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アメリカでのショッピングセンターが復活している理由

日本でもアメリカでもeコマースやオンラインショッピングの普及に伴い、多くの人がショッピングセンターで買い物する需要が減少していることは実感の通りです。しかし、アメリカでは逆にショッピングセンターの空室率が減少しているということなので、その原因をメモに残しておきたいと思います。さてさて、この現象はなぜ起こっているのでしょうか?

ニューヨーク・タイムズの記事によると、ショッピングセンターの空室率は20年ぶりに最低の5.4%まで低下。長年の低調な建設と業績不振の物件の整理が進み、生き残った物件が"新しいテナント"を迎え入れ、訪問者を引きつけるための工夫を凝らした結果だと。
そして、なんと賃貸交渉の力がテナントからオーナーに移り、賃料も上昇しているとのこと!日本とはまるっきり逆の状況ですね、おもしろい!

需要増加の理由

テナント構成の変更

従来のアパレルや雑貨などの小売業を中心にしたテナント構成のショッピングセンターは、流石にeコマースにとって代わり人気がなくなってしまいました。
その代わりに、飲食店や娯楽施設がショッピングセンターの中心となりつつあり、例えば、キャンプ場にある斧を使って的に当てるアクススローイング、ピックルボールなどのレクリエーションのテナントが入ったり、訪問者がより長く滞在する理由を提供しており、

ものを買う場所から、ことを過ごす場所に変化しているとのことです。時間滞在が長くなれば、昔で言うと多くの顧客を集客したのと同じ効果なので、

「訪問客数 ✖️  時間」の総量を増やせば自ずと売上高が増加すると言うことで、テナント構成をする際には、ここに集中しているという作戦です。

多用途転換の工夫

上のコンセプトと重なりますが、ショッピングセンターはもはや「ものを買いにいく場所ではない。」と割り切ってしまい、固定概念からの脱却を図ると、デベロッパーや施設オーナーは、上記の通り、訪問客数X時間の総量をどのように増やすかということを考えます。

ついては、訪問客数は、買い物客だけに特化するのではなくて、床を多用途にして多くの目的の人たちが集まるようにすれば良いのです。アパレル床などの使われなくなった面積を複合用途のスペースに転換することで、新たな需要を生み出しています。

ここではいくつかの成功事例を列挙します。事例はショッピングセンターに限らずオフィスの例も含みますが、上記コンセプトからするとショッピングセンターだろうが、オフィスだろうが単用途の建物を多用途に変換するというコンセプトからすると同じことです。
この事例は、ラスベガス近郊のオフィスをレストランやブティック、スポーツ施設やエンターテイメントスペースなどの多用途に変換することで、数多くの人々が多目的に施設を訪れるようになるという事例です。

多用途転換の具体例

  1. オフィスビルの改装

    • ラスベガス近郊では、100,000平方フィートのオフィスビルが30百万ドルをかけて、レストラン、ブティック、健康・ウェルネス施設、エンターテイメントスペース、中央バーを含むプロジェクトに転換されています。

  2. 複合用途スペースの創出

    • テキサス州アーリントンでは、470,000平方フィートのショッピングセンターが、オフィス、住宅、ホテル、エンターテイメント施設を追加する計画が進行中です。

  3. 既存の小売スペースの削減と再利用

    • ロサンゼルス南部のウェストミンスター・モールでは、空いているMacy'sとSearsのスペースを住宅と25,000平方フィートの飲食スペースに転換するプロジェクトが進行中です。

投資家の関心再燃

コロナ禍以降、アメリカではオフィス離れやショッピングセンター離れが進み、REITや不動産投資ファンドのパフォーマンスが落ちたことから、これら収益不動産の価格は驚くほど下落しておりました。

一方で、このようなショッピングセンターのパフォーマンスが向上は、投資家の関心も再び高まっております。アメリカはこの変わり身の速さが本当に尊敬に値するほど早いですね。

コロナ禍前後で、アパートや倉庫は需要の変化を捉えて物件価格は驚くほど上昇しました。これは日本も同様なことが起きており、今も続いております。一方で、時を同じくして空室率が増加していたオフィスやショッピングセンターは、物件価格が上昇しなかったどころか、物によっては大きく価値が下がった為、このタイミングで安価に購入して、上記の多用途利用転換を進めて、収益アップをしようという投資家が出始めてきております。

さて

今回は、eコマースの普及により一時的に衰退したショッピングセンター業界が、空室率の低下とともに復活を遂げているという話を取り上げました。

復活のポイントは、「多様性と多用途」です。消費者の需要は多岐に亘ります。一歩引いて見てみると、目的も多岐に亘ります。これらを建物という同じ床で取り込めるだけ多岐に取り込んだら良いじゃん、なんで今まで単用途に特化しているの?みたいなシンプルな考え方です。

日本には、都市計画でそれぞれの土地の利用用途が限られており、さすがにここまで自由度の高い変更はできませんが、日本のショッピングセンター復活のヒントになるのではないかと思いましたとさ。


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