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逆噴射小説大賞2020 私選ピックアップ109本

それにしても109本。109本である。信頼できるデータによると投稿総数は722本とのことなので、およそ6、7本に一本は挙げた計算になります。最早ピックアップとは言わないんじゃなかろうか。それでもこの109本の玉稿に「これは大賞に選ばれてもおかしくないのでは?」という自信を持ってスキを付けました。ちなみに本稿を書いている途中で何本か「これ投稿作品じゃなくてプラクティスじゃん!」と気付き泣く泣く外しました。(11/10追記:チェックがガバなのでプラクティスも一部入ってました、見なかったことにしてくれよな!)

前回の「逆噴射小説大賞2019」では初参加で怒涛のように流れてくるパルプに圧倒されていたこともあり、参加作品はほとんど読んでいませんでした。今回は業務時間を犠牲に全て拝読申し上げたので(仕事しろよ)、せっかくなので「何を以てスキをしたか」を頑張って言語化してみようと試みたのが本稿となります。
感想の文字数には多寡があるものの、それは作品の優劣がどうこうではなく、自分の得意とするジャンルや強く惹かれる要素があると自然と多くなってしまった結果です。でも少なくても間違いなく自分なんかでは到底持ち得ない強く輝く何かがその作品にあり、それに「アッ今撃ち抜かれた!!!」と感じたのは確かなので、どうかそのことだけは覚えておいてほしい。
なお特に基準は設けず、同じ人の作品を複数紹介していることもあります。また一部ツイッターと重複する内容もあるけれど、御容赦下さい。掲載は基本的に投稿順です。

史実を下敷きにしてパルプを作る場合、その題材選びで結構好き嫌いって出ると思うのですが、ウィンチェスターハウスを持って来られた時点で自分は文字通り撃ち抜かれました。ピースメイカーの牧師が絶対にサイコーですがその他もサイコーな予感がする。オカルトと火薬にまみれた最高に上質なパルプの予感しかしない。

800字という限られた文字数で印象に残る作品の中には冒頭の数行でこちらの脳をブン殴ってくる作品があるのですが、こちらの

「たかが!」
「人口三百万風情がッ!」

に関しては逆噴射小説大賞2020に投稿された全ての作品の中で最も印象深いセンテンスです。これから誰も見たことのないバトルを見せてやるぞという気概があります。

設定を開示せずガンガン話を進める中でも、ゴアやダークな描写で読者を置いてけぼりにせず「つ、次はどうなるの!?」と思わせてくれる推進力があります。赤ずきんと人狼という最悪な組み合わせが最高ですね、結末の<了>まで血で溢れされてくれると期待してしまいます。

ギャグって不謹慎であればあるほど面白いと個人的には思うのですが、昨年の投稿作品も鑑みるにこちらの作者様はそういう笑いを提供させるには天賦の才があると思われます。どこまでも冷静なライアンさんが素敵ですね。

我々とは違う法則に生きる人達の間で発生した事件についての推理小説ってなかなか難しいのでは? と思うのですが、出てくる単語がどれも胡乱で、五億本の触手と一瞬で5万人という途方のなさについついページを捲りたくなります。

仕事を題材にした作品って「機動警察パトレイバー」しかり「ハコヅメ」しかり、職場に問題があればあるほど面白いと感じてしまいますね。殺されそうな人よりも仕事で忙殺される主人公に感情移入してしまうので、どうかこのままどこか明るいノリで最後まで続いてほしいです。

和風吸血鬼でこのタイトルの組合せは優勝です、おめでとうございます。最後の一行を読み終わった後にもう一度タイトルを見て「なるほどね!!!」と思わせてくれる小説は健康にいい。

「醤油傭兵」という単語に込められたユーモアと悲しさにやられました。寿司に醤油をかける自由が失われた世界、あまりにも無慈悲過ぎるディストピア。

印象的なタイトルと一行目の出だしがあると「おっ、これからこういう物語が展開されるのかな?」って予想するのですが、全部裏切られた。最後の一行まで酷さが詰まっている(褒めています)、とにかくいい趣味の妖怪ですね。こういうのしか出ない妖怪大戦争が見てみたい。

