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『ステロイド軟膏を保湿剤で薄めてあるから副作用も軽く済む』は大きな間違いです!
店頭で日々多くの皮膚病の相談を受けるなか、必ずお客様に聞く質問の一つが
「ステロイド軟膏はご使用されていますか?」です。
①なんと言う名前のステロイドを(ステロイドの強さ)
②どのくらいの期間
③どのような使い方で
④どこに使用したか
をしつこいぐらいにお伺いいたします。
漢方やスキンケアを専門にしているお店を皮膚病相談で訪れる方の多くは医療機関でステロイド軟膏をある程度長い期間使用され、思うように改善せず悩まれてくる方が非常に多いです。ほとんどのお客さが「ステロイド軟膏は減らして行きたい」と希望されますが、①〜④のご回答次第ではステロイド軟膏を減らす事で生じる悪影響の心配があり、使用中止まで時間がかかる場合や極端に使用を減らせない場合もあり、慎重に対応しなければなりません。
『私はステロイド軟膏と保湿剤、
混ぜたものを使っているから心配ありませんよ』
私がしつこくしつこくステロイドについて質問すると上記の様な回答が時々あります。この回答を聞いた場合、私は「慎重に対応しなくては」と身構えます。
なぜでしょう?
それには3つの理由があります
A. そもそもステロイド軟膏を保湿剤に混ぜても効果、副作用の頻度ともに変わりません。(ほとんどの薬の場合、少数の例外あり)
B. 保湿剤と合わせてある為、カサが増し保湿クリームの様に本来使用しなくてもよい部位にまで広範囲に使用してしまう。
C. 本人に薄まっているから安心という(間違った)意識があるため、使用頻度、使用量が過剰になりがちになる。
この3つは非常に危険です。副作用の頻度も増しますが、長期に使用していた場合、やめたときの症状悪化のリスクが高く、なかなか減薬しにくいのです。
『なぜ保湿剤と混ぜているのに薬が薄まって無いんですか?』
当然こう言う疑問が浮かびますよね。お客様に納得して頂くため説明に苦労しますが、今回はできるだけわかりやすく(できるかな(-.-;))
「なぜ保湿剤と混ぜているのに薬が薄まっていないのか」ご説明させていただきます。(わかりやすくしている為、実際とは多少異なる部分もありますがご了承ください)
①ワセリン5gにステロイド成分10個入っている軟膏チューブがあるとします
②ステロイド成分はワセリンにきちんと溶けていないと効果が出ません
③実は殆どのステロイド軟膏はチューブの中でステロイド成分が溶けずに結晶として残っています(溶けていない成分は効果も副作用もありません)
④このステロイド軟膏はワセリン5gにステロイド成分が1個しか溶けない性質だと考えてください(以下の図のようになります)
ここまで大丈夫ですか
ではワセリン5gにステロイド成分が10個中1個しか溶けていないステロイド軟膏にワセリン45g足してワセリンを50g(ワセリンの量10倍)にしてみましょう。
わかりますか。10倍のワセリンにすると5gづつのワセリンに1個づつステロイド成分が溶けていることになります。
つまり
・5gにステロイド成分10個中1個溶けているのも
・50gにステロイド成分10個溶けているのも
◆濃度は同じ◆効果も同じ◆副作用の心配も同じ
と言うことなんです。
では実際のステロイド軟膏で考えましょう。
(大谷道輝・他:日本皮膚科学会雑誌.121.2011 より)
上の図を見てください、
例えば作用が
・「とても強い(上から2番目)」クラスのアンテベート軟膏は
表示されている濃度の 1/16しかステロイドの有効成分が溶けていません。
これは16倍に希釈しても効果も副作用も変わらないことを意味します。
(正確には希釈する基材の種類で異なります)
例えば大変良く使われる
・「普通(上から4番目)」クラスのロコイド軟膏にいたっては
表示されている濃度の1/130 しかステロイドの有効成分が溶けていません。。
これは130倍に希釈しても効果も副作用も変わらないことを意味します。
(正確には希釈する基材の種類で異なります)
わかりやすくご説明したつもりですがいかがでしょうか?
ワセリン等で希釈しても『薄まってる』感を勝手に感じているだけで、
実は全く薄まっていないことが殆どなんですよ。
ステロイド軟膏は上手に使えばいい薬です。
正しい知識で正しく使いましょうね。
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