ナンノカンノ

怪奇幻想分野を愛する人。

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最近の記事

浮きあがる

 書いた文章のどこをどう見てもインターネット根暗人間であることを疑いようがない私である。きっと幼い頃から外で遊ばず、運動という運動を嫌い、学校ではいつもひとりぼっち、本と漫画、アニメを愛して空想に生きる人間だったに違いない、と読者諸氏は予想されているものと思う。  だが、私の記憶に間違いがなければ、私は小中高と運動部に所属し続けていた。小学校では低学年の頃からスイミングをして、高学年になるとさらに球技のクラブに所属し、中学校では剣道部に入っていた。高校でも運動部に入り、大学

    • ゴーリーを読んだはず

      エドワード・ゴーリーの絵本が好きだ。 ちらりと視界に入れるだけで伝わる、ただならぬ雰囲気。 シニカルで少し笑えることもある。 幾重にも重なる、繊細なタッチも素晴らしい。 しかし残念なのは、私に英語の能力がないために「絵本」としての魅力を満喫しきれないことである。 やはり原文で読んでみないと伝わらない部分がきっとあるに違いない。 できれば原文で味ってみたい。 しかしどの程度英語に親しめばそれができるのだろう。 喋れるくらいになれば楽しいのか。 文字さえ読めればいいの

      • ヒヤシンス印の脳味噌

         先日知ったのだが、妄想もしなくなると傷むらしい。  幼い頃から眠れない夜は空想にふける癖があって、ある夜久しぶりにそれをしてみたら、後頭部にひどい違和感があるのに気づいた。うなじのところを親指で押して、頭の後ろ側を取り、頭蓋骨の中から私の妄想脳を引っ張り出してみる。  私はショックを受けた。  そのひどさ!  おぞましさ!  瘡蓋にまみれた縮れ気味の、干し梅みたいな肉が出てきた。かつての私の妄想脳は、もっとつるりとした肉色で、まるまるしていたはずなのに。  一度気になってし

        • コミュニケーション戦闘力

           メッセージのやりとりが苦手だ。メールや手紙、SNSなどは考えるだけで胃が痛くなる。  私はそもそも、生身の人間との会話すら必要以上に緊張するのだ。他人と顔を合わせ、目を合わせるのでさえ緊張する。声を掛けるとき、その人の顔色、挙動、状況を鑑みて、どのような言葉を、どのような調子で発するか。そんなことを考えるだけで、私のもやしなメンタルが動悸息切れを訴えてくる。  だから、メール、手紙、SNSなどのツールは、私にとってもはやコミュニケーションの暴力である。面と向かっての会話

          じゅうよんさい全盛期の記憶

           エッセイを書くのがどうにも苦手だ。なぜならば、私は記憶力が非常によくないからである。   辞典を引いてみると、「筆者の体験などから得た知識をもとに、それに対する感想・思索・思想などをまとめた散文」とその定義が示してあるが、さてではその体験したことを思い出してみようとすると、アレ、となる。 「あのとき、あの人はなんて言っただろう」 「おとといは買い物とスポーツジム、どちらに先に行っただろうか」 「えっと、この間読んだ本の名前、なんだったか……」  思い出せない。  

          じゅうよんさい全盛期の記憶

          短歌1

          クリスマス正月節分雛祭り騒げりゃぶっちゃけ何でもいい

          空からの手紙

          こんにちは そちら は にぎやか ですか わたし の ほし には マニン が たくさん います マニン は いつも て と て を つないで いきてます て を つなぐ こと で いきる エネルギー を えられる のです へいわそうでしょ マニン は じっさい そうとう おとなしくて めったな ことで こえ を あげない いきもの です でも マニン の なか には て の つなぎかた の このみ が はげしい の が いて て の つなぎかた が き に いらない と き

          詩2

          目の奥がぐらぐらしたら 輪郭がちかちかしたら 黙ってまぶたを伸ばせばいい 真黒でやわくあたたかい 夜の布団に包まれる 二つの目はもう飽きた 一つの口も飽きた びしりな歯なんてもうたくさん ぐらぐらちかちかもうたくさん まぶたをそっと伸ばす

          川柳1

          絶不調お薬おいしいなんでかな

          くそこぶん2

          我がふるさとは颪と岩の国である。 それ以外には何もない。 夏は炎天蒸し風呂の如く、 冬は颶風損壊したドライヤーの如し。 ひと、颪に耐えるのに懸命なり。 岩に頼らんとす。岩にひしとしがみつく。 颪は吹き続ける。岩を穿ちて風より逃れんとは考えず。 目先の颪、鼻先の苦しみに七転八倒するは、あわれなり。

          くそこぶん

          世のひと、生身持つ現実こそ至高なりと云う。 己が身と彼の身が出会う。 彼の身の上に夢を見る。 彼の上に見た夢の破れし時、 己は我が夢をのみいつくしみ哀み、 彼の身をつれなく思う。 これ夢、何ぞ至高ならざらんや。 虚構、何ぞ至高ならざらんや。

          詩1

          大きく開いた口 ふーふーふーふー 何をそんなに呼吸しているのか

          『黒潮の声を聞け(仮)』

             友人の祖父は森の社を守る『宮守』だった。私たち由良の森の人間でも辿り着けぬ樹海の奥、古くから生きる樹々の吸い上げた精気が濃霧となって立ち込める、そのさらに奥へ隠された小さな社。それを守るのが仕事なのだと聞いた。  私が幼かった頃はまだ、年に一度、その年に七つになった子供たちを社へ連れて行く慣習があった。だから私も、森の中を通って社に行ったことがある。しかしその道中のことはまともに思い出せない。ただ宮守様について行くのに精一杯で、とにかくへとへとになったことだけを覚えてい

          『黒潮の声を聞け(仮)』