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変わって、代わって、買えること


新型コロナウイルスの影響で、医療系出版社はどうなったのか


どうもお久しぶりです。本当に危なかった。ギリギリnoteやめていませんでした。これからも不定期ですが、ちょぼちょぼとアップしていきたいと思います。

さて、最近WEB会議をするたびに、コロナの影響はどうですか?と聞かれることが多くなりました。長い営業マン人生でこれほどまでに環境が激変したことは無かったので、頭の中を整理する意味で書いてみます。


① 本の売上が変わった(激減した)

これはかなりダメージがデカいです。医療系の本って、新入学生、新入職者、部署異動、転職とイベントの多い3~5月で年間売上の4割程度を稼ぎ出している会社が多いのです。そこに緊急事態宣言がドンピシャに重なり、大幅な売上減となりました。

ある出版社が調べたところ、4月については看護書を卸している約1,000書店のうち、約270店舗が臨時休業という状況でした。これ以外に時短営業店舗も多くあり、しかも休業店舗は売上の高い都市部の大型店舗だっため、これまた大打撃となりました。

また医療系出版社にとってもうひとつ大きいのが、学会での販売です。学会に合わせて新刊書籍を発売する出版社はとても多く、学会場での販売はもちろん、購入された方による宣伝効果も期待しています。

年間1,500以上ある医療系学会のうち3~5月は大型の学会が多く、リアル書店にあまり卸していない専門性の高い医学書については、紹介する場が無くなってしまいました。著者も編集者も営業マンも書店さんも、これは本当にツライ。。。


② 医療教育が変わった

医療教育は「医療知識の集積」と「医療技術の習得」の両輪です。そのため講義を聴き、実践する集合教育が必要と言われてきました。

新年度を迎えた4月にそれらがまったくできなくなり、オンライン授業に切り替わりました。医療教育はさまざまな教科書をひらき、横断的な学習が必要なため、オンライン授業やデジタル教科書には不向きという意見も多くあります。

しかし、登校ができないため、仕方なくこのオンライン授業を実施した学校は多くありました。結果はこれから検証されると思いますが、利点や不都合な点が明確になってくると思います

新型コロナをきっかけに、いままで敬遠していた多くの医療系学校が取り組んだことにより、ひとつの大きなハードルを越えたことは確かです。これから医療教育がITを駆使した次のステップへ進むのか、元に戻るのか。

ただ、一度取り組んだことをリセットするのは無駄も多いため、恐らくなんらかの形でオンライン授業は継続すると思われます。集合授業に代わる講義や実習、紙に代わる教科書やデジタル資料導入について、ここからさらに検討されるはずです。


③本の買われ方が変わった

都市部の書店は軒並み休業、時短営業を余儀なくされました。医療関連書は同一タイトル(テーマ)の本が非常に多く、店頭で比較して自分に合った本を購入するケースが多くあります。また高額なためネットのレビューだけで購入することへの不安もあります。

その買い先が失われました。けれど業務や授業には必要なので買わなければならない。その結果、今までネット書店を利用していない人も利用するようになりました。

その後、Amazonが生活必需品の発送を優先し、本の受注制限を実施。その影響が楽天へも波及し、同様の方針になりました。結果的に4月中旬から下旬まで、ネット書店で品切の本が続出し、本を買う場所がなくなります。

そして、行き着く先が出版社のサイトです。自社商品の受注、発送は今までも行っていましたが、注文の絶対量が少ないため、十分な人の手当てをしていない出版社がほとんどです。殺到する注文を捌けず売り損じをすることも多かったと思います。


医療系出版社が、これからやるべきこと


今回、一番迷惑を被ったのは、欲しい本が買えなかった読者の方。そして、店を開くことができなかった、学会で展示できなかった書店です。

我々出版社は、本の購入の仕方が変わりかけている読者の方に対し、あらためて書店店頭で購入することの良さを伝え、もう一方で安定して本を提供できる体制作りが必要です。

書店に対しては、当たり前ですが売れる本を作ること。そして自社だけではなく、他社と協同して書店を盛り上げる取り組みを積極的に実行することだと思っています。

出版社の本の作り方、本の届け方は大きく変わりません。人と出会い、本を作り、人と出会い、本を届けます。人と会う方法が画面越しなのか、対面なのか、選択肢は増えました。今回のことをポジティブに捉えて、より効率的で効果的な方法を探っていくことも重要と考えます。

すぐには元通りにはなりません。ただ、緊急事態宣言が解除されて以降、書店の売上が前年同月を超えそうだという嬉しい報告をたくさんもらっています。

書店という新しい発見がある場所で、「自分にとっての生活必需品」と出会ってもらえるように、「看護書販売を考える会」でも知恵をしぼり、行動を起こしていきたいと思います。

(もろもろヤギ座長の個人的意見ですので、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。)


(長文のおまけ)

この期間中に知り合いを通じて、看護師の方から本の購入について相談がありました。

「看護書を選ぶときの基準を教えて欲しい」

たしかに、「わかりやすい!」って書いてあるのに難しく、文字ばっかりで難しそうなのに、じつはわかりやすい、という本はありますね。

そして、こんな回答をしました。

①出版社で判断する

「やさしい」「わかりやすい」は各社謳いますが、編集者の企画力、依頼先、編集力によって、その内容はむちゃくちゃ変わります。

そのため、一度でも買ったことがある出版社でわかりやすかった、読みやすかったなどの経験があれば、その会社で希望の本を探すことをおすすめします。

②書店で比較する

ネット上の「試し読み」は良いところ(写真が多い、イラスト・図版が多い)を載せています。

書店へいき、欲しいテーマの本で表紙がみえるように置いているものを3点ほど見る。知りたい項目を3冊で比較すると、あっさりと書かれている本、細かく書かれている本、イラストなどでわかりやすく解説してある本、などそれぞれの特徴がわかります。その中で、自分が好きな(読み切れそうな)本の購入をおすすめします。

看護書は高額な本ですし、やはり実物を見て購入をして欲しいです。書店に行けば、偶然知った目的以外の本を購入することもできますしね。

本って、中身だけでは無く、表紙や本紙のデザインや手触り、重さ、文字の配列など、編集者とデザイナーの知恵がてんこ盛りです。ぜひ、実際に本を手にとって、努力の跡を感じ取ってもらえたら嬉しいですね。

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