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漫才「潔癖」

漫才『潔癖』
ツ→ツッコミ ボ→ボケ

ツ「どうも~(入ってくる)」
ツ「お願いします~」
ボ「(周囲を気にしながら入ってくる)」
ツ「まあね、今日も頑張って漫才していきますけども」
ボ「…お願いします」
ツ「あのー、皆さん高校時代いろいろあったと思うんですけど」
ツ「ちょっと実は僕やんちゃしてまして」
ツ「いわゆるヤンキーだったんですよ」
ボ「ああ、背番号55、右投げ左打ち、別名「ゴジラ松井」と言われた松井秀喜氏が所属していた…」
ツ「ヤンキースじゃねえよ!(ボケをたたく)」
ツ「ええ、まあヤンキーだったんですけどもね」
ボ「(懐から除菌スプレーを取り出し、ツッコまれた位置に吹きかける)」
ツ「…」
ツ「まあね、そんな高校生活でね、荒れてたんですけど」
ツ「何がやんちゃだったってクラスでケンカばっかりしていたんですよ」
ツ「ずっと素手で殴りあってたら先生に呼び出されて怒られちゃって」
ボ「人を殴るときは手を洗え~っ!」
ツ「そんなこと言わねえだろ!(ボケをたたく)」
ボ「(また懐の除菌スプレーでツッコまれた位置を消毒する)」
ツ「……」
ボ「それで「廊下に業務用洗剤もって立ってろ!」って」
ツ「バケツと水だろ!(ボケをたたく)」
ボ「(消毒をする)」
ツ「それやめてくんない!?」
ボ「何が」
ツ「ツッコんだ場所を消毒するのやめろよ!」
ボ「いやいや、お前な」
ボ「そもそもこの漫才始める前に、手洗った?」
ツ「いや、まあ、トイレ行った後は洗いましたよ」
ボ「じゃあこのマイクは洗った?」
ツ「洗うわけねえだろ!(ボケをたたく)」
ボ「それじゃダメだろ!(ツッコミをたたく)」
ボ「アッ!(たたいた手とたたかれた肩の二点で苦しみ始める)」
ツ「すごい傷つくな!ちびっ子の頃のいじめの仕方じゃんか」
ボ「いやもう患部が…」
ツ「ツッコんだ場所のこと患部っていうのやめろよ!」
ボ「いや昨今はより除菌を徹底しなきゃいけないのよ」
ボ「だからもちろんケンカの前には手を洗う、これが常識だよ」
ツ「正論なんだけど「ケンカの前」が余計なのよ…」
ツ「まあ、そんなわけでやんちゃだったわけですけど」
ツ「ケンカはたくさんしましたが、僕絶対やらないと決めていたことが
  二つありましてね」
ボ「鼻だしマスクとペットボトルの回し飲み?」
ツ「いじめと万引きだよ!」
ボ「じゃあ鼻だしマスクしていいってのかよ!」
ツ「正論言ってくるからやりにくいな!」
ツ「まあそうなんですけど…ヤンキーでね、むしろいじめっ子を懲らしめるような
  ヤンキーでしたよ、自分でいうのもなんですが」
ボ「でも俺ヤンキーと親しみのない無菌室育ちだったから、ヤンキー分かんねえんだよ」
ツ「あんま温室育ちみたいに言わねえだろ穏やかな高校のこと」
ボ「私立だから」
ツ「関係ねえだろ」
ボ「じゃあさ、俺いじめっ子やるからさ、本場のヤンキー見せてよ」
ツ「本場…まあね、いじめっ子を倒すのはよくやってましたから」
ボ「(漫才コントに入る)」
ツ「(漫才コントに入る)」
ボ「やーい、お前の母ちゃん布マスク使用者~!」
ボ「不織布マスクを意地でも使わない~!」
ツ「(漫才コント止める)ちょっと待て!」
ボ「(漫才コントをやめない)な、なんだお前は!?」
ツ「いや止まれ止まれ!」
ボ「止めてほしたきゃ力ずくで…」
ツ「漫才コントを止めろって!」
ボ「何」
ツ「…陰湿!」
ツ「あと止まれって言ったら漫才コント止めろ!」
ボ「ごめん、ちょっと足りてなかったわ(顔に振りかけるように除菌)」
ツ「それでブーストかかんねえだろ」
ボ「浴びるように酒を飲む未成年…」
ツ「ただ除菌スプレーかぶってるだけだろ」
ツ「いや違くて」
ツ「(漫才コント戻る)てめえ、何やってんだ!いじめはやめろ!」
ボ「ヒャハハ、俺はこの坊やに感染症対策の何たるかを
  教えてやってるだけだぜェ!?」
ツ「う~んやはり世間的には正論!」
ツ「…でも弱いものを一方的に痛めつけるな!(こぶしを振り上げる)」
ボ「手洗った?」
ツ「今もかよ!洗ったわ!こんなこともあろうかと!!」
ボ「じゃあ、「洗った」洗った?」
ツ「どういう理屈!?」
ボ「オラッ!(蹴る)」
ツ「テクニカルな卑怯者!」
ボ「へへ、凶器もなあ、使ってやるぜ!」
ツ「テクニカルな卑怯者からストレートな卑怯者!」
ボ「はい(手にマキロンを塗りたくる)」
ツ「アルコールじゃねえか!」
ボ「傷口に当てるとな、めっちゃ染みるんだぜ…」
ボ「この俺の二つ名はな、『マキロンの牧野』だ…!」
ツ「マッキマキじゃねえか」
ツ「…あとマキロンは消毒だから長期的に見たら相手に得だな!」
ボ「相手にアルコールを送っていたつもりが、塩を送っていたということか…」
ツ「…」
ボ「おや、手はアラっても、ワラってはいないようだが…」
ツ「…」
ボ「オラっ(スプレー噴射)」
ツ「だから卑怯者!」
ボ「清潔な男の消毒されたジョークを…」
ツ「卑怯な男の散らかり切ったジョークだろ」
ツ「そんな感じで荒れた生活送っててさ、でも俺を導いてくれた人がいたんですよ」
ツ「高校の先生だったんですけどね、野球の先生で」
ボ「ああ、それこそマツイみたいな…」
ツ「頭でマツイって言ったのお前のほうだけどな」
ボ「フィールドに出て、道具取り出して、こんなにホコリ取れたよーって」
ツ「それマツイはマツイでもカズヨのほうだな!」
ボ「まあ秀喜のほうも自分のバットをマツイ棒って言ってるだろうし」
ツ「んなわけあるか!」
ツ「いやまあこんな風にね」
ボ「どんな風にだよ!」
ツ「こっちのセリフだよ!とにかくね、無事卒業してからは更生できたわけですよ」
ボ「まあよかったじゃんか、しっかり手を洗えて」
ツ「いや足洗ったんだよ、いい加減にしろ」
ツ「どうも、ありがとうございました」




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