とてもビターな物語の出だしを読ませてもらいました。感謝しながら作者のお名前を拝見したら、さっき侍に犬の鳴き真似をさせていた人と同じだった、マジで? こういう事があるから逆噴射小説大賞は止めらんねぇ。

こちらもタイトルが素晴らしいですね。パニックものなのにどこまでも視点がミニマムなのと、その中心にあった故障しそうなクーラーで命拾いしたという構造が素敵です。こういう物語が俺の中から出てこないので嫉妬しちゃう。

無限に話を広げていけそうな設定が素敵。出てくるアイテムの名前が全部物騒なのもいい、それは本当に平和な案なのか。ヘッダーの画像もノスタルジーと胡散臭さが同居しててイイですね。

自分はサイバネに弱いので当然この作品にも弱い、機械の左腕とマリッジリングとの組合せというギャップもカッコいい、つまり最高にカッコいいです。加えて過去のあるオッサンと少女という組合せ、=∞(インフィニティ)。

じゅらき?ジュラ紀?ハ???と思っていたら妖怪が出たと思ったら恐竜だった。設定だけで「負けた!!!」と思うのはなかなかないと思う。ヘッダー画像も爬虫類の眼球に思えてきますね。

札束で殴り合うという例えはよくありますが、物理的に資本で殴り合う様相を期待させてくれるお洒落なタイトル回収ですね。金融用語ってだいたいカッコいい。

顧客の要望に果断に答えてくれる素敵な銀行ですね。JAバンクもこれくらいやってほしい。最後の最後で喉元に踏み込んでくるバンカーのセリフも最高。出てくるアイテム名も「これからお前に一流のスパイアクションを見せてやる」という気概が見て取れるので素敵です。

スゲェぶっ飛んだ設定だ!え、史実?流石は中国■年の歴史(■にはお好きな漢数字をお入れください)。史実パルプはこういうイカれたファンタジーみたいな歴史と今とが地続きだと教えてくれるから大好きです。

放火魔が理論武装していて迷惑極まりないですね、「お焚き上げと同じです」じゃないんですよ。でもホラー映画で水はよく見ますが火で攻めてくる霊ってあんまり見ませんね、そう考えるとこの除霊も正しいのかもしれない。機会があったらやってみよう。

パルプにおける僧侶ってまぁまぁなフリー素材扱いされてますが、更に設定もイカれているので珠玉の一作だと思います。「列伝」ということはこういう人がいっぱいいるんですか? 末法じゃないですか。

死体との近しい関係ってジャンルはネクロマンスでいいんでしょうか。メチャ強な竜を殺すのが小説家の死体っていうのがいいですね、ジャイアントキリング大好き。

全体的に相当な功夫なのですが、冒頭の一行だけで競ったら間違いなく優勝です。「ブッダがキレた。」はそれくらいパワーがある。「対仏ライフル」とか「破壊僧」とかボディーにガンガン来るストレートな名前もいいですね。

冒頭から血みどろしかないのにスルスルっと気持ちよく読めちゃうのは「黙示紋(オメルタ)」とか「執行者(アスカリ)」とか心臓にビンビン来る単語が散りばめられているからなのでしょうね。復習譚大好き。

ジジイがメッチャ強いパルプだと思ったらジジイよりもっと強いのがいたパルプ。セーラー服っていう組合せもいいですね。若者の性別に言及がないことにだけ不安が残ります。

開示されている設定が決して多くないのにここまでワクワクさせるのは、ハチャメチャに功夫を感じます。ストーリーがここからSF、ホラー、ヒューマンドラマ、どこに転がっても間違いなく楽しめる。早くページをめくりたい。

デスゲームコンサルがニコニコしてそう、やっぱり他人の不幸を肴にするのは成功者の特権ですからね。自分の命を既に賭けの種銭にし終わった後なのに、更に搾り取ってくる設定がいい。ところで「#ヒロインは映画オタクの卑屈引き籠りドスケベボディ根暗女」のタグ付けされてるのが一作だけなのは重大な瑕疵では?

