかし、それは始まった。朗読だ。アイちゃんのプペル朗読とは全く違う朗読。それは、loveちゃがOLだった世界線で同僚のオタクと会話をするというテーマでファン達が書き上げた怪作群である。あるときはコミュニケーション下手なオタクが情緒溢れるバッドエンドに浸り、またあるときは真っ直ぐ現地に向かう爆笑オチで配信が盛り上がった。アイちゃんがプペルやルビッチを一人で演じ切ったように、loveちゃもOLやらぶぐみを一人で演じ切っていた。

 果たしてクリスマスイブにどのVtuberの動画を観るのか、という話題に俺はアイちゃんとloveちゃを観るのだという回答を返す。朗読中はコメント欄との会話がないことから、Vtuberとの会話を楽しみにしているオタクにとっては物足りないかもしれない。だが俺は、子どもの頃、クリスマスイブに地域の読み聞かせ会に行っていたことを思い出しながら、楽しい気持ちに浸ることができた。

 好きな人達の声を毎年聴くことができることのありがたさを噛み締めながら、今日も明日も普通に働く意義を見出すクリスマスイブだった。