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径 (みち)

白き径をひたすらに…

でも何故白い?

黄色い径をひたすらに…

でも何故黄色い?

床しい径をひたすらに…

でも何故床しい?

新しい径をひたすらに…

でも何故新しい?

満ち足りた径をひたすらに…

でも何故満ち足りてる?

足りない径をひたすらに…

でも何故足りない?
何が足りてて何が足りない?

満ちません

満ちなかった

満ち足りていた

幸せだった

不幸だった

でもどうして?

マンゴーのような甘く熟した濃い色の月が登ってゆく…

でも何故登る?

余談があった…

でも何故?

予感もあった

でもどうして?

答えを探しに径を行く

書かれた径を

書かれていない径を

内部者の径を

外部者の径を

話だけで
話したくて
話せなくなる

そんな径を

ひんやり冷たいピンクのノクターンが灯る
揺れる

でも私には関係無い

いつもいつもいつもそう…

径をひたすらに…

涼しかったし

夏だったし

若かったし

若くなかったし…

初雪の径を

夏服の似合う径を

刃先のような径を

円かな径を

なにもかも

なにもなく

なんてことない

なってしまいました

なってゆく

ないし

なってしまって

なられましたか?

なりたかった

いいえ
ええ…
はい…
解らない
解らないけど…

径をひたすらに
ただひたすらに…

アニバーサリーも

零(ゼロ)も…

走り抜けます

ただひたすらに

径を

ただ径を

ひたすらに


硝子の径を

焼けた鉄の径を…

鴉(カラス)の群飛ぶあの径を

女の乳房のような径を…

男の骨で出来た径を…

海の中の径を

風渡る川面(かわも)の径を…

径のない径を

さようならの径を

こんにちはの径を

未発表な径を

破滅の径を

継ぎ足した径を

無防備な径を

端境期(はざかいき)の径を

再生の径を

鳥の径を

虫の径を

犬の径を

猫の径を

人の径を…

でも何故?

どうして?

若くなかったし若かったし

悲しかったし嬉しかったし

ただ径を

ただ径を…

ひたすらに

ただ径を…

貴方が居ないこの径を


貴方という意味が消えて無くなった世界で初めて見る独りぽっちの径を

…でも雲が光る

幼いバレリーナのようにたどたどしい雲が歴青(チャン)のように蒼い蒼い空の中から私を誘(いざな)う

貴方の残していった道標(みちしるべ)のようにそれは走っても見える

歩いても見える

晩夏の水溜まりの中に見つけた内気な虹のように…

径は秘密の奥に隠されそこで水仙のように香り高く項垂れて睡っている

隠された宝物のように…

光る径はそれでもまだある…

貴方の居ない世界になった

白き径をひたすらに…

正しい径をひたすらに

不正の径をひたすらに

日溜まりの径をひたすらに

(たとえ我、死の谷の影を歩むとも)

翼の羽ばたく音のするその路傍で私は空を見上げる

径は続く

空の彼方に


もろくて強い儚(はかな)くて図太い

大人の径も

子供の径も…

羽ばたく翼の音に私はその径の上ではたと目覚める

世界は死んだ
(災いを恐れじ)
世界は変わった
(災いを恐れじ)
でも径は続く

ただひたすらに

這うように

哭くように

嗤うように

吠えるように

噛みつくように

歌うように

踊るように

死ぬように

生まれるように


災いを怖れ戦きつつ、夢破れながらもこの径を…

ただこの径を

貴方の居ない、
でも私は居る…

頭上に白い羽根が舞い落ちてきた…
(主は我を緑の野に臥させ)
私が選んだこの径で…
(憩いの汀に伴いたもう)

そう信じるならば…
(我、災いを恐れじ)

戦きながら径をゆく…

怯え後退し泣きながら…

でも(我災いを恐れじ)

小さく大きく闘いながら…

私はこの径の上でもう一度死にもう一度生まれ変わった…


この径で

この径を

ただひたすらに…

この径を

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