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融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

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完結。投稿した歴史小説「融女寛好 腹切り融川の後始末」をまとめたマガジンです。前書き及び本編全35章
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2023年9月の記事一覧

【第30章・一門会議】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第三十章  一門会議  打ち合わせが終わると長谷川たちはすぐに出て行き、座敷には栄と素川…

仁獅寺永雪
8か月前
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【第29章・朝】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十九章  朝  いつもと違う天井だ。でも、杉板の木目に見覚えがある。そうか。泊めてい…

仁獅寺永雪
8か月前
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【第28章・幕間狂言(二)柳橋の女】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十八章  幕間狂言(二) 柳橋の女  娘を見送った後、こまの父親も浅草の店に戻る。彼…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第27章・幕間狂言(一)扇屋の娘」融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十七章  幕間狂言(一) 扇屋の娘  江戸の朝は明け六つ(ほぼ午前六時)に始まる。各…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第26章・涙】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十六章  涙  栄と新十郎が浜町狩野屋敷に着き、門脇のくぐり戸から中に入ると、玄関前…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第25章・帰り道】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十五章  帰り道 「新十郎さん、お待たせ」 「あっ、お栄様。終わりましたか」 「ええ、…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第24章・意外な名前】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十四章  意外な名前  栄は、背筋を伸ばし、正面から備中守を見て返答を待っていた。  備中守は思う。こんな小娘にやり込められたことに腹は立つが、幸いなことに、この娘は馬鹿ではないようだ。双方共倒れになるような選択はするまい。  彼も、魑魅魍魎が徘徊する殿中を生き抜く政治家である。感情より利害を優先させることが出来た。 「それで、そなたは、予に何を望むのか」 「はい。わたくしとしては、備中守様に二つのものを所望したく存じます」と、栄はすらりと答えた。すでに頭の中は整理

【第23章・将軍の影】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十三章  将軍の影 「くっ、それは・・・」  備中守は、自分が完全に追い詰められてい…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第22章・備中守の狙い】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十二章  備中守の狙い  栄は、備中守の問いを無視し、彼を睨んだまま黙っている。十万…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第21章・突破口】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十一章  突破口 「し、しばらく、ご両所とも、しばらくお待ちを!」  慌てた町田の声…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第20章・黒書院の対決】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第二十章  黒書院の対決  阿部家上屋敷黒書院、上段から見下ろす備中守・阿部正精も困惑し…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第19章・探幽の獺(後段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十九章  探幽の獺(後段)  栄の回想は続く。鍛冶橋家の家老が去った後、大きな画帖らし…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第18章・探幽の獺(前段)】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十八章  探幽の獺(前段)  阿部家上屋敷の黒書院。栄が室内に入ると、蘭方医・町田昌豊…

仁獅寺永雪
9か月前
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【第17章・虎穴に入る】融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)

第十七章  虎穴に入る  栄は、神田駿河台の大久保屋敷を辞し、いよいよ阿部家上屋敷に向かう。現代で言うと、東京駅丸の内口の新丸ビル辺りである。  神田からは、神田橋御門を渡ってまっすぐ南下すれば近い。しかし、その地域には、御三卿の一橋家や譜代大名筆頭・酒井家などの屋敷が並んでいる。近道なのでちょっと失礼、とはいかない。よって、少し東に迂回し、呉服橋御門の側から阿部家上屋敷を目指すことになる。  栄と護衛兼連絡役の狩野新十郎が、呉服橋御門の番所に着いたのは、四つ(ほぼ午後十