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コント「肝試さない」①

ゴーーン…ゴーーン…


後輩「いや〜、やっぱり…」

後輩「つかれてるんじゃないかって、僕」

先輩「大丈夫か?まあこのシーズンはお祭りやらお盆やらで夜遅くまで仕事してるしなぁ」

後輩「疲れてるじゃないです、憑かれてるです

後輩「I'm tired.じゃないですからね」


後輩「いやね、僕とりつかれてるんじゃないかって」

先輩「オイオイ飼うなら犬にしとけー?飼育しやすいぞ」

後輩「鳥、疲れてるわけじゃないです、取り憑かれてるです」

後輩「Bird is tired.じゃないですからね」

先輩「この場合The birdだな?」

後輩「英語のディテールどうでもいいんですよ」


後輩「じゃなくて霊がね、僕の体に取り憑いてるんじゃないかと思ってるんですよ!」

先輩「あぁそういうこと?早く言ってよ〜」

後輩「結構最初から言ってましたけど…」


先輩「霊が?取り憑いてる?」

後輩「そうなんです…最近違和感があって」

先輩「いやあ〜っ、確かに俺たち坊主だけどさ?」

先輩「なんかそういう霊とか魂とか、そういうのと関係する仕事だけどさ…?俺見たことないよそんなの」

後輩「それでも明らかに違和感があるんですよ!」

先輩「ん?」


後輩「いやあ、最近仕事終わりにお寺のシャワー浴びてたんですよ、そしたら誰もいないのに…」

先輩「うしろから視線がするとか?」



後輩「いえ、いつの間にか僕の頭がモコモコと泡立っていたんです…」

先輩「坊主なのに!?」

後輩「坊主なのに!」

後輩「思わず疑いましたよ、こんななる!?って」

先輩「それは確かに怖いわ…」

後輩「学生の頃、後頭部以外ハゲてて落ち武者呼ばわりされてた、日本史の先生思い出しましたよ」

先輩「先生可愛がられてんな〜っ」


後輩「茂木隆太っていうんですけど」

先輩「奇跡的に落ち武者と固い韻踏んでるね、ソイツ」

後輩「あ〜しまった!それ分かってたらもう少しイジれたのに!!」

後輩「今度同窓会に呼んでイジってやろうかな!」

先輩「いや丸坊主のやつがちょっと残ってるやつイジってやるなよ」
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先輩「で?坊主なのに後頭部が泡立ってただけで霊が憑いてるって?」

先輩「確かにキモい現象だけど…それだけでオバケの仕業というには早計すぎない?」

後輩「いや普通に金縛りとポルターガイストと悪夢は自覚症状でありますね」

先輩「そっち、先に言え〜〜っ?」

先輩「なんだよそのオバケのトリプル役満、ハコワレしちゃうよ俺」

後輩「珍しい方を伝えたほうがいいかと…」

先輩「全部珍しいわ」


先輩「……まぁ確かに、そこまで症状あんのは取り憑かれてるってことなのかもな〜っ」

後輩「やっぱり…っ!」

先輩「俺10年は坊主やってるけどさ、いやー初めて見たよ、霊の類に出くわした奴」

後輩「そんなもんなんですかね…入りたての僕には頻度とか分からないですけど」

先輩「知り合いの寺のやつは大体「内川の最高打率くらい出くわす」とか言ってたけど」

後輩「3割7部8厘!?会う人の約4割が取り憑かれてるんすかその人」

先輩「そうなんかな、ちょっと打率?とか野球詳しくないからピンとこなかったわ」

後輩「とんでもない寺だなそこ…」
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後輩「はぁ…一体どうしたら…」

先輩「おい〜頼むよ〜っ?ほら、さっき言った通り、これから祭りのシーズンじゃん?」

先輩「そんな調子悪そうなお前が出店の対応とかしだしたら陰気臭くて溜まったもんじゃないよ…」


後輩「確かこの深草寺(しんそうじ)では、坊主が出店の対応からお神輿担ぎ、見回りの対応まで、色々こき使わされるんですよね」

先輩「こき使う…っていうと語弊があるけど、まぁ何でも屋として動き回ることになるね」

先輩「あぁそっか、お前は初めての夏だから知らなかったか」

後輩「そうなんですよ、でも人手的に休むわけにもいかないし…ホントどうしたら…」

先輩「う〜〜ん…」


後輩「……あっ!」

先輩「どうした?」

後輩「見回りですよ、見回り!」

先輩「見回り?」

後輩「ほら、見回りの中に確か肝試しする人たちのサポートもありましたよね!」

先輩「あー、あるね、迷子とか危険な道に入らないようにっていう目的のパトロール」


後輩「あのパトロールに僕が参加することで、持続的にお化けの影響を与えて肝試しを盛り上げられます!SDGsですよこれは!」

先輩「Sustainable_Development_Ghosts?」

つづく

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