コント「肝試さない」③

先輩「俺たちみたいな薄給の坊主からさ、白い球を追いかける野球選手みたいになりたいよなぁーっ」

先輩「薄給（白球）だけに、な」

ガシャン！ブオォォォォォォッッッッ

先輩「うおぉ！？えげつない突風！」

後輩「ホラ、うちの霊ちゃんもグロいシャレ言うのやめなって…」

先輩「通じあえてる風なの、何なん？」
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後輩「…着きましたね、目標地点」

先輩「結局さっきの突風以外、目立ったトラブルはなかったな…あっちゃ困るけど」

後輩「井戸とお地蔵さんがあって、雰囲気としてはまあまあな感じなんですね」

後輩「確かここにウチの寺で用意したおもちゃのお札を置いといて、寺まで持ち帰るとお菓子がもらえるんですっけ」

先輩「そうそう」

先輩「これ参加費無料だから、買ってるお菓子の分だけ損になるんだよな…」

先輩「昔はお菓子詰め合わせみたいな豪華なやつだったけど、最近はちゃっちいビスコ一個とかにしてんのよ」

後輩「いいじゃないですかビスコ！ちゃっちいとかショボいはひどいですよ！」

先輩「ショボいとまでは言ってないが…？」

後輩「確かにビスコって自分で買うことのない、貰ったら食べるかもってくらいのお菓子ですけど！」

ズズズ…

先輩「！」

後輩「それでもビスコがしょっぱいとか子供だましだとか言うのは酷くないですか！？」

ズル…ズル…

先輩「お、おい…！」

後輩「はぐらかさないでください！そりゃあグミとかチョコに比べるとビスコは！…」

ザザ…ザザ…

先輩「お前、い、井戸…！」

後輩「なんですか一体！井戸がどうしたって…」

幽霊「う、ううぅぅぁぁ…」

2人「「貞子だーーーーっ！？」」

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幽霊「うわぁぁぁあっ…あっ…」

先輩「と、取り憑いていた霊って貞子だったのかよ！？」

後輩「な、なんで…！？」

幽霊「う、うう、あ…」

先輩「な、なんか喋ろうとしてるぞ！ヒィッ！」

幽霊「ゆ、るさ、ない…ビス…コ…」

先輩「お、お前がビスコ馬鹿にするから貞子がキレてるだろ！」

後輩「お化けってお菓子にそんなに執着するんですか！？みんな大体現世への未練とかで人間界にいるんじゃないんですか！？」

先輩「実際許してないんだからそうなんだろ！美味しくて強くなったら井戸からもテレビからも出られるだろ！」

後輩「出られ！ない！！です！！！」

幽霊「我が…名…を…貶すもの…裁きを…」

後輩「……我が名？」

幽霊「私の名は……ビス子…！」

後輩「先輩この人ビス子って名前らしいです！」

先輩「じゃあ怖くないな！」

2人「「怖い！！！！！！」」
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先輩「いや怖いわ！恨みの理由がお菓子であれ名前であれ怖いわ！」

ビス子「恨めしや……っ！」

後輩「す、すいませんビス子さん！あなたのことを悪く言うつもりはなかったんですぅ！お菓子のビスコのことを言ってただけなんですぅ！」

先輩「それはそれで失礼だけど…たしかにホントなんですーっ！」

ビス子「本当に…？」

後輩「本当！本当です！！」

ビス子「…じゃあいいか」

後輩「物わかりが良い！」

先輩「幽霊に理屈って通じるんだ…」

後輩「ひろゆきの切り抜き動画見ててよかった〜…」

ビス子「改めまして…」

ビス子「はじめまして、ビス子です…ここで心霊をやってます…どうぞお見知りおきを」

先輩「あぁ、ご丁寧にどうも…」

ビス子「……で」

ビス子「あなたたちは何をしに来たんですか…？」

先輩「あーいや、俺達はこのあたりの肝試しの下見を…」

後輩「そうだ！ビス子さん！ビスコさんに肝試しのパトロール任せられませんか？」

先輩「何言ってんだお前ぇ！？」

後輩「いやだって！ここで常にビス子さんが監視できるなら、ちびっこが怖い目に遭わずに済みますよ！」

先輩「いや幽霊と出会ってるのがしっかり怖い目なのよ！」
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先輩「さっきも言ったろ？肝試しに本物は要らないって！」

後輩「いやでも考えてみてくださいよ先輩、ビス子さんに任せておけば僕ら手が空きますし、おばけが出るって保証でお寺の名も売れて一石二鳥ですよ！」

後輩「意図的にお化けが出る空間を作りましょうよ！養殖の幽霊で何が悪いんですか！」

先輩「このシチュだと幽霊って養殖扱いになるの？」

ビス子「あの…」

先輩「すいませんビス子さん！すぐ帰りますんで俺ら！」

ビス子「いけますよ、パトロール役」

先輩「いけんのォーっ！？」

後輩「マジですか！シフト入れる？」

ビス子「入れますよ」

先輩「そんな…スーパーアルバイターみたいに！」

つづく