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#4 初めての海外旅行〜ブリュッセル編〜


初めて海外旅行をしたのは19歳のとき 通っていた専門学校の研修旅行だった

研修旅行といっても希望制で 一年次から就活をするほど忙しい専門学校なので 参加する人は極わずかだった 17人いるわたしのクラスから参加したのはわたしを含め3人だけ 隣の学科との合同旅行だった

旅を共にした2人のクラスメイトは既に海外旅行の経験があったので 何も分からないわたしは2人に任せっきりでほぼついていくだけの形になった


初めて乗った外資系エアライン
真っ白な機体に赤字でSWISSと書かれ 尾翼には国旗と同じく白抜きの十字マークがあしらわれたシンプルなデザイン Swiss international Airlines(スイス航空)だ

しかし目的地はスイスではない

チューリッヒで乗り換え降り立ったのは 時計やチョコレート そしてワッフルなどで知られる国

ベルギー ブリュッセルだった

当時のわたしは海外についてどれだけの知識があっただろう どれだけの興味があったのだろう


この研修旅行に参加することを決めたのは母の一言があったからだ
「学校でこんなのがあるらしい でもお金もかかるし 任意だからうちはいけないかー」と離れて暮らす実家の母に話したところ
しばらくして「海外旅行なんて一生にこれっきりかもしれないんだし 行ってきたらどう? お金はなんとかするよ」

そのひと言がわたしのその後の人生を変えた この時の会話を母もわたしもはっきりと覚えていて 度々思い出話になる


初めて経験するロングフライトもモニターのあらゆる機能を試したり クルーの動きを注視したりしていると あっという間に感じた 中でもユーモアあるクルーの「ONIGIRI!」といって軽食のおにぎりを軽やかに配っていくシーンは まるでエンターテイメントのようで今でも鮮明に覚えている わたしの番が来て手を差し出した時 彼は口角を上げてニヤリとした そして手元に置きかけたおにぎりをヒョイっと持ち上げたのだ 彼はわたしの間の抜けた顔を笑ったに違いない 

「これが外資かぁぁぁ!!!!」

おにぎりの具材や味など全く覚えていないが 彼のユーモアあるサービスは一生忘れられない 自分がサービスする側に立っても彼を越えることはできなかったなぁと思う


ブリュッセルに着いて 自らの足で外国の地を歩いてみると まるで夢の中にいるような気分だった
すべてが美しくて すべてがわたしの中に存在しなかった世界だった
初めてにして いきなり The外国!を味わったのだ

ブリュッセルの街でチョコレートやマロングラッセなんかを買い 巨大なワッフルを3人でわけて食べたりした ずらりと並ぶクラフトビールに引き込まれ 試飲を勧められるも 未成年だったので断念したりと悔いも残しつつ とにかく歩くだけで楽しかった

ガッカリスポットで有名な小便小僧ですら感激した

クリスマス支度を始めたばかりのグランプラスの一角で絵葉書を買った 世界で最も美しい広場と称されるその場所に立つと いよいよ ここにいることが夢か現実かわからなくなった

デジカメを買う余裕もなく 景色をおさめるのに使ったのは当時持っていたトイカメラだった とはいえ写真を撮られるのも撮るのにも慣れていなかったから いい写真が全く残っていないのが悔やまれる 学生時代あれほどプリクラに明け暮れていたのにカメラに対する耐性があまりにも低すぎて自分でも可笑しい

この街で出逢ったNeuhaus(ノイハウス)という有名なチョコレートメーカーは今でもわたしの中で1番だ チョコレートは基本的に好きだし美味しいお店は他にもたくさんあるけれど 1番を決めるなら絶対にノイハウス 理由は説明できないくらい感覚的なものだけど 一粒を堪能する贅沢を 初めて知った当時の感覚が忘れられないのかもしれない

デパ地下も知らない田舎育ちの19歳にとって スーパーやコンビニで買える あの慣れ親しんだものとは違う 新たなチョコレートの世界を知った瞬間のことだ 


とにかくすべてが新しい世界 すべてが忘れがたい経験 一度に吸収しきれないほどの衝撃を味わったあの日

ふわふわしっぱなしの初海外だったけど ホテルのシャワーのお湯が出ないなんていうあるあるにも当たって 友人と英語のセリフを唱えながらフロントに行ったことも忘れられない旅の1ページだ







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