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ステロイド軟膏長期連用中止で起こる事

*今回の文章中、背中の皮膚症状悪化の写真が掲載されています。皮膚病の症状をご覧になりたくない方はご注意ください。

そもそもなんでステロイド軟膏を怖がるの?

 世間一般に  
「ステロイド軟膏は怖い」
「ステロイド軟膏は副作用が大変だよ」
「ステロイド軟膏は使わない方がいいよ」

 どうしてこんなイメージが定着したのでしょうか?

 ステロイド軟膏への不安はこれ以前にもあったのですが、1992年のニュース番組でのステロイドを批判した報道特集がステロイドに対する社会不安を爆発させるきっかけとなりました。でもそれが今まで尾を引きませんよね。

 近年ではネット環境の充実と科学的な根拠のない情報の氾濫があいまって『ステロイド軟膏=悪者』的イメージが定着しています。
(医療機関での安易なステロイド軟膏連用による医療不信もちょっと原因かな…ナイショですよナイショ…←でも結構これ本質かなぁ)

 報道やインターネットの情報を鵜呑みにして
(ステロイドは肌に蓄積、毒素がたまる、背が伸びない、色が黒くなるetc)

「ステロイド軟膏って恐いじゃん。もう使うのやめる!」

 ステロイド軟膏を連用していた方々が使用を急に中止したり、根拠のない民間療法を選択したりした事で本来
 『苦しまなくても良い』副作用(リバウンド:酷い炎症)を招き、
多くの方が苦しんだんです。(現在も苦しまれている方たくさんいま(>_<))これによりステロイド軟膏のイメージはさらに悪くなっていきました。


ステロイド軟膏の急激な中止で起こる事

まずステロイド軟膏の中止で起こることの前提として
ステロイド軟膏の

A. 血管収縮作用
B. タンパク分解作用

に注目します。

 A. ステロイド軟膏の特徴として、血管を収縮させることで赤みを抑えたり、滲出液を抑えたりします。

ただこの作用には耐性があり、
 ステロイド軟膏を使用すればするほど血管収縮力は弱くなりますですからより血管収縮力の強いステロイド軟膏(ステロイドのランクを上げる)を使わなければ効果が出にくくなります

 次に
 B. ステロイド軟膏にはタンパク質分解作用があります。

 ステロイド軟膏を連用すると

肌表面のバリア機能の役割を果たす角質層のタンパク質を溶かす

角質層が再生されにくくなりバリア機能は低下

ホコリダニカビ細菌などの影響を受けやすくなる

炎症の原因が除去されず、炎症が改善しにくくなる

症状抑えるためより強いランクのステロイド軟膏を使ってしまう

 A. B. によりステロイド連用の悪循環に陥りステロイド軟膏がやめられなくなるんですね。続ければ続けるほどやめた時のリバウンド症状(急激な炎症)が強くなり、

「いつやめればいいの〜、やめられない〜」

ステロイド恐怖症の原因となるんです。

 今までのことを前提として、長期にステロイド軟膏を連用して急激に軟膏の使用をやめるとどのような症状が起こるのでしょう。
(以下皮膚病の写真を掲載します、ひどい炎症の写真もありますので見たくない方はここでご退出ください)

①ステロイド軟膏を使用しても湿疹が治らない

以下の写真をご覧ください。(ステロイド軟膏使用中の写真です

ステロイド軟膏を使用しているのに
・赤み(炎症)・カサつき(乾燥)が強い状況が見てとれます

これはステロイド軟膏連用で
・血管収縮作用の効果が薄れている
・タンパク質分解作用で肌のバリア機能が破壊され乾燥が強い
事を意味しています先程説明しましたよね 

まずステロイド軟膏の弊害とやめ方を丁寧に説明し
1. ステロイド軟膏を一切やめる
2. ステロイド軟膏を徐々にやめていく
3. とりあえずは今まで通りステロイド軟膏を続ける
からどの方法を選択するか、お客様の希望を最優先に進めます

このお客様の場合、

「これ以上ステロイド軟膏を使用したくない」
(「だってぬっても治らないんだもん」)

との意思が強く、一切やめる決断をされました。

②ステロイド軟膏の急激な中止で起こる事

急激なステロイド軟膏の中止は急激な炎症を引き起こします。
そもそも血管を収縮させる作用のステロイドを長期連用し急激に中止すると、反動で急激な血管の拡張を起こします。これがステロイドリバウンドです。急激に中止しなければリバウンドは起こらないため、ステロイド軟膏の副作用とは分けて考える場合もあります。

リバウンドの症状には個人差があり

・使っていたステロイド軟膏の強さや期間
・その人の体質
・アトピー性皮膚炎・アレルギー体質の有無

等により変わります。
ただほとんどリバウンドの症状が出ない方も稀にいて、どのぐらいの症状になるか全く予想がつかないのが現状です。

 このお客様の場合、休薬して14日目頃から急激なリバウンドに見舞われました。こうなると仕事も休まなければなりません、これほど炎症がひどい場合、私は一度ステロイド軟膏を使用して落ち着けるのですが、

お客様

「もう軟膏は使いたくありません。
ここまで我慢したのでもう少し頑張ってみます。」

とのこと、

この場合、傷口からばい菌が入り感染症にかかってしまうことが心配です、
・発熱
・だるさが続く
・尿が出ない
・むくみがひどい

等があればすぐ病院へ行くように指導します。最悪命に関わるようなこともあるため、お客様にもしっかり説明し、慎重な対応をします。

(本来このようにひどい炎症は病院での治療が優先です。ですがステロイド軟膏を連用されていた方は「もう使いたくない」と頑なにステロイド軟膏の使用を拒否される方が少なくありません。)

③リバウンド後に訪れる肌の乾燥

 リバウンドの症状がピークを越えると、炎症は治まり、風船がしぼむように腫れも引いていき、乾燥が残ります。写真の状況ではスキンケアを強化し、補助的に漢方薬を使うことで徐々に肌は戻ります。

 実際、リバウンド症状は何も対処しなくても時間が経過すれば少しづつ元の肌にもどります。

 ただその過程では腫れ、痒み、痛み、夜眠れない、仕事にならない等、生活の質が非常に損なわれます

 そのためスキンケア漢方薬で辛さを少しでも和らげ、リバウンドの時期を少しでも短くする工夫が大切です。

 またリバウンドを避けるため以下のようなステロイド軟膏の使い方をして少しづつステロイド軟膏を減らして行くと安全に減薬できます。

④正常な肌に戻りました(少し乾燥はありますが(๑˃̵ᴗ˂̵))!

元々アトピー性皮膚炎がある方はステロイド軟膏のリバウンドが強く出る場合が多いです。急激な使用中止はご注意ください。

*個人の意思でステロイドをやめる場合・発熱・だるさが続く・尿が出ない
・むくみがひどい
場合は必ず病院を受診してください。

*リバウンドが落ち着くには個人差があり、3ヶ月で落ち着く方もいれば、1年以上悩まれる方もいらっしゃいます。

*今回の記事はステロイド軟膏を否定するものではありません。上手に使うことが重要です。

 ステロイド軟膏は良い薬です、ただ安易に連用すると深刻な炎症症状を招くことも。使用にはメリハリが大切。休むときは休む、使うときは使う、賢く使用することが大切です。

リバウンドで苦しむ方を一人でも減らしたい

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