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【物語の現場018】締めは融女寛好渾身の双龍図巨大絵馬(写真)

「融女寛好」の第三十五章(最終章)で紹介した堀之内妙法寺額堂に奉納されている巨大絵馬。

 額堂自体は文化十一年(一八一四年)の建立。堂内には巨大な絵馬がいくつも掲げられており、さながら江戸時代のオープンギャラリー。
 勇ましい武者絵などが並ぶ中、ひときわ格調高い作品と言えるのが、融女寛好の「双龍図」です(東京都杉並区、2021.11.17撮影)。

 この画は、直に見られる融女寛好の作品として貴重であり、彼女のキャラクターを決める上で大きな影響を受けました。

 この堂々たる二匹の龍を見るまで、普通に髪を結い上げた一般的な武家のお嬢さんをイメージしていました。それを、髪は根結いの垂髪、目も切れ長で少し鋭い印象に変えました。より活動的で凛とした部分を強調したくなったのです。

 そして、この絵馬を見て何より感動したのが、彼女が、名前の横に「融川法眼寛信門人」と大書していることです。

 この絵馬の奉納は、文政六年(一八二三年)、お栄さんが31歳のとき。いろいろあったとしても、融川の弟子であったことは、彼女にとってこの上ない誇りであったのでしょう。

 彼女のその思い、物語を通して少しは伝えることが出来たでしょうか。

 融女寛好、本当にどんな絵師だったのか。どんな一生だったのか。興味が尽きません。新たな作品や資料の発見が待たれます。自分自身も、彼女とその時代についてさらに学び、いつの日か、彼女の画塾を舞台にした「融女寛好外伝」でも書ければと思っています。

 さて、これにて、「写真で見る物語の現場「融女寛好」編」も完結です。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。次の小説連載時にも、こうした副読本を用意する予定ですので、またよろしくお願いします。

令和5年10月31日
仁獅寺永雪

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