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#009 赤(紅)と爆竹〜春節の風習〜

伝統的なイベントごとが旧暦に沿って行われる中華圏では2月1日が2022年の元日となり 台湾もやっと本格的に新しい一年のスタートを切った

台湾在住6年目でありながら実際に台湾らしい年越しを味わったことはない 強いて言えば人がいなくなり静まり返った台北の空気を味わったり その台北に残る少数の人々が静寂の街に打ち鳴らす爆竹の音を聞いたりするぐらいだ


会社や学校はもちろん 飲食店など商業関係も多くは除夕と呼ばれる大晦日から正月休暇に入る そのためこの期間に必要な買い物は事前に済ませておく必要がある

ただコンビニやデパート、スーパーは通常もしくは時間を少し短縮しても営業しているので 本当に困ったらそれらにお世話になればいいのだけど


春節とも呼ばれる旧正月でイメージされる色は「赤」である この時期になると街中が赤に染まっていく ではなぜ赤が用いられるかご存じだろうか

中華圏では縁起がいい色だから? 魔除けの色だから?


答えはどちらとも言えるが 春節にはとある言い伝えのようなものがある その言い伝えからも赤が用いられるようになった理由がわかるので 紹介したい


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その昔 人々が住む里からほど近い山の奥には 「年」と呼ばれる獣がいた

「年」は一年じゅう山奥で眠っているのだが 大晦日の夜だけは食べ物を求めて人里に降りてくる 「年」はなんでも食べてしまう もちろん人も

そのため人々はこの「年」を恐れて毎年大晦日になると里を離れなければならなかった

ある年の大晦日 皆が例年通り里を離れる準備に追われていると 見知らぬ老人が里に訪れた 見るからに貧しそうな老人を相手にしている暇はなく 人々は片手間で彼に忠告した 「ここにいては年に食べられてしまう あなたも急いでここを離れなさい」

ところが彼は「わたしは年など怖くない」と言った そして一人の住民に自分が年を追い払って見せるから一晩泊めてくれと頼んだ 住民は好きにしてくれと言ってその貧しそうな老人に家を貸した

人々が里を離れると老人は何やら準備を始める 

夜になると「年」はいつも通り里にやってきた 食べ物を探し求めて家に入ろうとすると赤い紙が貼ってある 「年」は強い赤が刺激になり目が焼けてしまう 

すると今度は大きな音がする 老人が爆竹を鳴らしたのだ 「年」の耳は大きな爆竹の音で潰れてしまう

これによって「年」は里を荒らす間も無く山へと逃げ帰るのだ


翌朝 里に戻った人々は荒らされた形跡がないことに驚く 老人は「年」は赤色と大きな音で追い払えることを人々に伝えた すると間も無くして老人は姿を消す 人々はこの時老人がホームレスではなく神様だとした

そして人々は翌年から 家の前に赤い紙を貼り、爆竹を鳴らすようになった 

*ストーリーの内容は諸説あるが大まかなところは同じである

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つまり「年」と呼ばれる獣を追い払い 安心して新年を迎えるために赤い正月飾りを使用し 爆竹を鳴らすというわけだ


この他に 大晦日から元日にかけて夜通し家の明かりをつけておき悪いものが家に入って来ないようにする というしきたりもあり 現在でも大晦日の夜を寝ずに明かし新年を迎えることを「守歳」という


わたしも大晦日の夜 友人とSNS上で会話をしながら図らずも楽しく「守歳」をしていた 楽しく会話しながら悪いものをしっかり追い払うことができたと思うとなかなか良い一年のスタートを切れたのかなと嬉しくなった 


皆様の一年も良いものになりますように




*登場する中国語

除夕  chú xī/ ㄔㄨˊ  ㄒㄧ

春節  chūn jié / ㄔㄨㄣ ㄐㄧㄝˊ

年獸  nián shòu / ㄋㄧㄢˊ ㄕㄡˋ

紅色(赤色) hóng sè / ㄏㄨㄥˊ ㄙㄜˋ

守歲  shǒu suì / ㄕㄡˇ ㄙㄨㄟˋ


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