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#062 初夏の汁なし牛肉麺

15分早く講義が終わり ランチタイムのラッシュを控えた空気感を切って歩いた
週に3回のランチは大学の構内かその周辺およそ半径500メートル内の範囲で済ませるが 今日は週一でお世話になっているお弁当屋さんも通り越して一軒の食堂に足を運んだ

大きな集合住宅の中を突っ切って進むとチラホラと昼の買い出しに出かけ始める人が出てきていた 

初夏というのだろう 台湾の季節感というのは日本の四季で育ったわたしにとってなんとも表現し難いものだ それでも今はどんな季節かと言われればそれはきっと初夏なのだろう 日差しが強くなった正午 気温こそ30℃に達しているが日陰に抜ける風はまだ心地よい日だ

あまり考え事をする間も無くたどり着いた一軒の食堂はローカル麺の店だ
ここのメインは拌麵と言う汁なしの麺だ 一般的な拌麵というのは葱油ベースのタレが麺の下にあって 揚げたニンニクやネギがトッピングされているものが多い これらをしっかりと和えてからいただく この店にもネギの産地で有名な宜蘭三星のネギを使った拌麵がある

しかし今回わたしがいただいたのは一般的な拌麵ではなく このお店がおそらく売りにしているであろう汁なし牛肉麺だ 台湾飲食店ではおすすめメニューやそのお店の売りの商品がメニュー表の一番上に記載されることが多い 
例えばドリンクスタンドなどでメニュー表の最初にくるものがシンプルなお茶である場合は ベースとなるお茶にこだわっていて粉末ではなく選び抜かれた茶葉から煮出したお茶を使っているので 芳醇な香りとお茶本来の旨味がお店の自慢である またタピオカミルクが先行している場合は 国産の黒糖を使って丁寧に仕上げたタピオカと国産牛乳で作り上げる濃厚な飲むスイーツが自慢なのである

そしてこの食堂の一番上は言わずもがな汁なし牛肉麺なのである 台湾で牛肉麺といえばスープの味が二、三種類から選ぶことができるものが一般的なのだが 昨年台湾南部の高雄に旅行に行った際に食べた汁なしの牛肉麺がものすごく美味しくて衝撃を受けたことがあった これは台北では見たことも聞いたこともないと思って次回の高雄行きが待ち遠しいとさえ思っていたのだが 調べてみるとどうやら台北でも食べられるところがいくつかありそうだとわかった そのうちの一軒に腰を下ろしているというところ

先払いが主流のローカル店では珍しく支払いは食後のスタイルのこのお店 12時前に入ったおかげですんなりと席に着くことができたが 徐々に人が集まりすぐに数人が待機する状態になった 持ち帰りで買っていく人もいてその人の流れに期待は高まっていった

ついに運ばれてきた主役 小サイズといえどしっかり量はありそうだ 一緒に頼んだ卵いりのスープの到着を待ってから箸をもつ 例に従い底に敷かれているタレと麺をよく和えていく ちなみに中国語で「混ぜる」という意味の言葉は「攪拌」とかいてjiao3ban4というので拌麵というのはそのまま混ぜ麺ということになる

さて麺がタレとしっかり馴染んだところでようやく口に運ぶ 幸か不幸かその味はなんとも普通であった 期待しすぎたというつもりはないのだが やはり高雄で食べた感動の味ではなかったことと とはいえ癖が強くて食べられないという物でもなく 本当に普通であった 肉も街中のローカル店らしくそれなりに柔らかく煮込まれており味もそれなり ハズレではないといえばラッキーだが 台北でも通いたいと思うほどの汁なし牛肉麺の発掘にに至らなかったといえばそれはアンラッキーであった

食後に支払いを済ませたら 午後の風に髪を揺らしながら歩く 講義に戻る前にお茶自慢のドリンクスタンドにでも寄っていこう

今回は北部で美味しい汁なし牛肉麺の店を探すことが わたしの台湾生活での新たなタスクとして加わったことをここに記しておく



*中国語
混ぜ麺=拌麵  ㄅㄢˋㄇㄧㄢˋ /ban4mian4
牛肉麺=牛肉麵 ㄋㄧㄡˊㄖㄡˋㄇㄧㄢˋ/niu2rou4mian4
宜蘭=宜蘭 ㄧˊㄌㄢˊ/yi2lan2
三星=三星 ㄙㄢㄒㄧㄥ/san1xing1


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