2020.6.17

今日は出先で書店に寄ったら『三体Ⅱ:暗黒森林』が並んでいたので、迷わず買った。近々出ることは知っていたが、まさか今日発売とは知らなんだ。こういう小さなラッキーは外出することで生まれるのだが、これがなかなか馬鹿に出来ない幸福感を生む。

『三体』は中国のSFで三部作で、世界的ヒットを飛ばしている今大注目の作品なのだが、本邦で本日発売された第2作『三体Ⅱ』は、中国では既に2008年に出版されている。第1作は2006年。2015年にヒューゴー賞(アメリカのSF作品賞)を受賞しているので、その頃世界的に認知されたということなのだろうが、しかし、かれこれもう10年以上前の小説を、我々はやっと読んでいる状態らしい。結構な時差だ。

私が読む外国語文学というのは、基本的には古典に属する類のものが多いので、いま活動している作家の作品の翻訳を待って買うということをしたことが無い。だから外国語文学の翻訳出版に伴うタイムラグというのが、一般的にどれほどのものなのか全く知らない。とはいえ、『82年生まれ、キム・ジヨン』などは本国で2016年に発表されてから2年程度で日本でも出版されていることを考えると、『三体』はなかなかのタイムラグだ。ヒューゴー賞受賞自体も遅い。

昨年のダイヤモンドオンラインの記事によれば、発表時から2015年までの中国の国際社会での存在感の増大が、この小説の世界的評価の獲得に大きく関わっているらしい。たしかに、たしかに。

『82年生まれ、キム・ジヨン』も一時日本でかなり話題となっていて、これも日本と韓国の文化的距離の接近がかなり大きく作用していることは誰もが容易に想像することだ。ありふれた例だが、K‐POPアイドルなんかは本国デビューの次は日本でデビューするのがお馴染みだし、東アジアを拠点に世界ツアーまでするようになった。『三体』や『キム・ジヨン』が売れること自体が両国の文化的理解をさらに深め、広めることに繋がっているわけだ。

2015年のヒューゴー賞受賞というタイミングは、習近平が一帯一路政策を打ち出した2014年との時間的近さを感じるが、上の記事からするとあながち無関係という訳でもないのかもしれない。だが、こうして考えようとすると、近年の中国の動向というのを把握できていないという事実にぶつかる。手始めに岩波新書の中国近現代史シリーズでも読もうかと思う。


ところで、今日歩きながら思ったのは、外出中というのはとても暇だということだ。緊急事態宣言下に殆ど自宅から出ずに生活している間は、暇さえあればSNSを見たり本を読んだりしていたのに、こうして用事を済ませるために外出して一日歩いたり自転車に乗っていたりすると、どうも暇に感じる。東京のど真ん中で、二宮尊徳のように歩きながら本を読むわけにもいかず、その一方で目的地に行き、用事をするにはそれなりの時間を費やさねばならない。外を歩いている間のかなりの時間、頭の中では、後になって全く思い出せないような碌でもないことばかりを思い浮かべたり、打ち消したりしていた。この信号変わる前にリュックに入れてある炭酸水飲めるかな……とか。

歩くのは暇だといいながら、余計な用事のために某所のビックカメラに寄ってみた。買おうか迷っているKindle Paper Whiteを試すためだったが、電子書籍端末コーナーには楽天から出ているKoboしかなかった。店員さんに聞きたくても、手の空いている人がいない。待ってもなかなか捕まらないので、諦めて帰ることにした。

アンラッキーといえばそうだが、『三体Ⅱ』を発売日に買えたラッキーの方が大きい。せっかくなので少し読んでから寝ようと思う。



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