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コント「野球部ベンチはベンチにて」

コント『野球部ベンチはベンチにて』
片→片瀬(野手) 藤→藤沢(投手) 両→両方 

両「(応援メガホンを持ち、ベンチで応援している)」
両「かっとばせぇ、くっげぬまぁー」
ツ「あー…ダメだ三振でチェンジだ」
両「……」
藤「…試合、今日も出れそうにないな(ベンチでボールを磨いている)」
片「まあ、だろうな、3年やって一回も出てねえし、俺(ドリンクを飲んでいる)」
片「お前はまだいいよな、たまに中継ぎで出るじゃん」
藤「いやそんなこともないぞ、敗戦処理の中の敗戦処理だし」
藤「とんでもない点差の試合の時にしか出てないんだぞ」
藤「前の試合覚えてる?10点差ついてた試合」
片「確か前のピッチャーの鶴間がデッドボールだけで打者一巡させた試合でしょ?」
藤「あの後の登板はモヤモヤしたなあ」
藤「真っすぐの三者連続三振取ったのに相手から感謝されたもん」
藤「「痛くしないでくれてありがとう」って」
片「お医者さんに注射してもらったちびっ子みたいな発言だな…」
片「あーあ、今日も試合出れずに終わんのかなあ」
片「こんなんじゃいつまでたっても甲子園で華々しく、なんて夢のまた夢だ…」
藤「まあなあ…もし野球部が甲子園行けても、出番なんかないしな…」
片「だよなあ…」
藤「あ、フォアボール出した」
片「…あのさ」
藤「うん」
片「もし、よ」
片「もし俺がいつか打席に立てたとするじゃん」
藤「うんうん」
片「心配なのよ」
藤「まあそうだろうなあ、俺も初登板の時緊張したし」
片「いや、そうじゃないのよ」
藤「?」
片「打席に立つとさ、さっき俺らがやったみたいに応援歌歌うわけじゃない」
藤「全力でやるよそりゃ、友達の初打席だもん」
片「で、俺片瀬じゃん」
片「「かっとばせ、片瀬」が、「かったっせー、かったっせ」に聞こえてスベらないか…」
藤「小さっ!?そんなこと打席で気にしてる暇ないでしょ」
片「いやむしろ心配しちゃって満足に打てないと思うのよ!」
藤「いや、どんな時でも満足に打ててないからベンチなんだと思うよ」
片「そうか…」
藤「あっゲッツーとった、ナイスぅ~!」
片「ゲッツー…ダブルプレーか…」
藤「どしたのさ」
片「ダブルプレーってさ、大体3が入ってくるじゃん」
藤「6-4-3とか、5-6-3とかか」
片「あれ…かわいそうだよ」
藤「かわいそうか!?大体ファーストに送るだろ」
片「そろそろ『119のダブルプレー』とか出してあげようよ」
藤「どんなフィールディングしてんだよ!ピッチャーピッチャーライトって!」
片「いやあそろそろ休ませてあげようよファースト、ベンチに下げよう」
藤「…それで?」
片「俺がファーストになる」
藤「野心モリモリじゃねえか」
藤「あ、二塁打打たれた」
片「あー、そういえばさ藤沢さ」
藤「ん?」
片「お前、いつから野球始めたんだっけ?」
藤「俺?小1からだから…かれこれ10年以上はやってるな、お前は?」
片「え、高校からよ」
藤「マジか!?それは知らんかったし、ベンチなのもまあ納得できるな…」
藤「それまで何やってたのよ」
片「いやあ、野球好きの両親の影響でさ」
藤「なに、部活じゃなくてクラブチームだったって話?」
片「ビリヤードしてた」
藤「なぜ!?」
片「高校で野球始めて打てなくても、「今までの棒より太いから」」
片「って言い訳できるように」
藤「陰湿な親っ!」
両「……」
片「なんかさ、こうやってベンチにいるとさ」
片「試合中に集中してるやつって何考えてるんだろうなって思うのよ」
藤「集中してるんだから何も考えてない、って言いたいけど、俺は雑念ばっかだよ」
藤「敗戦処理しかしないから、早く終われとか、先発になりたいとか」
片「そうだよな、何も考えないのは無理だよな」
片「ベンチの俺ですらいろいろ考えちゃうもん」
片「そもそも、現状俺らの本職は野球部員じゃなくて学生なわけじゃん」
藤「ま、まあねえ」
片「わからなかった漢字テストの答えが相手バッターの名前にあったとか」
片「今まで好投だったのにスコアボードの0点が不吉に感じたり」
片「背番号で筆算したり」
片「相手が大学付属高校だと簡単に進学できんのかなとか思ったり…」
藤「お前雑念しかねえな!」
藤「俺が苦しんで投げてるときそんなこと考えてたのかy…」
藤「せ、『背番号で筆算』!?」
片「やらない?筆算」
藤「やらねえよ!もうただ暇なだけだろ」
片「あ、打った」
藤「やば、タイムリーなら勝ち越しされる!センターがバックホームして…」
藤「ランナーがキャッチャーとぶつかった!」
片「うっわ、クロスプレイえぐっ…」
藤「よしアウトか!いやアウトだけど…二人とも担架で運ばれてくよ、大丈夫かな…」
片「まあもし病院送りになったとしても、それこそ『119のダブルプレー』ってことで」
藤「やかましいわ!」
藤「あ、ってことは3アウトで一応相手の攻撃終わったのか」
藤「ん、なんですか監督?」
藤「えっ!?今から片瀬が今ケガした大和の代わりに代打に?」
藤「しかもそれでリード出来たら、俺が抑えに!?敗戦処理じゃなくて!?」
片「ホントですか監督!俺、藤沢のためにもチームのためにも、全力で行ってきます!」
藤「がんばれよ!フルスイングで行け!」
片「(バットとヘルメットをかぶり、バッターボックスへ)」
片「(急いで準備したため、ドリンクやボールを散らかし走って向かっていく)」
藤「んぉい、かったっせー、かったっせー!!」



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