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『虎に翼』第2週「女三人寄ればかしましい?」

6話
女子部入学。のっけから「鬱陶しい!」と突っかかって来るよねが強烈だけど、尻餅の寅子も負けてない。「あんたが勝手に転んだだけ」に対し「それは、まぁそうか」とあっさり納得。いかなるときも冷静にロジカルに向き合うべしな法曹の資質がちらりと垣間見える。

法律とは何か?の答えは自分で見つけるもの
法律とは自分なりの解釈を得ていくもの

優三

うわー、生涯の友4+1人と出会うと同時に生涯の問いともここで出会ってたのか。第2週の頭で既に!優三さんによって!
観返すと諸々の大事な場面が想定より手前にぎゅっと詰まっていて驚く。よく言われる人生訓、"10代から20代前半の間にあるほんの数年の経験がその後の人生を決定づける"に基づくような配分。

優三さんって基本寅子の斜めうしろでやんわり見守るポジションだけど、大事なポイントで寅子の道標になるような言葉をそっと差し出してくれる。良いバランスのふたりだな。

7話
"クラスで何となく扱いづらい一派としてまとまった"寅子たちは、女性のはみだし者が集まる女子部のさらなるはみだし者ズ。何を喋っていいかも分からないので、話題と言ったら天気…
シュールなタッチだけど、"天気の話"って案外ばかにできない。
孤立を極めたどん詰まり期に初めて入ったお店の人との何でもない"天気の話"にほっと息をつけた人間としてここは強調しておきたい。
天気の話は老若男女どんな人とでもできるし、どれだけ落ち込んでいても、どれだけ口下手でもできる。内容はほぼ無いのに話題と呼べて、気兼ねゼロで他者と一定の交流をもてる。天気の話は万人に開かれていて、公平で、優しく、平和なのです。天気の話で間を繋げたから寅子たちの繋がりは保たれたと言っても過言ではないのです。

閑話休題。
女子トイレ不足問題、全然昔の話に思えないのが悲しいところ。女子トイレの行列の長さはその社会がどれだけ女性を尊重出来ているかのレベルと比例する、という仮説を立てておきます。

女子部みんなが小出しに見せる"最初から諦めてました感"がどうも引っ掛かる寅子。え、この場にいるあなた達もそうなの…?
法改正延期でお葬式ムードの中ただひとり何も諦める様子のない人、よねの放つ「鬱陶しい!」第2波。1波は対立だったけど今回は違う。飛び出すよねを寅子は衝動的に追いかける。はみだし者達からさらにさらにはみだすよねと寅子の深い繋がりはこの瞬間から始まっていたのかも。

8話
男社会への怒りこそが原動力のよねは裁判所を怒りチャージスポットとして活用。怒りを聖火のように絶えず燃やし続ける、それがよね流の"アンガーマネジメント"。

寅子と優三が喋る時のこの位置、空間の切り方が良い。
下宿人の男性と家で2人きりの会話を何度も…となると生々しさや危うさが漂いかねないけど、この壁1枚あることで画的にも節度が保たれ、こちらも2人が話してる内容にだけ集中できる。
特にこの8話のカットは構図もいい。人物をセンタリングしそうなものなのに、寅子側の面積を広く取ってる。下宿浪人生の肩身の狭さが視覚的に伝わるし、寅子の圧、勢いに押されてる感じも出てる。
この画、家の構造って序盤の2人の関係性にも見えるなと。階段を少し上がった辺りに度々座り相談する寅子。助言する優三の部屋があるのはその階段下であり、横でもある。法曹へステップアップを目指す寅子を下支えする優三は並走する同志でもある。

穂高先生「法廷に正解と言うものは無いからね」
女はこうだ男はこうだ、これが世間だ常識だと、社会通念には"正解"が明確にあり、正当性はフワフワなのに絶対的規則として強いてくる。だから"スンッ"や"最初から諦めてました感"がすぐに立ち籠めてしまう。
でも法の世界はそうじゃないらしい。最初から諦めなくていいらしい!やはり法の道は寅子のブレイクスルーだ。

9話

甘味処で休憩も兼ねた勉強会。
男尊女卑な現行法の酷さを再認識し、悲憤の顔で黙々と口に運ぶ。(皆の"諦め感"に寅子は憤怒マシマシ)
この甘味とのコントラストよ。これだけ女性が集まって甘いもの食べてるのに誰ひとり全然美味しそうに食べない。印象に残る。
「せっかく美味しいもの食べに来てるんだし、それは置いといて楽しみましょ♪」とさえなれないほどの現実の深刻さと寅子たちの切実さが伝わってくる。

法律をどう解釈しても突破口が見いだせず絶望する寅子たち。でも法律は"裁判官の自由なる心証"を最後の砦として柔軟性を担保していた…!前回に続く意外性第2弾。法律は世間の常識なんかより全然話のわかるイイ奴かもしれない。こちらも勉強になる。

寅子の傍聴提案に乗る女子部の面々。涼子、梅子、ヒャンスクの背景が見える回想が入る。脚本にはない。ただの学習意欲ではなくそれぞれが抱える差し迫った事情が行動を起こす、という重みが足されている。人物紹介も兼ねているし、良いアレンジ。

10話
”自由なる心証”で、突破!(実際にあった判決!)
感動的ではあるけど、一方で危うさも思わせる。穂高先生の狙いどおり、傍聴席を女性が占める異例な状況が裁判官の判断に強く影響したなら、これは「法廷の外から判決をコントロール出来る」ことの証明にもなる。もし傍聴がコワモテ男性ばかりだったら…?最後は人間が判断する、ことの裏表…

閉廷後の大階段。合わない人と無理に一緒に居なくてもと考える皆に寅子、

私達は明律大学女子部の学生でしょ?女のくせに、一個の人格者として認められていない女のくせに、法律を学んでいる。地獄の道を行く同志よ。考えが違おうが、共に学び、共に闘うの。

同調と連帯、友達と同志は違うんだと教えてくれる胸熱シーンだ。この人とは深い所で繋がっているんだと、同志なんだと実感すると、少々"お気立てに難"があっても好きになるし、共通点は少なくてもそんなに話合わなくても大事な仲間だと思えるようになる。そんな経験が自分にもあった。
人と出会っていくって面白いな、この道を選んで良かったなと思えた時のカラッとした開放感、爽快感がこの場面を見るとよみがえる。

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