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北東北の県民手帳を読み比べる

 県民手帳というものがある。
 いわゆるスケジュール帳の1種なのだが、県の統計局が発行しており各種統計資料や公共機関とその連絡先などが書かれているのが特徴だ。
 2024年度は北海道、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、滋賀県、大分県、長崎県を除く37県で発行されている。

 県民手帳、存在は知っていたが手元にとってみたことがなかった。
 というか元々スケジュールは基本的にスマホで管理するタイプで、社会人になるまでは手帳を買った記憶がなかったし、社会人になってから買ったのもメモ帳に毛が生えたようなものだ。

 ここらで本格的なスケジュール帳デビューを果たそう。という訳で4冊買ってきた

4冊の手帳を北東北の形っぽく並べたかったもの。
組体操ではない

 SNSを見ると想像以上に県民手帳の人気は根強い。
 正直文房具にさほどこだわりのなかった自分としては知らない世界だったが、県民手帳って実際どうなのか。
 手帳初心者による北東北3県の県民手帳読み比べスタートだ。

青森県

青森県民手帳。お値段は税込700円

 青森県の県民手帳の特徴はカラーバリエーション豊かだ。内訳はまぐろブラック青池ブルー奥入瀬グリーンあんずオレンジりんごレッドと青森県にちなんだものになっている。
 今回購入したのは青池ブルーだ。
 なお当初は限定盤として南部菱刺し模様をプリントした2種類の販売も予定していたそうだが、印刷がうまくできないために中止となったらしい。
 内容と関係のない特徴として、青森の県民手帳には県産品が当たる懸賞もついているということだ。一応後述する秋田県の県民手帳もアンケートに答えることで抽選で10名に来年の県民手帳が当たるのだが、帯にまでアピールするのは面白い。

 具体的に中の写真を撮影することは避けるが、以下の内容が記されていた。

青森県民手帳

・名所や主な道路と共に記したイラストマップ
・年間計画表
・カレンダー
旬の食べ物、ミニ方言図鑑(三方言が網羅)付き
・週間カレンダー
過去5年の天気と平均気温・積雪量付き
・青森県内の縄文遺跡
世界遺産に登録された8つの紹介
・青森県のグルメ(12個)
・青森県内の観光地説明(9か所)
・主要空路の図
・健康特集
主に生活習慣の改善を呼びかける内容
・四季の見頃紹介
弘前公園の桜や奥入瀬渓流の紅葉といった主要観光地の見頃の時期の紹介
・年齢早見表
・警察や県内の主要な総合病院などへの連絡先
・りんごの品種紹介
・東京都内の地下鉄路線図
・青森県内市町村・行政区画図

ふるさと便利帳(着脱可能の小冊子)
・青森県の概要
県の位置や気象情報、山岳や河川などの地理的なデータ
・青森県の主要統計
人口推移や県民取得、農業生産量や主なイベントの観光客推移など
・全都道府県の統計
・市町村ごとの人口や世帯数、面積などの統計
・市町村紹介

市町村合併の記録
各市町村のマークとマスコットキャラクター
市町村の花、鳥、木、虫、貝、魚のうち指定されているもの
・庁舎の住所と連絡先
・みどころ紹介
・特産品紹介
・イベントの紹介
・県庁一覧

県庁内の各部署の連絡先
・県民局・県出先期間等一覧
・国会・県議会議員情報
・暮らしの相談窓口
・主要な美術館や図書館などの利用案内
・大学・文化施設・展示館の住所と連絡先
・工場見学・制作体験ができる県内企業の案内
・道の駅案内
・主要な温泉案内
・主な行事の案内

 りんごの品種紹介や積雪量のデータはまさに青森らしい。県庁所在地である青森市は人間が多数住む都市としては世界一雪が降る都市と言われている。
 また、健康について特集するページがあるのも青森県らしい。青森県の平均寿命は全国最下位。これに対して県では「短命県返上」をスローガンに様々な取り組みがなされているので、これの一環なのだろう。

岩手県

岩手県民手帳は税込800円。岩手県能率手帳は税込900円。
値段は3県で最も高いが。カバーに高級感がある

 岩手県では岩手県民手帳と岩手県能率手帳という、2種類の手帳が存在する。
 岩手県民手帳については他の県の県民手帳とほぼ同様の内容だが、岩手県能率手帳はその名の通りNOLTYの能率手帳という文具に興味のある人ならまず知っているという手帳が用いられているらしい。
 内容は次のとおりだ。