決闘と仇討ちがカジュアルな世界、イイですね。ジュブナイル小説の予感がするのに血生臭い世界観がポケットの拳銃くらいズッシリと重い。同情のしようがない父親の仇討ちという、感情をどこ向けばいいのか分からないまま流される復讐もいいですね。

史実ベースの話かと思いきや途中から一気に胡乱にアクセルかかっていって、最後の二行の疾走感がよいですね。この不気味さは斬らねばならない。新選組の概念って創作の数だけありそうなのですが、新たな視座を提供してくれる予感がします。

無能な上司扱いされている上司が先にオカルトへ傾いているのが珍しい気がする、他に館が人を殺す理屈があるのかな。それが開示される続きが読みたい。コレやっぱり殺され方がバリエーションに富んでいるのは「一棟につき一つの殺し方」みたいな設定あるんでしょうか。厭過ぎる。

ジェットコースターに乗ったと思ったら地面を潜り始めたみたいな800字。冒頭だけでコレなので最後はどこまで落ちるのかめっちゃ楽しみですね。探偵相手に月一万は剛毅すぎる。

呪いの設定とか得られる結果とかがとにかくダークでビターなんですけれど、不思議な魅力を感じるのは根柢にあるのが「家族愛」と思われるからでしょうか。

SFとか武侠とか好きなので、とにかく出てくる設定とか造語がハートにビンビン来た。noteは早くルビ機能を実装しろ(そして逆噴射小説大賞はルビを800字にカウントするな)。

ガンガン話が進んでいるんですが、置いてけぼりにされてる感がないのは歌ってるみたいなリズムで人を撃ち殺したり「俺はお前にこういう物語を読ませる」という強烈な意思表示がされてるからなのでしょうか。こういう文体は絶対に自分から出ないので憧れます。

逆噴射小説大賞で色んなジャンル読みましたが「ホラー」の中だとこの一本が特に好き。何も分からないけれど、タイトルも合わせて「これからロクでもないことがバンバン起きる」ということだけが確実な冒涜的パルプ。嫌悪感を催す描写もいいですね。

とにかくスピーディーにイカれた話が進んでいく。作者のエスプリと作品のIQの落差が凄い。最後の四行が何回読んでもリズム良すぎてニヤニヤしちゃう。

『山月記』を土台に「剣聖・上泉信綱&果心居士VS人虎、途中から北条忍軍が乱入する」話を出力できるパルプ功夫が凄い。戦闘シーンも雰囲気があっていいですね、ずっと戦っていてほしい。

とにもかくにも話をグイグイ引っ張っていく「悪竜」氏がいいですね。頭の中のイメージは悪逆を楽しんでいる時のカール・アーバン。チラチラお出しされる設定も続きが気になるものばかりですね。

出だしから一瞬「お、ライナーノーツかな?」と思ったのですが、薬指???と現実(虚構)に引き戻された。倫理観がイカれた一人称視点が延々と続くのでサクサク読めます。

バキバキに色を強調した世界観なのに主人公の視界が自分の血の色も分からないモノクロで、疎外感を味わえていいですね。勝手な妄想ですが相棒以外誰も彼のことを理解できないのでしょう。死と孤独とを背負っての抗争、とてもそそるものがあります。

今大賞でも史実や童話などを下敷きにした作品は色々ありますが、一番「そ、そう来たかァ~~~ッッッ」感がありました。最後の二行に込められた緊迫感もイイですね。

逆噴射小説大賞不謹慎部門優勝です。無神論者のジーザスとかも出場してほしい。出てくるジーザス全部只者ではなさそうなのに、チャンピオンが一番イカれてて胡乱と不謹慎とのブレンドが絶妙ですね。絶対最終選考まで行くと思うので、「実況このは私」だけは今のうちに直したほうがいいのではないでしょうか。

