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#047 落ち葉と一日

早八(zao3ba1)と呼ばれる一限目は8:10から始まる 
この時間の講義に出るのは週に2回

普段はオートロックで閉じられているマンションのエントランスも 通勤ラッシュ時には開け放たれているので ロック解除の手順を踏まずにそのまま街に繰り出す外での一日が始まる瞬間である

わたしが娘を幼稚園に送り届ける場合は市バスに乗り 数分揺られたらとある公園の前でバスを降りる
通勤時間帯の公園では市の清掃員が公園の落ち葉を掃き集めている

公園を抜けて無事に娘を幼稚園に送り届けた後は 先ほどとは少し違うルートで大学に向かう
バスに乗ることも可能だが バスを待つ時間やラッシュ時の道路状況を考えれば歩いてもさほど時間は変わらない

加えて 体育の先生からの課題が毎月最低10日は1万歩以上歩かなければならないというもので できるだけ歩いてその課題をクリアする
正確に言えばこの課題は1万歩以上歩く以外にも 月に10日以上運動したことを証明できればいいので 例えば運動系のサークルに所属しているクラスメイトはサークルの参加状況で課題をクリアしている わたしも10日以上ヨガに行けた時はヨガの記録を提出しているけど 万が一10回に満たなかった時のためにできるだけ歩いて確実に課題をクリアするように努めているのだ
元々歩くのは好きなので苦ではないが 気ままに歩くのと半強制的に歩かされるのでは気持ち的な感覚が違ったりする

課題のための歩数稼ぎを終えると いよいよ講義の始まりだ
残念ながら朝ごはんを食べる時間がないので 大抵は大学のそばにあるフレッシュジュースやさんか学内のコンビニで買う野菜やフルーツ系のジュースで済ませる
勢いよく吸い上げてカップを空にすれば 足早に教室に向かう 朝のフレッシュな香りを味わうのは最初の一口だけである

眠気と闘いながらもなんとか50分ふたコマの講義を終えると朝10時 10分間の休み時間の間に教室を移動をする学生たちがキャンパス内を行き交う 
キャンパス内の地面にも落ち葉は散らばっている
時々グラウンドの芝刈りなどと一緒に 業者の人たちが落ち葉を集めているのをみたりもするけど この日の落ち葉はまだ落ち葉のままでいた

空腹に耐えながらの2限目を終えるとちょうど12時 キャンパス中の人々がみなランチタイムに繰り出す 学食に行く人や 周辺の飲食店に向かう人 宿舎や自宅に戻る人 それぞれのランチタイムを過ごす

わたしはこの曜日 ランチ後から次の講義までが中空きになっているので 一旦自宅に戻り簡単に食事を済ませたり 溜まっている家事をこなしたりした ある日はヨガに行ったり またある日は友人に会ったり 過ごし方はその時々によって違うけれど この時間を有効活用することはわたしにとっていいリフレッシュになっている それは大量に落ちている落ち葉をかき集めるようにして脳内の混沌をクリアにする時間である

15時を回ると最後の講義に向かう(もちろんこの中空きの移動は徒歩である しっかり歩数は稼いでおかなければ)夕方にさしかかるこの時間の講義はほとんど頭が働かない上に 内容が難しい 講義の内容や教授の色などでそれぞれ難易度が違うと思うが この日の最後の講義はネイティブのクラスメイトからしても難易度が高いらしい このような”キツイ”講義のことを”硬課”とかいてyin4ke4という 逆に比較的”ラク”な講義は”涼課”とかいてliang3ke4という
硬いの逆は軟らかい 涼しいの逆は暑い/暖かいであるのに きっちり対義でないのはそのニュアンスにそぐわないからだろう
そんなことをぼんやり考えているうちに講義はあっという間に進んでしまい 毎回そのスピードについていくことができない

ああ 今日も理解度2割で1日を終えた


帰り道 人やバイク 車によって散り広げられた落ち葉 踏まないように避けて歩くことはもはや難しい
頭の中にとっ散らかった今日1日のこと 明日の朝にはまた 落ち葉と一緒に綺麗にしてしまえたらいいのに
そんなふうに思いながら わたしは落ち葉を踏んで歩いた



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