県民手帳

・岩手県内市町村・行政区画図
・世界遺産紹介
・年齢早見表
・主な行事
・カレンダー

月の花暦と誕生石、書簡用語付き
・日記用ページ
過去10年の盛岡市の天気付き
乗り物時刻や貴重品番号、家族や知人の生年月日や血液型のメモ用ページ
・岩手県内の主な高速道路や鉄道路線、所要時間図
・東京都内の地下鉄路線図
・大阪、京都、名古屋、横浜、札幌、仙台市内の鉄道路線


・県議会議員一覧
(別冊にて印刷されており暮らしの便利帳に貼り付けて使用)

暮らしの便利帳(着脱可能の小冊子)
・非常持ち出し袋チェックリスト
・統計情報

位置や山岳や河川、全国シェアトップの作物、人口推移や経済成長率の全国との比較
・全都道府県の統計
・市町村ごとの人口や世帯数、面積などの統計
・県庁一覧

県庁内の各部署の連絡先とフロア
・県民局・県出先機関等一覧
・岩手県学校一覧
・県内主要団体等一覧

医師会のような職業団体やマスコミやインフラ関係組織への連絡先と所在地がある
・都道府県庁一覧
・中央官公庁一覧

国の官公庁(当然都内)の住所と連絡先
・東北管内主要官公庁一覧
東北の官公庁(ほぼ宮城、一部秋田)の住所と連絡先
・県内官公庁一覧
岩手県内の官公庁の住所と連絡先
・市町村一覧
各市町村のマークとその由来、キャッチコピーと庁舎の住所と連絡先、首長の名前と市町村の花、鳥、木、指定されているものは魚
(全ての市町村に花と鳥と木が指定されている)
・県の石の紹介
岩石は蛇紋岩、鉱物は鉄鉱石、化石はシルル紀サンゴ化石群
・文化施設一覧
資料館などの住所と連絡先
・主要温泉一覧
宿泊施設数や各温泉の特徴も書いてある
・道の駅一覧
・スキー場、スケート場、ゴルフ場、青年の家一覧
・各自治体医療機関一覧
・暮らしの相談窓口
・度量衡換算表
・単位換算表
・親族単位早見表
・郵便料金表
・印紙税額一覧

岩手県能率手帳

・岩手県内市町村・行政区画図
・カレンダー
・月間予定表
・スケジュール表

1時間ごとのスケジュールが刻めるほか、週ごとにメモ用のページがある。月の初めには書簡の言葉の例がある
・メモ用ページ
(以降暮らしの手帖から抜粋されたデータ)
・統計情報
位置や山岳や河川、全国シェアトップの作物、人口推移や経済成長率の全国との比較
・県庁一覧
・県民局・県出先機関等一覧
・岩手県学校一覧
・県内主要団体等一覧
・中央官公庁一覧
・東北管内主要官公庁一覧
・県内官公庁一覧
・都道府県庁一覧
・文化施設一覧
・市町村一覧
・県の石紹介
・岩手県内の世界遺産紹介
・道の駅一覧
・度量衡換算表
・単位換算表
・郵便料金表
・印紙税額一覧
・干支早見表
・2025年のカレンダー
・都内地下鉄路線図
・横浜、仙台、大阪、名古屋京都、札幌路線図

・連絡先メモ帳(別冊)
・県議会議員一覧

(別冊にて印刷されており能率手帳に貼り付けて使用)

 意外なことに、実は県に関するデータについては、値段が高価な能率手帳の方が少ない
 しかし特筆すべきは能率手帳のスケジュール帳としての使いやすさだ。暮らしの手帖が別冊になっていないのも、おそらく使いやすさに特化させたための配慮だろう。実は元々文具に興味がなかったこともあり能率手帳についても「聞いたことはあるかな?」程度の認識だったのだが確かにこれはファンが多いのも頷ける。
 しかも価格面についても、どうやら岩手県民向けに特化した分、岩手県民手帳よりは高価だが能率手帳よりは安価という位置付けのようだ。
 これを言ってはおしまいな気もするが、正直なところ「出先でも手軽に参照できて信頼できる県のデータが欲しい!」という人の割合は多くないと思う。パッと思いつく限りだと、そういう人間は県職員と観光ガイドとnoteで北東北の記事を書いている人間くらいだと思う。
 勿論観光情報なども見れるので一家に1冊あると便利だとは思うが、普段使いという面であれば個人的には能率手帳を押したい。