「そして、画面に映った小指をちょぎるエンコ詰めのスワイプを三度。」ここ最高にエスプリを感じます。作品を象徴するドストレートなタイトルもキマっててイイですね。

フロンティア開拓パルプは色々ありましたが、ただ旅立つだけではなく主人公のオリジンと絡めて800字の中にどんでん返しを作る功夫が凄いです。

最後にパルプへ舵を切るドライブ感もさることながら、土台になった神話の解説が普通にためになる。原点だと大国主は奸計により燃える岩で殺されるのですが、さしずめそちらはトゥルッフ・トゥルウィスかな。

関取の戦闘衣装はそれでいいの?関取だからいいのか……。登場人物にも読者にも有無を言わせぬ、問答無用という勢いで話がどんどん進んでいくスピード感に惹かれます。

冒頭の一行目からどんどん世界が幸せになっていく感じがいいですね、ドタバタするけど結末はハッピーエンドだなという強い信頼がある。

平安鬼パルプ、ストーリーも文体も雰囲気も全部いい、最後の一行で「ヒェッ」となる急展開も最高です。

真なる紳士のためのスポーツを題材にしたパルプですね、もっとカジュアルに鎧を着られる世の中になってほしいと願うばかりです。なおルールにもよりますが、剣盾相手に両手剣で1対49取れるのはマジモンにイカれた強さという印象です。

「魔技!」じゃないんですよ、イカれたアーツはぜひビジュアルで見たいですね。今読み直してヘッダー画像にビッグなCAVEがあることに気付きました。

燦然と輝く「TSは最も男らしい行為の一つ」のタグに頷きしか返せない、男にしかできないですからね。女装とか。次回予告からも熱い漢達の燃え盛るような物語が期待できます。

S・キングの作品に出てきそうな、鬱屈した少年達で西遊記をする発想に素直に脱帽です。ダークなキングが出てくる前に天竺へ辿り着いてほしい。

ソーラーマニ車が幅を利かせる現代において、にせっせと功徳を積む主人公に好感が持てますね。光回線で六道をコンプするな。エッこれ即興で書いた作品なの? デジマ?

「怪獣拳」のぶっ飛んでパワフルな設定は今年の逆噴射小説大賞のなかで一番好きです。シンプルかつ力強いタイトル付けもカッコいい、私も弟子入りしたい怪獣拳。

自分がSFパルプを書くとなるとどうしても「それっぽい」造語とかで設定をややこしくしてしまいがちなんですが、「放火士」というシンプルに分かりやすくかつ力強いオリジナル職業が「何と戦うのか」を象徴していていいですね。

タイトルがバチッッッとキマってます。全員が名探偵かつ容疑者、一癖も二癖もある人物が次々登場して事件をどんどんややこしくしてくれるでしょう。

さだまさしの「償い」じみた出だしから一気にアクセルかけて「あ、転生モノのそこに目を付けるのね!」となる話のドライブ感が素敵。こういう目の付け所を養っていきたい。

胡乱なハードボイルドですね、冒頭からケツまで不遜と暴力が詰まっています。お仕事が編集長とのことなので、ナベツネもこういう生活送ってるのかな。

冒頭の第一次世界大戦を表現する一行がハチャメチャにお洒落。これからはジジイが強いパルプの時代が来ると思うので、その先頭に立って引っ張っていける功夫を感じます。

僕らの宇宙の平和は便意と嘔吐に託された。多分逆噴射小説大賞2020一番の意慾作(便利な言葉だな!)。ホールズってことは他の穴も出てくるんですか? 話が進む度に挑戦的な内容(意訳)になりそうです。

途中まではガチガチのホラーだと思っていたけど、そんなことなかった。クイズ大会で真偽を決しようとするあたり(真)おねえちゃんも相当ぶっ飛んでますね。

無くしたくない思い出ほど強力で、でもそれを使わざるを得ない状況にどんどん追い込まれてしまうんだろうなぁという哀愁漂う設定がいいですね。ネコチャンには幸せでいてほしい。

