見出し画像

それいけ! あんぱんMEN!

 とある大学の寮での、深夜の出来事である。
 大学に通う3人組が、1室に酒を持ち込んで、男同士の飲み会を開いていた。
 仮にその学生たちを「A」「B」「C」という名前にしておく。
 Aが突然、

「アンパンマンってさ…」

 と急に、国民的アニメの話題に振っていった。
「生物学的に可笑しな設定じゃないか?」
 グラスに注いだ日本酒を、ちびりと飲むと真顔でそう2人に尋ねた。
 BとCからすれば、
「何を言っているんだ、こいつは」
 と思ったのだが、何だかそんなくだらない話題でも、広げてみれば面白い事にでもなりそうだ、と思って乗ってみた。
「つまりだ、オレの仮説を言ってもいいか?」
「言ってみろよ」
 Bが飲み終わった日本酒を、またグラスに注ぎ始める。
「仮にだ、仮にアンパンマンの身長が1メートル60センチ、って事にしてみよう」
 ふんふん、とBとCは頷く。
「そこから計算、判断をしていくとする。するとだ、アンパンマンの顔って直径76センチになるとオレは思うんだ」
「C、メジャーがそこにあるからちょっと計ってみよう」
 CはAとBより後輩であった為、直ぐにBが顎で差したところにメジャーがあった。
 Cは手に取ると、
「ちょっとAの顔を計ってみてくれ」
 言われるがまま、CはAの顔にメジャーの目盛の0を顎先にあてて、そのまま額ギリギリまで計り始めた。
「何センチだ?」
「A先輩の顔がだいたい22センチぐらいですね」
「って事はAの顔3個分がアンパンマンの顔のデカさ、って事になるな」
 Cはメジャーをシュルシュルと戻していく。
「でだ、オレはあんぱんが好きだ。いや、主食と言っても過言ではない」
 Aはそう言うと、急に紙とペンを取り出して、計算し始める。
「市販のあんぱんが平均として、直径12センチ、厚みが4センチ、重さがまちまちだが一応140グラムぐらいにしておこう」
「そこに形は後ろはぺったんこで、ドーム状というのを加えたらいいんじゃないか?」
 Aが計算し始めたら、Bがあんぱんの形状に口出しをした。
「ちょっと待ってください」
 突然Cが口を挟んだ。
「それって今、市販のあんぱんで計算しているんですよね?」
「そうだが………それがどうした?」
 Aが表情を曇らせる。
「それをアンパンマンに置き換えたら、直径は6・5倍、厚みは19倍になりますよ。そうすると6・5×6・5×19=800倍………しかもその重さはおそらく………112キロ!」
 Cの発言でAとBは顔を見合わせた。
「1個のあんぱんが計算上で800人に食べられるという答えになる………!」
「アンパンマン………ヤツはバケモノか!」
 するとBがある事に気が付く。
「待て! もっとバケモノがいる!」
「何だと! それは………」
 BがCを見つめた。どうやらその答えはCにも分かった様だった。
「バタコとジャムおじさんです………!」
 Aに衝撃が走る。
「A、気が付かなかったのか? アンパンマンは定期的に『顔』を取り換えるだろう? その時に『新しい顔だ!』というセリフと共に放り投げるシーンがあるはずだ」
 Aは愕然とする。
「そうか…バタコとジャムおじさんは112キロの『顔』をいとも簡単に投げている!」
「112キロ、成人女性2人分の重さに匹敵するな………」
 Cは確かにと頷いた。
 しかしまたある事に気が付くC。
「先輩…もっと恐ろしい事実がありますよ………」
 AとBは首を傾げている。その事実について、まだ気が付いていない様子であった。
「あのアニメを見ていて気が付かなかったのですか? バタコとジャムおじさんが『顔』を投げる時の角度、だいたい約30度…」
 Aが天井を見つめながら、
「確かに角度的には約30度といっても過言ではないな………」
 そしてBは、
「112キロの重さのある『顔』を30度の角度………まさか!」
 Bは気が付いた様だった。Cが言わんとしている事を。
「そうです! 約30度の角度で投げて、アンパンマンに届くまで約4秒ですよ」
 そこでAとB、Cは声を合わせて確信を付いた。

「時速144キロで投げている!」
「距離もまちまちだが、想定すれば136メートルほどは軽々と投げている!」
「国民的アニメキャラとか、そういう問題じゃない!」

 こうして夜は更けていったのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?