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「モテ」と「押し」の営業理論

童貞をこじらせた結果、高校で理系だったにもかかわらず、大学では心理学を学ぶことを志しました。

モテたい一心で、何故か人の心を学びたいと思ったのです。
今思えばおかしな選択ですが、なかなかのナイスチョイスでした。
8年くらい後に就職した営業職で、恋愛に関する心理学は火を吹くのです。

高校生の私の勘違い

高校生の私は勘違いをしていました。
モテない男は付き合えないと。

しかし、現実ではお世辞にもモテそうにない人が付き合ったり、結婚してるではありませんか。

冷静に考えると、付き合う相手や結婚相手が最初から100%理想の相手であることなどありません。
しかし、恋愛経験が著しく欠如していた私はそんな当たり前のことすら気づかず、「誰でもいいからめちゃ可愛い女の子が自分のことを大好きになってくれて、告白してくれないかな」と真剣に思っていました。

なぜ自分から告白しないのかって?
傷つくのが怖かったのです。だって、フラれたら辛いじゃないですか。
確証が得られない限り、告白なんて出来ません。

しかし、そんな私の前に謎の人間が現れました。
「こいつ、モテないのにずっと彼女がいるぞ?」

モテるように見えないのに常に彼女がいる後輩

そんなにイケメンな訳でもなく、オシャレじゃない坊主なのに、可愛い女の子と付き合いまくる後輩がいました。

めちゃくちゃ嫉妬をしつつ、彼を観察してみたところシンプルな事実が観測できました。
彼と話す女の子はみな楽しそうなのです。

ただただ話を聞くのではなく、細かい変化に気づいたり、大げさに褒めたり、いじったり会話が上手かったのです。
そして彼は、めちゃくちゃ誰にでも「好き」と言うのです。
正直、別に好きじゃない相手にもです。

これはどんな現象なんだろう?
なんであんな不誠実なやつがいいんだろう?
モテたい。

そんな想いで、心理学を学ぶことに没頭しました。

心理学を学んでもモテない

大学入学後、この事実に気づくのにさほど時間はかかりませんでした。
しかし、同時に大きな発見をしました。

告白しないと、付き合えないのでは、、、?

少年ジャンプのお色気枠では可愛い女の子が何人も言い寄ってくれるのですが、どうやら現実はそうではないことに気づき始めたのです。

確かにトップオブイケメンは告白をされています。
しかし、烏合の衆メンズ共は自分から告白をして付き合ってました。

そしてついに私は、
「自分から能動的に動くことで、モテという選ばれしものにだけ与えられるステータスがなくとも、彼女を作ることができる」
という世界の真理にたどり着いたのです。

「モテ」は難しくとも「押す」ことはできる。
コロンブスが卵の底を押したように、私も恋愛において押すことのできる漢になりました。
そして、念願の彼女ができたのです……!

ここまでは前置きです。では営業に例えるとどうなるのでしょうか?

「モテ」のマーケティング、「押し」の営業

マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、自ら売れるようにすることである。

ピーター・F・ドラッカー

これはいわゆる「モテ」の状態です。
受動的に顧客が買ってくれる状況、これを目指しましょうねというのは究極的なサービスのかたちだと思います。

とは言いつつ、営業職は多くの企業で存在しています。これはマーケティングの理想論にまで上手くいっていない企業が多い。つまり、世の中にモテ男は数少なく、烏合の衆メンズ共が大多数であることと同じ構造です。

では、曲がりなりにもマーケティングが発展した近代で営業の1番の役割とは何か?それは、購入までのラストワンマイルを担うことです。

顧客に最後の決断をしてもらう、その部分でもし、

営業「よろしければ、ご検討いただけますと幸いです。ご無理のない範囲で。」

とかいう営業クロージングは、

烏合の衆メンズ「試しに付き合ってみるのも面白いかなって。あ、全然そんな深い意味じゃなくて!冗談冗談!本気にすんなよー」

みたいな告白と同義です。ダメダメです。

クロージングに必要なのは、

営業「今の御社にベストな提案を一生懸命考え抜いてきました。⚫︎⚫︎さんの目標達成に必ずや貢献しますので、これで決めてください。」

といった覚悟がこもった言葉です。

烏合の衆メンズ「ずっと好きでした。絶対に幸せにするので付き合ってください。」

言い切ることこそが、烏合の衆である私たちに残された技です。
イケメンやトップブランドにとっては不要なリスクを私たちは負い、言い切る。
肉を切って骨を断つ戦術が生きる道なのです。

モテぬ私たちよ。リスクを負え。

HUNTER×HUNTERでも、制約と誓約で念能力が向上するのと同じで、実社会における恋愛シーンでもビジネスシーンでもリスクはステータスを向上させます。

世の中にリスクがどんどんなくなっていく時代の中で、リスクを負える人はそれだけで魅力的です。
傷つくことを恐れて、好きなあの子に好きだとバレることを恐れているようではダメなのです。

ということで私も今から、
押して付き合った当時の彼女にリスクを負って伝えようと思います。

「結婚して10年、ずっと好きです」と。

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