大正妖怪ハント暗黒パルプ、入ってる要素が全部最高です。鎌鼬の一匹目が転ばせるのではなく「地震を起こす」という解釈がいい。

他人の身内のゴタゴタはだいたいエンタメになる、それが宇宙を股にかける冒険野郎とその子供五十六人のものであっても。異星との相続問題とか法律で死ぬほど面倒臭そうですね。

太平洋戦争で枢軸国側が勝ったifの物語は色々あるだろうけれど、じわじわと現実との差異に着目させて一気にどんでん返しする題材にラジオ体操を持ち出す発想が巧み。

色んなアイテムで話を引っ張る物語がありますが、男が着けた貞操帯で話を引っ張ろうというガッツが凄い。火を噴く貞操帯で空を飛ぶ男二人は想像すると酷い絵面なんですが、遠くからだとヘッダー画像のように神秘的なのでしょうね。

落語×チェーンソー×大虐殺、過積載になっていないところにパルプの懐の広さを感じます。戦闘もイイ感じに胡乱そうなので、その場面も読んでみたいですね。

閉鎖された村での殺人事件、解決手段(解決してないけど)も強引でロクでもない村って感じが出てていいですね。やっぱり村八分だと人殺しでも葬式は挙げてくれるのでしょうか。

とにかく<彦島>のごった煮オリエンタルさがメッチャいいですね。<都>も絶対ロクでもないもので溢れているのでしょう。和風ファンタジーとしては逆噴射小説大賞2020の中で一番好きです。

珈琲でパルプ? と思っている間に死体をどんどん積み上げて置き去りにされそうなバイオレンスの勢いがいい。そもそも一行目から人が死んでいた。

車内にトイレがある在来線って関西だとよく見たんですが、関東にもあるんでしょうか。昔、連結部分でションベンする爺を見てビビった記憶があります。狹い車内でダンジョンじみたバリエーションに富んだ敵達と、戦う理由とをビシっと成立させてるのが凄い。

やった!良質ホラーパルプだ!20人以上も子供がいなくなっているので、怪異に接触する色んな立場からのホラーが読めそうです。

ネオ・マイアミに全然縁もゆかりもないのに郷愁に駆られるほど「教えてくれベイブ! 俺たちは何処へ向かってる?」の絶叫がいい感じですね。「クローム・グローブ」という実際にアメリカの殺人鬼にいそうな名付けもイイ。

殺人鬼の存在がポピュラー過ぎて「東京の治安低下に貢献した」とか「24時間耐久殺人レース」イカれた単語がポンポン出てくる文化の土壌が最高。何人殺されようが心が痛まないので安心して読めそう。

ヴァンダムみたいなリフォーム会社の社長という、どうやっても面白い自伝が出て来なさそうな男から絞り出された殺人の告白。この調子だと特に良心の呵責とかなさそうなので、いい自伝ができそうですね。

竜と発電所のディストピア、ボーイミーツガールなジュブナイル。完璧な要素のみが並んでおり、極上のファンタジーパルプの予感がする。「銀色の髪のアギト」とか「スチームボーイ」みたいな活劇を期待してしまいますね、

武器が人間みたいに喋る話は数あれど、人間を文字通り武器にするのはあんまりない気がします。話のビジュアルと同じくらい登場人物の思考もイカれていますね。

これが2時間映画なら最終的にアヤコ先生のために二人が悪態をつきながら協力して戦うラスト30分が容易に想像できます。書いてある通りの配役で映画が見てみたい。

鵺、もののふ、そして人魚姫。各々の思いが錯綜する平安パルプですね。この男も四天王とか連れてるタイプならめっちゃアツい、ただ人魚を守ることだけが目的ではないのも波乱を呼びそう。

