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アルバム制作裏話~02 : 証してくれよ~



「個性が大事って誰言った?」



この訴えが一番のメッセージであるこの曲。



この曲が生まれたのは、日本では当たり前の日常の1ページから生まれた。



当時20過ぎの私には、社会人になりたての兄がいた。
正社員というものを経験していない私からしてみれば、
社会人2~3年目はとてもキツイらしい。

そんな社会人2~3年目の兄は、家に帰ったときは、常に部屋にこもりっきりになっていた。


男性の自殺者が多いのも、
「強いところを見せないといけない」という固定観念があり、
親に相談できずに独りでいなくなってしまうパターンも多い。


日本では特に、「男性=強さ」と結びつける人が多いことにより、
自分の弱っているところに目を向けず、
「自分は強くあるべきだ。」「自分はこんなところでへこたれてはいけない。」と、
自身の体にムチを打ってしまう人がいる。



身近で辛そうにベッドで横たわっている人がいること、
そして、現在の日本の社会的な情勢を見て、


まず私の頭の中には、「夜に男の人が、体に力が入らず、ベッドでぐったりとしている」映像がふと浮かんだ。

この映像で曲を作りたいと思った。




次に、じゃあ、その映像の男の人が、「何」を理由でぐったりしている設定にしようかと考えたとき、
ある私の中で常に抱いていたある「疑問点」が、その世界観とマッチした。


その「疑問点」というのは、
「個性って本当に大事なのか」ということ。



日本では結構あるあるだと思うが、
公立中学校や公立高校では、校則に従って、皆同じような格好をさせられることが多い。

尚且つ、日本では、個性が強い人がいると、
その人を煙たがったり、排除しようとする動きが頻繁に行われている。
そして、同じような人たちでつるんで、性質の違う人をシャットアウトする。


「愛嬌」「協調性」というものを重きにする日本では、
「人に好かれること」が重視され、「人に好かれる人」が仕事が沢山来たり、集まりに呼ばれたりする。
それ以外の人は、社会から外されたような感覚に陥る。


私自身も、「個性が大事だ」と特に言われる音楽業界に足を踏み入れているが、
活動をしていて、「個性が大事」なんて心の奥底で感じたことは無かった。

結局、どんな人からも愛される人や、キャッチーな人
どんな人にも愛想を振りまけて、尚且つカリスマ性がある人ばかりが、
色んな仕事の話が来ていた。
例え実力があったとしても、その上記のことがクリアできないと、日本の音楽業界では評価されない。


そういったことから、常に「個性」というものに疑問を抱いていた。




「人に好かれるために常に気を張って仕事相手に接している男の人」
「家に帰ったらもうクタクタで、何も気力が湧かなくなっている男の人」

この像が明確に決まった私は、本格的に曲を作り始めた。


パソコンのDAWを立ち上げ、当時インスピレーションを受けていた、
藤井風さんの「死ぬのがいいわ」のサウンドをオマージュさせながら、
トラックメイクをしていった。

同時に歌詞とメロディも考えた。



そうやって、トラックも歌詞もメロディーもそんなに時間をかけることなく、トントン拍子で出来上がった。


しかし、一つ問題点が見つかった。

それは、私の作ったサウンドには「強さ」「現実感」が無かったということ。


今配信している「証してくれよ」を聞いてもらえると分かると思うが、
2番のサビ以降から、ギター系の音が入っているのが分かると思う。

私がその当時一人で作っていた音源には、「ギター」が無かった。


最初の方で言ったように、
日本では、「男性=強さ」と結び付けられることが多い。
実際に私が想像している映像の中にでてくる「男の人」というのは、
まさに「男性=強さ」というものに影響を受けている男性のことを指していた。


私が使っていたのは、ピアノ、シンセパッド、シンセベース、エレクトリックドラム、ループ系のシンセパーカッションだったが、
それだけでは、どうしても浮遊感が強い印象になって、
「強さ」も無いし、「現実感」も無かった。


私自身の編曲は、「幻想感」「優しさ」が特徴的で、何をしても必ずこの特徴は出てしまう。
「当時の」私からしてみたら、表現に限界があった。



そこで私が取った行動は…。

他の人の力を借りるということ。




私がいつも編曲でお世話になっている音楽プロデューサーの日吉拓哉さん(以下、タクP)にヘルプを求めた。


そして私は一言言った。
「ギター系を入れてください。」と。


アコースティックギターなのか、エレキギターなのか、私が求めていたのはどの音なのかよく分からなかったが、
「もう少し強さが欲しい」という希望を叶えるべく、共同制作が始まった。


アコースティックギター、エレキギターと少しずつ音を組み立て、
足りない部分にシンセエフェクト系の音を入れ込み…

驚きのことに、制作はほんの1~2時間で終わった。

作曲は、トントン拍子に進めば進むだけいい曲になる。


タクPに足りない部分を補ってもらったことで、
私の曲の特徴である、「幻想感」「優しさ」を残しつつ、「現実感」説得力のある力強さが兼ね備えられ、
今の楽曲になった。


この曲は、私の中での大きな進歩となった。

当時明るい曲を意識的に作っていたことから、
この曲を作っているとき、「こんなに暗い曲を出してもいいのか」
「バッシングを受けないか」
という不安があった。


しかし、この曲のおかげで、自分は、
自分自身がアーティストとしてどういう立場でいたいのかということも本音ベースで分かることができ、
一つの大きな気付きになった。


そして、私が不安であった「バッシング」も今のところ受けることなく、
聞いてもらえている。


今辛い毎日を送っている人に、
映像を通して見てもらうことによって、
少しでも心が救われた気持ちになるなら。
私は嬉しい。


冷たい夜が更けていっても、
また同じような日常の繰り返しで、
心を失くした状態で毎日を送っている。


そんな人にこの曲は聞いてほしい。


そして、この曲はMVも作っている。
海外の人にも聞いてもらうべく、英語ver.の歌詞も作っている。


この曲が、世界中に広がってくれることを心から願っている。


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☄最新リリース情報☄

1st.album 「律-ritsu-」
8月12日(土)リリース!

Apple MusicやLINE MUSIC、Spotifyなど、
各音楽配信ストアで視聴可能。


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