見出し画像

(21)夫の考え

会えない須藤さんを想って、恋のため息をついてしまうのは毎日なんだけれども、

でも、これも説明がつかないのだけれど、

夫のことも毎日好きだ

夫のことを尊敬しているし、

顔も好きだし、

声も好き、

その美しい指も好きだ。
(わたしに官能的に触れることがなくなってしまったその美しい指を、ときどき哀しく眺める)


夫とは一緒にいてとても楽しいし、

日々の家事のことや、家族としての距離感も、いい感じにバランスが取れていると思う。

セックスレスの問題がなくて、

夫から、毎日お腹いっぱいの愛を注がれていれば、

こんなふうによそに気持ちが向かなかったのだろうか?


ただ、夫とのセックスレスの背景があるので、

"正当防衛"のような気持ちで、

須藤さんへの恋心を肯定的にしているところは、とてもある。

そして夫への罪悪感は、ない。

あなたがそうなら、

この流れは仕方がないよ、と、思ってしまったのだ。

わたしは、女として求められないまま、

このまま歳をとって死んでいきたくはなかったのです。

この件を考え出すと、

泣きたくなる。

好きな人にも、放置されているし。

愛について、

少しだけわかりそうになったり、

また泣きたい自分に戻ったり、

そんなふうに、

行きつ戻りつで、

生きている。


そんな中、

先日、久しぶりに夫からランチに誘われた。

夫は、時おりのわたしとゆっくり"ランチ飲み"できる時間を大事に思っているようだ。

近頃の夫はずいぶんと忙しかったのでしばらくその時間が取れず、

たぶん、2ヶ月ぶりくらいに、

ゆっくりとふたりでお昼から美味しいものを食べて、

飲んで、いろいろ話した。

ああやっと、かの子とこんなふうに過ごせるなあ、

俺にはこの時間が必要なんだ

と、夫は、とてもリラックスしている。

そんな彼に、

わたしの普段の"飲み活"(男女問わず、とにかくちょこちょこと、誰かしらとよく外で飲む)の印象をなんとなく聞いてみると、

その中に

もしかしたら、特定の関係を持ってしまう人がいるかもしれない、

という想像は、なくはないと言う。

けれども、

結婚していることを理由にそれを止めることはできないと。

突発的に恋に落ちてしまうことは、ある、と、夫は言う。

結婚の契約や、約束、なんてものは、なんの縛りにもならない。

人が好きということが大事だと思うんだよね

と。

俺たちがお互いに最初に恋に落ちたように、

キミが他の人を愛してしまうことはあるだろうし、

それは素敵なことだ、

そうしてほしい、

と、言う。

本当に、そう言うのだ。

かっこつけてじゃなくて。

本心から。

だから、わたしは、

誰かとほんのりと良い雰囲気の夜を過ごした後でも、

夫の顔色をビクビク伺ったりすることなく、

ただいまー!

はー飲み過ぎた!

と、無邪気に帰ることができるのだ。


誰と飲んでたの? と聞かれるときもあるし、別に聞かれないときもある。

聞かれれば、須藤さんといた、とか、七尾と飲み過ぎた、とか、その日の話を、恋の部分だけ端折って、面白おかしく報告する。(須藤さんといたのに、女友達と飲んでた、などと、余計なウソはつかない。後できっとボロが出るから)

夫は、とくにやきもちを焼く様子もなく、興味を持ちすぎることもなく、聞き流す。

こういう人だから、

わたしはずっと好きで、

ありのままの自分で、一緒にいられるのだとおもう。

既成の概念に、縛られない人。

それは逆にいうと、

夫が誰かと恋に落ちて、家に帰ってこなくなる可能性も、もちろん含んでいる。

けれどもこの25年以上の付き合いの中で、

これまでのところは、ないようだ(誰かとの心の交流はあるかもしれないけれど、家に戻らないほどの激しい恋という意味合いでは)。

わたしはいつでもその覚悟は、している。

結婚、という約束は、その契約でお互いを無益に縛るものではない、と、感じているし。

だからこそ、

相手と一緒にいることを当たり前と思わずに、

今日も一緒にいてくれてありがとう、と、

愛と感謝と尊敬を持って、接することができるのです。

(ほかの人に恋をしていたとしても。それは、わたし的には、別のはなし)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?