宮沢賢治物語バトルパルプ。今まで童話作家という捉え方しかしていなかったので、こういう視点は新鮮で面白いですね! 自分は『グスコーブドリの伝記』が好きです。

改行するごとに挿し込まれる怒涛のような凡ミスと早とちりがイイ。この調子だと非常になり切れないブラザーズが、何だかんだ最後までミスを連発してくれそう。

視点を変えることで生まれる物語って色々あると思うんですけど、出だしのゾンビ禍の設定から「ゾンビ発電所」という設定だけでお腹いっぱいなのにそこから更に話が発展するからスゴイ。恥ずかしながら「コナン・ザ・グレート」は未履修なので気付くのが遅れたのですが、最後まで読んで「そういうことかよ!」と膝を打ちました。

不穏だけど美しいタイトル、謎めいた登場人物、不穏に満ちた町、一癖も二癖もありそうな登場人物達。気になり過ぎる要素ばかりでとても続きが気になります。既に故人となった人物でさえ話をグイグイ進めていくエネルギーに溢れていそう。

「世界が崩壊しても風俗業は無くならない」という力強い説得力に溢れた描写がイイですね、実際には仕事する前に頭ぶっ飛んだけれど。ゾンビ作品のなかでも、この世界の生存者は特にしぶとそう。

少女を守る騎士!旧型のロボ!ファンタジー!こんなん嫌いなヤツおらんでしょ。登場人物の名前が星で統一されているのも想像を膨らませます。

今にも滅びてしまいそうな希望を持てない世界の描写がいいですね。ちらりとお出しされる単語で(多分)冷戦真っ只中という、マジで世界が滅びかけた時期を匂わせて現実とリンクしているのもいい。

なぜ人はゾンビを○○にしたがるのか。これも視点のズラす方向がイカしてますね、ゾンビで滅びかけの世界におけるユートピアを維持するためにゾンビが必要という捩れた世界観。

「親の因果が子に報う」という言葉を形にしたようなパルプ。デカい組織vs個人という美しい図式なので人死にには困らなさそうですね。ピタゴラスイッチみたいな連鎖で人がバタバタ死んでくれることを期待します。

ああ敏腕探偵ってそういう……。でも警察から呼ばれるくらいなのできっと優秀なのでしょうね、多分謎解きにもその剛腕ぶりを発揮されるのでしょう。自白強要とか。

異界剣術パルプ、無重力における剣戟描写の説得力がアツい。超振動ロケットアシストセイバーという響きも最高ですが、勝負の優劣を決めるのが科学力だけではなく技術力との融合かと思わせる設定もイイですね。

ゾンビをフリー素材扱いする昨今の風潮は諸手を挙げて歓迎致しますが、ゾンビよりも環境が悪い労働に従事させるというエスプリ効いた皮肉がいいですね。良いアニメ業界にはちゃんとお金を落とさねばならないという社会への警鐘を担ってくれる作品です。

確かな真実に裏打ちされた歴史的パルプ。無茶でしょってくらい強さを持っても許されるきらいがあるので剣豪将軍大好きです。「Case1」ということはこんな血生臭い歴史秘話ヒストリアがまだまだあるのでしょうか、最高です。

最後の一行でどんでん返しってそれまでの積み重ねが大事だと思うんですが、善子ちゃんの「悪い子じゃないんだけどね」と本当に言いたくなる人柄の描写の積み重ねがとてもいいですね。ガラっと話が変わる一行が本当に効果的です。

バッチバチにキマった、そして簡潔な暴力的描写から始まるグルメの温度差がいいですね。ただ肉をウマく食べるというだけでは話が終わらなさそうなんですが、グルメなパルプで終わってもそれはそれでいい話を読ませてくれそうです。

この話メッチャいいですね、イカれた描写の出だしから故人となったマネージャーへ語り掛ける哀悼へスムーズに繋がれていて功夫が凄い。本当にビール飲みながら聞いていたい、下戸なんだけれど。

【私信】自分もロリババア好きです。顔面コンクリート叩きつけという、想像可能な範囲内で一番痛そうなバイオレンスも素敵ですね。

パルプというとどうも人が死んでナンボという偏見を持っていますが、男に振り回された女性二人のカラっとした復讐道中もいいものですね。「女が自由になるにはね、妖怪になるしかないのよお!」の一行に作品を象徴するパワーが込められている気がします。

