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白鷺

貴方と私、

秋の黄昏の純金に互いの違いも解らぬほどに濡れ染まり…

濡れ光り…

まるで私達じゃないみたい。



傘を驟雨(しゅうう)が止んだ鏡の路面に投げ棄てて互いの不安をかき消そうと強く抱き合うふたりはまるで眩しい針水晶の中で釘付けになった秋に咲く夢幻の現し身(うつしみ)…



釣瓶が落つる音がしそうなあっという間の逢魔が刻…



まるで金と銀の狭間で揺れる水面の睡蓮の花の下で眠る青条揚羽(あおすじあげは)の夢のようよ…



私達は蜻蛉のように、か細いハートの金環となり連って果てしない海の上で夢の続きを飛んでいったわ……



すると突然固く抱き合う私達が我に返って気づいた空を純白の白鷺が巨きな翼を拡げて一度も羽ばたくことなく滑るようにゆるやかに飛んでいった……



きっと私よりあの白鷺のほうが神に愛されるに足る魂…。

熱に浮かされた私は言う。



『私、貴方に愛されたいの』



だって貴方は空。

果てしなく広くて大きいわ…

私は貴方の中を純白の翼を拡げてきっときっと飛んで見せる。

そうしたら…

それが出来たら…

どうか私を『美しい』と言ってね



白鷺より偉大でも無垢でも美しくもない…そんな私に貴方は『もうすぐだ』と言ってくれるから…。



あぁ白鷺になりたい…

せめて一瞬でも貴方に美しいと見上げられて飛んでゆく白鷺に…



それなのに…

それなのに…



私は秋の夕暮れの丘に立つ人間の貴方に恋をしたたった一本の(ひともと)命です…



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