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臨死体験

こんにちは。

佐野です。

皆さんは心臓が飛び出るほどに激しい運動をしたことがありますか?

僕はあります。

貴方になくて、僕にあるもの。

それは心臓が飛び出るほどに激しい運動をしたという経験です。


心臓が飛び出るほどに激しい運動をしたマウントを取る、それが今回の記事になります。


「僕は・・・明日、9時50分の電車に乗るんだ!」

STHU(心臓が飛び出るほどに激しい運動)の前日の夜、そう叫んで私は就寝した。

アベレージ13時に起床する私が朝の9時50分の電車に乗る。

これはめちゃイケにSMAPが出演した時くらいのビッグイベントだ。

叫ばずに寝ろという方が人道に反している。

「明日は9時に起床するんだ!!!9時50分の電車に乗るために!!」

喉を枯らしながらそう叫んだ私は

アラームを9時、9時5分、9時10分と設定した。

なぜ9時15分までセットしないのか

という疑問に対しては

「キリがないから」としか答えようがない。

この三回のアラームで起床できなかったら諦めるほかないという男の大勝負をとくと楽しんでいただきたい。


翌朝。


三回のアラームは滞りなく鳴り終えた。

アラームも普段活動しない9時という時間に戸惑いを隠せない様子ではあったが、見事に自分の仕事を全うした。

普段と違う役割をこなすアラームの姿は侍Japanで普段先発なのに中継ぎを任される各球団のエースを彷彿せざるを得なかった。


やがて、佐野は起きた。


時計に目をやると9時20分。

アラームを全て止め切って、無音の部屋にした割には

セーフティな時間に起きることができた。

駅まではだいたい徒歩10分。

40分に家を出れば間に合う計算。

荷物はある程度まとめてあるため

寝癖を直し、着衣をすれば家を出られる。

しかしこの日はもう一つするべきことがあった。

ピザを食すことだ。

前日に食したドミノピザの余りを朝食で消化する必要があった。

残り20分。

寝癖を直している間にピザを温めた。

大谷翔平が投手と打者の二刀流なら

佐野寛は寝癖直しとピザ温めの二刀流だ。

いや着衣も含めたら三刀流だ。


寝癖を直し終えたらトースターがピザを温め切った合図をくれた。

出来立ての旨味を取り戻したピザを朝起きたばかりの口に放り込む。

気分は200キロ体重、仰天ニュースお抱えのアメリカ人。

朝でも、一回冷えても、ドミノはうまい。

こんなことに気を取られていたらあっという間に時刻は9時40分を過ぎていた・・・


ファッ!?!?!!


まずった。

今から家を出てもほぼ確実に間に合わない。

更に、歯を磨いて窓を閉め、冷房を切らなければならない。

そんなことをしていたら、下手したら家を出発する時間が

電車の出発する時間のそれである可能性すらある。


しかし、歯磨きも窓閉めも冷房を切る作業も怠ることなど許されない。

そもそもなぜ朝起きるときに窓を開けたのか、窓を開けるタイミングで冷房を切らなかったのか。

このどちらかの作業に抜けがなければ

歯を磨く&窓を閉めるor冷房を切る

で済んだのに・・・


結果として私は三兎を追って三兎を得ることにした。

歯を磨きながら窓を閉め、冷房を切った。

音を置き去りにする速さで。


時刻は9時46分。

電車が発車するまで残り4分。

家から駅までのアベレージタイムが10分であることを考えるとこの残り時間が如何に絶望的かが伺える。


しかし、本当にこの時間の電車を逃すと重大なミスを犯すことになる。

次の時間の電車では絶対に許されないのだ。


「諦めたらそこで試合終了ですよ・・・」

俺の高校時代の恩師の言葉が脳裏によぎった。

安西先生・・・電車に乗りたいです。


私は走った。

全速力で走った。

コンクリートの上を走っているのに

砂埃が舞った。

俺の肥大した足の筋肉が

コンクリートを粗削りしているのだ。

それほどまでに俺の足は命がけで俺を駅へ運んでくれている。

期待に応えないわけにはいかない・・・

駅を視界に捉えた。

残り時間は1分。

アベレージタイムを大きく上回るタイムだ。

階段を登りきるとそこには改札が広がっていた。

「あれ?ここ新幹線走ってるっけ??」

そんな会話が聞こえてきた。

どうやら光の速さで移動する私を新幹線と見誤ったらしい。

無理もない。

今、私は新幹線は愚か、リニアすら置き去りにする速さで移動しているのだ。

電車がやってきた。

「乗れる・・・」

予感が確信へと変わった。


駆け込み乗車をしてはいけない。

構内に入ってからは速度を落とし着実に電車へと歩みを進めていく。

乗れた・・・

安堵のため息がでた。

マスク内に自分の息が充満する。

歯を磨いておいてよかった・・・

心からそう思った。


しかし、安心したのも束の間。


臓器が唸りをあげた。


五臓六腑という五臓六腑が唸りをあげたのだ。

人知を超えた速さで移動したことによって過度な負荷を与えてしまった臓器たちが

ここぞと言わんばかりに唸りを挙げたのだ。

「死」

私の脳内メーカーはこの一文字で支配された。


脳は思考を停止し、

鼓動は通常の8倍の速さで動き出した。

自分の人生が8倍速で寿命を縮めているのだ。


胃が踊り狂い、腸が舞う。

気持ちが悪い・・・


今までに感じたどの吐き気よりも重度の吐き気が私を襲った。

迫りくるドミノピザ。

私の体内に貯蓄されているドミノピザちゃんたちが猛然と食道を突き進む。

喉元と肛門をシャトルランのようにドミノピザちゃんたちが走り回る。


このドミノピザが喉、肛門、どちらから飛び出そうと

私は社会的に死を迎えるだろう。

ただでさえ身体的に死を感じるくらいに気分が悪いのに・・・・



結果的に半分意識を失った状態で新宿駅に着いた。

20分ほどの走行時間、慣性の法則がいたずらに働いたが最後の最後で持ちこたえた。


以上が私の臨死体験だ。

きっと想像していた100倍の壮絶さだっただろう。


朝は余裕をもって起きた方がいいことと、ドミノピザは一回冷えても美味しいってことだけでも

覚えて帰ってください。

















みなさんからのサポートで自分磨いて幸せ掴むぞ♪