ドライブ感とは言われますがマジモンのドライブ、行き先はあの世。しかも一番最初に出てきた語り手ですら倫理観が狂っているので、三者三様のドライブ感で話が展開されそうです。

かなり自分の趣味が入っているのですが、「逆噴射小説大賞2020」でどれが大賞に選ばれてほしいかと問われるとこの作品です。タヌキ、キュート。化けダヌキ、ベリーキュート。可能な限り戦争という不毛なドタバタに振り回されてほしい。ただ本当にマジのマジで惜しい点を心を鬼にして挙げさせていただくのですが、ヘッダーの画像はおそらくタヌキではなくアライグマです。

【参考】士別市ウェブサイト内「アライグマ捕獲情報」より

シシャモが食べたくなる。登場人物全員「多分殺されても仕方ないな……」と思わせる描写があるため安心して読めます、一人すでに死んでいるけれど。棺桶屋さんの強キャラ感もいいですね。

ルサンチマンから生まれた暗いエネルギーがバッチリ決まったゴア描写と合わさって完全にエンタテインメントしてますね。どこを切り取っても「俺からは出て来ねぇ~~~ッ」って要素ばかりで新鮮に感じます。

歴史にはかなり疎いので、まだ見知らぬ英雄に出会わせてくれるパルプには感謝しかありません。相手がナチということで、どれだけ殺されても胸が痛まないのがいいですね。

竜というのは空想の生物の中でも特別なので(偏見です)それが息づく世界観というだけでもかなりグっと惹きつけられるのですが、それを屠るピストルというのがまたイイですね。最後の一行で伝わる途方もない威力の描写も、簡潔かつ最大級という感じで素晴らしい。

「魔法」という気になり過ぎる言葉の説明を置いてけぼりにして、愛した人の敵討ちをゴアと共にガンガン進める文章に力強さを感じます。繰り返し挿入される「結局のところ、一目惚れだった。」という一文に哀悼が込められていてまたいいですね。

ケツァルコアトルスとゼロ戦という異種愛パルプ、いいですね。ゼロ戦というだけで悲恋の匂いがしてしまうので、(恐らく)世界でただ一人となってしまった恐竜の彼女の愛が報われてほしい。

異種格闘技というのはそれだけで燃えますが、種族すら違うので可燃度が更に倍ですね。最後の乱入者もルール無用って感じが字面からして強い。ヒトデヒットラーくらい無慈悲。

女性の下着になりたいというのは健全な男児の普遍的な夢だと思いますが、それを命懸けの状況で無機物とバディを組んでピンチを切り抜けるというメッチャ上がるシチュエーションと接続しようという気概がもう王者の風格。最後の二行がバチっと決まってて"バディとして以心伝心が完成している"感があるのも最高です。

800字で如何に読者の興味を持続させるかというルールにおいて最初の一行ってすごく大事だと思うのですが、逆噴射小説大賞2020に投稿された全作品のなかで最も秀逸な最初の「二行」だと思いました。出てくる肩書きも全部不穏ですね、「腐敗政府ガバ・ガバメント」が一番好き。

秀逸な叙述トリックにはまり、自身の見識が低いことを思い知らされました。なぜこの淫魔と契約したのか、他にどんな淫魔がいるのかで無限に物語が生まれそう。

男が意地を賭けて戦う手法は何も殴り合いだけではないんでしょうけれど、コーヒーに戦いの場を設ける発想がいいですね。筆者の方のプロフィールを見るにコーヒー屋を営まれているそうなので、見たことがない戦いを披露してくれそうです。

思想統制は美しいディストピア作りの第一歩と言っても過言ではありません。この社会が過去にどのような経緯があって有害図書には極刑を以て臨むようになったかを考えるだけでドラマが生まれそうです。正常化委員会こそがこの世界で一番有害図書に詳しいという矛盾を孕んでそうなのもイイですね。

甲冑積立金にします。