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【海外やらかし話】インドネシアで電車の席を恵んでくれた見知らぬご夫婦

もう10年以上前のことです。巷にあふれている話だと思うのですが、高校生の頃に沢木耕太郎の深夜特急を読んだ私は、バックパッカーというものへの憧れを募らせつつ大学へ入学しました。
デリーからロンドンまでの陸路旅行はできないにしろ、大学最初の夏休みは「バックパッカーっぽい」ことをしたいと思い、インドネシアへの一人旅を決めました。
※これを書きながらそもそも「バックパッカー」の定義ってなんだと思いネットで調べましたが、低予算で(主にバックパックを背負って)中長期で旅行する人のことらしいです。大学生の夏休みの2週間だけの話なので、中長期でもないですし、バックパッカーと名乗る資格はない気がする…

それまで、初海外・初飛行機にも関わらず一人で送り出された中学生の頃のイギリスでのサマーキャンプ(パスポートコントロールの存在を知らず、変なところに入っていって係員のお姉さんにすごく怒られた記憶。入国手続きぐらい調べて行きなさいよ…というか親も教えておこうよ….)や、姉を訪ねたカナダの家族旅行はありましたが、お膳立てされず行く海外旅行は初めてです。
なぜインドネシアかと言えば、初めて自分で調べた飛行機の値段に恐れおののき、まだ手が出そうなのが東南アジアだったことや、特にイスラーム文化に興味があったことからです。そしてそのまま大学時代は東南アジアに入り浸ることとなるのですが、それはまた別の話。

旅程としては首都のジャカルタから入って、ジャワ島真ん中の世界遺産都市であるジョグジャカルタへ。ジョグジャカルタの宿は何日か押さえておいて、その後どうするかはその場で決めようかと。深夜特急に憧れていたというわりにはそれだけ?という感じですが、当時の自分にしたらどきどきです。
当時、さすがにスマートフォンは持っていましたが、SIMロックがかかっていて(当時はそれが普通)、現地ではWifiを捕まえない限り、ネットは使えません。さらに、Wifiも今ほどそこら中にあるわけではありません。ちなみにGoogle mapはネットがなくても現在地を見れるぞ…?!ということに現地で気づきました。圧倒的事前リサーチ不足。

とりあえずパスポートと現金を服の中に隠して、多大なる緊張感の中で降り立ったジャカルタ。ジャカルタの空港から街中の鉄道の駅まで行って、ジョグジャカルタまでの切符を手に入れないといけません。空港から出ているバスに乗って駅にたどり着くことはできましたが、そこで発覚したのが、今日の切符はもうありません。嘘だろ。
駅の係員に飛行機で行ったら?と言われ、空港へとんぼ返りしたはいいものの、そこでも今日のフライトはもうありません。

今思えば事前にネット予約するか(当時できたか分かりませんが)、せめて1日ジャカルタで時間を取って次の日の移動にするかすれば良かったんですが…当時、検討した覚えがないのですが、どうやらバスという手段もある模様。飛行機の中ですっごくどきどきしていた記憶があるのですが、その割に事前リサーチが足りなさすぎるんですよね。

飛行機はもう絶対無理らしい。空港にいても学生には高すぎる空港ホテルしかありません。ひとまず、空港から市内の鉄道の駅にとんぼ返りしました。その日の宿は既にジョグジャカルタで取っています。最悪、ジャカルタでどこか一泊するところを見つけないといけませんが、なんせネットはない。ジャカルタの地理もよく分からない。鉄道の駅の片隅で泣きそうになりながら立ちすくみます。
しかし、そもそも、ここまでのやり取りもちゃんと理解できているか怪しいものです。当時、英語はからっきしで、何か言われて分からなかったときに聞き返すことすらできていません。逆に、もしかして先ほどの鉄道係員とのやり取りも齟齬があったんじゃないか?もしかして今日の夜の便とかならどうにかなるのでは?と一抹の望みをかけて窓口にまた並びますが、やっぱりNO…なんだと思う。自分の質問が正確に理解されたかさえもよく分かりませんでしたが、めんどくさそうに無理だよというようなことを言われます。窓口も長蛇の列で、片言の英語で聞き返すのを続けるのも躊躇われます。

もうこれは市内をさまよって、何とかネットに繋げられるところを見つけて、今晩の最低限安全な宿を見つけるしかないのかと思っていたところで、いきなり、後ろに並んでいた男性が係員に話しかけました。どうやらご夫婦でいらっしゃる模様。私が時間を取りすぎたせいで文句言われてる…?!と焦ったところで、私の方へ話しかけられました。おそらく、ジョグジャカルタに行きたいの?と聞かれ、はい、と答えます。その後、男性と係員の間で少しやり取りがあり、いきなり、紙が私の前へ差し出されました。
ぽかんとする私に、"Your ticket" という言葉がかけられました。何が起こったのか全く分かりませんが、男性が私のチケットを取ってくれたようです。係員は相変わらず仏頂面ですが、ご夫婦は私に笑いかけてくれ、どうにかThank youだけ言ってその場を離れました。

その後、電車に乗り込んだところ、一番後ろの車両の一番後ろの席…そして通路を挟んで向かい側には先ほどのご夫婦が。これはいったい何が起こったんでしょう。やっぱり、私の英語がうまく伝わっておらず、本当は少し席が残っていた?何はともあれご夫婦にもう一度御礼を言ったところ、お菓子まで恵んでくれました。そして、私が危なっかしすぎたのか、ジョグジャカルタで泊まるところは?着くの遅い時間だけど迎えはあるの?宿の人が迎えに来る?なら時間を伝えないといけないでしょう。ネットで連絡できる?と至れり尽くせり(宿とテキストでやり取りした記憶があるんですよね…ということは電車にWifiがあった?10年前に?)何はともあれ、おかげでジョグジャカルタの駅では無事、宿の迎えに会うことができました。

ジャカルタからジョグジャカルタへの車窓から

ご夫婦は途中の駅で降りて行かれましたが、当時の自分の英語力が悔やまれます。ちゃんと御礼を伝えきれた気がしない。
こうして何とかたどり着いたジョグジャカルタから訪れたボロブドゥール遺跡からの朝焼けが記事トップの写真です。

この経験から、ジョグジャカルタからジャカルタへ戻る際は事前にチケットを予約したのは言うまでもなく、安全のためにも事前リサーチは入念に。旅行中、その日その日の予定はその場で組み立てればいいですが、移動手段だけはちゃんと確保しようと肝に銘じました。
そして何より、困っている旅行者には自分から声をかけるようになりました。お節介なだけなことも多々あると思いますが、お節介になるだけなら、声かけないよりいいかなと。

降りて行かれた駅から笑顔で手を振ってくれたご夫婦の姿を忘れられません。その後、インドネシアには何回か行っていますが、初めてインドネシアの地に降り立った日のこの出来事が一番の思い出です…が、こんなこと起こらないに越したことはないので、やっぱり事前リサーチはしっかり、ですね。

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