 それから個人的に少し驚いたのが誕生石(こちらは県民手帳のみだが)や県の石の紹介など、思ったよりも石推しなのだ
 実のところ個人的には、鉱物資源や秋田大学工業博物館のイメージから、北東北で鉱物と言えばどちらかというと秋田県のイメージがあった。
 考えてみれば県名にがつきポケモンコラボでも岩タイプを全力で推している岩手県だ。
 こう言った部分から県がPRしたい部分というのも垣間見えて面白い。

秋田県

秋田県民手帳は税込649円

 最後は秋田県。
 北東北3県の中では1番値段が手頃、外観もシンプルだ。手帳好きのSNSを見ていると、こういったシンプルな手帳にシールなどでデコレーションをして楽しんでいる人も多く見る。シンプルなデザインだからこそ、個人の個性が出しやすいという面もあるのかもしれない。

秋田県民手帳

・市町村区画図
・カレンダー
・県民の歌・歌
(楽譜付き)
・年間計画表
・予定表
・スケジュール帳

秋田県内の過去の主な出来事付き
・メモ用ページ
・秋田の歴史
・統計情報

 位置や山岳、河川や湖沼(十和田湖、八郎潟、田沢湖)の情報のほか、全国シェアトップの作物、人口推移や経済成長率の全国との比較など
・全都道府県の統計
・市町村ごとの人口や世帯数、面積などの統計
・議員名簿
・中央官公庁一覧
・都道府県庁一覧
・県内主要官公庁一覧
・本庁機構一覧

県庁内の各部署の連絡先とフロア
・秋田県機関一覧
・市町村一覧

各市町村の庁舎の住所と連絡先がある
・市町村長一覧
・市町村合併一覧
・緊急医療機関連絡先
・県民相談窓口
・各種施設利用案内
主要な美術館や博物館の住所や休館日の情報
・県内主要博物館等
・観光・物産のお問い合わせ
県や市町村の機関や観光案内所への連絡先
・ふるさとの行事
・道の駅一覧
・交通ネットワーク

主要な空路や鉄道、フェリー、高速バスや高速道路の情報
・郵便料金早見表
・書簡用語
・印紙税早見表
・計量単位早見表
・親等早見表、戸籍表による届出表
・点字、挨拶などの手話の紹介
・新秋田元気創造プラン
・災害時の備え
・重要無形民俗文化財、世界遺産紹介
・秋田県内の見所、温泉、食、工芸品紹介
・県内の主要スポーツチーム紹介
・過去の秋田の出来事紹介
・年齢早見表
・アンケート
・緊急連絡カード
・秋田県内観光マップ
・東京地下鉄路線図

 秋田の県民手帳は別冊になっていない。個人的には1冊にまとまっている方が使いやすいと思うのでありがたい。
 また、県民の歌についても楽譜付きなのが興味深い。青森と岩手の県民手帳にも県民の歌の歌詞程度はついていたのだが、ここまでしっかりとページを割いているのは秋田県の県民手帳の特徴と言えよう。秋田県の偉人といえば「浜辺の歌」などの童謡を多数作曲した成田為三。彼へのリスペクトという面もあると思ったのは考えすぎだろうか。
 観光マップ自体、青森と岩手のものにもあったが、特に詳細でわかりやすいのは秋田県のものだった。
 他の資料についても展示や手話など一見シンプルながらも痒い所に手が届く、質実剛健の手帳と言える。

意外とあるぞ、県民手帳の個性

 同じものを作るからこそ作り手の個性が出るとはよく言うが、県民手帳も実際に読み比べてみると細かな部分にそれぞれかなりの個性がある。
 
 すべての都道府県で発行しているわけではないとは言え、基本的に通販などで買えるものではないという性質も含め旅行の多い人はお土産として集めてみるのも面白いかもしれない。

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