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逃がさない

「逃がさないよ」
そう言われ、手を無理やり引っ張られて、見たことも無い部屋に閉じ込められた
否、見ることが出来なかったのだ
無理やり引っ張ってきた人も、部屋も

自分は抵抗することが出来ず、されるがまま。

1時間ほどだろうか、放置されていた
何も聞こえない
何も見えない
何も分からない

一つわかることは、自分の親が自分を探しに来てはくれない
自分たちが良ければいい両親だったからだ
実の子を愛しもせず、十分に食事もさせず服も薄汚れた古いもの
ただ単純に良いだろうと見せびらかしたい
ただの道具でしかなかったのだ


そう考えると、このまま、誰とも知らない人といた方がまだ楽なのではないか

「いきなり連れてきてごめんね
こうでもしないと君は自分の元へは落ちてこないそう思ってしまったんだ」

口は塞がれていないし、質問をしてもいいのだろうか
「あなたは誰」

「言ってもわからないよ」
まぁ、そう答えるだろうとは思っていた

「ここに連れてきた理由は、自分をあなたのものにしたかったってこと?」

「まぁ、そうなるね」


「あなたは自分を幸せにできるか
あなたといれば、幸せになることが出来るか?」
自分は少し涙ぐんでいた
知らない人と話していて怖いはずなのに
何故か安心する


「精一杯君を幸せにできるよう努力する」

「美味しい料理を作ってくれる?」

「料理は得意だよ」

「布団はふかふか?」

「言ってくれれば、ふかふかにしてあげる」

「じゃあ」

「なんだい」

「一緒に暮らせないか?」

「怖くないの?知らない人と住むのは」

「あなたなら安心できる気がする」

「君のストーカーだったのに」

この人は自分のことを自分より知ってくれているだろう。理由にはならないだろうが…

「あの親と住むよりはマシだと思う」

「そうだね、じゃあ一つ条件をつけてもいいかい」

「その前に目隠しを外して…」
「その前に話しておきたい」

「…わかった」


「知らないただのストーカーだった人が、人間じゃなく角の生えた悪魔だとしたら、君はどうする」

「条件はなに」

「え…と、君は逃げないか」

「逃さないと言ったのはそっちでしょう」

「それはそうだけど、拒否されるのはやっぱり怖くて」

「それだけか」

「え」

「条件はそれだけ?
それを認めればあなたと一緒に過ごせるの」

「そうだね、細かいところは一緒に決めようか」

そう言って、その人は目隠しを外してくれた


目の前にいたのは、とても美しい形の角
キラキラと輝くルビーのような瞳を持った、人間の形に近い、悪魔だった


自分はその人の瞳をじっと見つめていた

「その…」

「ん?」

「じっと見られるの恥ずかしい」

「あっ…ごめん」

「逃げない?これを見ても」

「逃げない
ずっと見ていたい」


あの人は知っているのだろうか

.

両親は自分をただの道具だと思っている

両親から逃れるべく、自分は

.
.
.

悪魔になることを選んだのだ

自分の前に現れた悪魔はこの人ではない
というより、悪魔ではない
天使だ
なり損なった

一緒に悪魔にならないかと
落魄れた自分と重ねたのだろう

無論、自分は人間だ
人間が悪魔になったなんて、誰が知ろう


両親から逃げれればそれでよかった
悪魔になったって両親からは逃げることは出来なかったのだが
そのに都合よく現れたあの人が、自分を救ってくれた
ストーカーされている事なんて知っていたし好都合だと思っていた

率直にいえば、あの人を利用したのだ

自分を好きになってくれたあの人と幸せになれれば、他に何も望まない

こんな惨めで汚い奴のことを幸せにしてくれるのだから











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作者の心の声(書いててなにがなんだかわからないんですけど、暖かい目で見守ってください。
多分これから、二次創作に変えていく予定です。
ただネタを考えたので殴り書きしました。
質問等あればコメントください)

写真は、声優の梅原裕一郎さんです。