「柳生忍法帖」の原作小説を読みました

 演目発表を見て原作小説が気になり、読んでみました。漫画版は読んでいません。以下、ツイッターでみなさんが気にされていたポイントをざっくりまとめました。
 できるだけネタバレを控えたつもりですが、ネタバレNGな方は避けてくださいね。

星組公演を観る前に、予習として読んだ方がいい?

 どう頑張っても原作通りには上演できないので、読んでも宝塚版の予習には(多分)なりません。予習(名前を覚えたいとか、あらすじを把握しておきたいとか)のためだけなら読まなくても問題ないと思います。

面白い?

 敵との死闘は面白いと思います。阿弖流為を彷彿とさせる感じ(大野先生だし)。アクションシーンはド派手で、縦横無尽に駆け回り敵を薙ぎ払う柳生十兵衛や娘役さんたちが見れると思います!敵方も、剣・槍・拳・女の髪で編んだ網・猛犬など戦い方が多種多様。ただ、犬を3匹使ったり幻術を使ったりと到底実現不可能と思えるバトルも多いので、その辺りは映像を駆使して…っていう感じになるのかなぁ。そういうところも含めて阿弖流為っぽくなりそうです。次から次へと出てくる敵を倒していくアクションバトルもの、という意味では月組さんの夢現無双に近いかも。って書いていて気付いたんですけど、柳生忍法帖にも夢現無双にも似たような立ち位置で「沢庵」っていうお坊さんが出てくるな…!

グロいの苦手でも読める?

 わたしもグロい表現を好き好んで読むわけではないのですが、「ひぐらしのなく頃に」シリーズがいけるなら読めます。あれで気持ち悪くなる人にはあまりおすすめしないです。例えが二次元オタ向けですみません…。
 ちなみに、序盤の寺の場面が一番グロいので、そこさえ乗り越えられればあとは大丈夫だと思います。そこからあとはエロ>>>>グロという感じ。アクロバティックグロ。読んでいるうちにグロ表現に馴れてくるのもありますが。
 動物(犬・馬・鳥)を容赦なく殺す場面は複数回あるので、そういう表現が苦手な人は避けた方がいいと思います。人間も100人以上じゃんじゃん死にます。二つに割られて死ぬのが多いです。

宝塚に向かないかもってどういう意味?

 原作のメイン要素が「アダルト」であるという意味です。原作の文章の3割以上がアダルト描写という印象です(※あくまで体感です!文字数を数えたわけではないです、すみません。作者の力の入れ具合という意味です。ちなみに他にはアクション・グロが2~3割、人物描写が2割、時代背景が2割という感じかなぁ)。
 宝塚で上演できるレベルにまでアダルト要素を抑えることはできると思います。柳生十兵衛と7人の女たちが結託して極悪非道の殿様とその家来たちを倒す勧善懲悪モノ、みたいに。ただ、そうなると原作の3割以上を占めるメイン要素を排除することになるので、後に残ったものって本当に柳生忍法帖なの…?という感じではあります。おいしいとこ全部とっちゃう、みたいな。

「宝塚でやったらつまらなさそう」という意味ではないです。

 どうあがいても宝塚でやるにあたっては原作からかけ離れたものになるので、ストーリーとか演出とかに対する不安は逆にないです(というか、原作と全然違うものになると思うので予想ができません)。宝塚らしく・キレイに・楽しく・溌溂とすみれコードの範囲内でまとめることは可能だと思いますが、そのためには原作のメイン要素であり評価されている部分であるエログロをばっさりカットしないといけないので、宝塚初見の原作ファンの方がエログロの部分だけを目当てに観劇したらがっかりするんじゃないかなぁ…という印象です。
 原作が書かれたのは1964年ですし、当時の時代劇としてはこれくらいはまぁあるでしょうねという感じで、「キーッ!女性蔑視!ありえない!」と怒っているわけではないです。原作は「イェーイ!トンチキエロアクション時代劇読むぞ!」って気分のときにはおすすめですが、そんな気分で宝塚観る人いなくない?

じゃあ何が嫌なのか

①公演にむけて、タカラジェンヌ・宝塚ファンの人たちが、アダルト要素・グロ要素の強い小説だと知らずに読んでしまうこと。
 アクション時代劇読むぞー!と思って読み始めたら冒頭のグロ描写にびっくり、さらにその後のアダルト描写でドン引き、となりかねないです。
 アダルト描写も生易しいものではなく、加虐趣味(死に至るレベル)・強姦(男→女、女→男のどちらもある)・拉致監禁その他アブノーマルのオンパレードなので、それなりの心構えがないとうっかりトラウマになりかねません。心の準備をしてから読んで下さい。
 大野先生がこの原作を読めって生徒たちに指示したら、セクハラにあたるのでは…?と思うレベルのアダルト作品です。下級生だと未成年もいるしさ…

②宝塚を全く観たことがなく、柳生忍法帖がどんな作品かを知っている人たちに、「宝塚が柳生忍法帖をやるんだw」と思われること。
 「清く正しく美しく」の劇団があのドエロい作品をやる、と思われるのが怖いですね…。宝塚ファンならばこの原作をそっくりそのままやるわけじゃないって分かると思いますが、そうじゃない人たちは実際どれくらい脚本が書き直されそうなのか分からないと思いますので、「あんな濡れ場やこんな濡れ場をタカラジェンヌがw」って下衆な想像をされてしまったら…と思うと本当に嫌です。
 ※「宝塚ファンじゃない柳生忍法帖オタクだってさすがにあれをそのままやるとは思わないよ」という意見を見てちょっとは安心しました。ちょっとは。



以下ネタバレあり

以下はネタバレを含みますので、観劇前に詳細を知りたくないという方や、これから原作を読もうと思っている方にはおすすめしません。あくまでも私個人の感想なので、変な先入観を抱かせてしまったら申し訳ないからです。







具体的にはどんなアダルト表現があるのか?

 裸の女を布団代わりに床に並べてその上で別の女と致したり、雪(※会津の冬)の降る晩に裸の男女を結わえ付けて庭の池に放置して凍らせ(もちろん苦しんで死んでいく)、それを見て興奮した妻と致したり、裸の男女を200人集めて生きたまま部屋の床と壁に敷き詰めて暇なときに床の乳首をつねったりしてる。ぶっ飛びすぎてて、逆にエロいのかどうかもよくわかんなくなってくる、トンチキエロ。

登場人物・配役の比重

※○○役たのしみ~!とか言えなくなるから閲覧注意

味方側
柳生十兵衛:主人公。剣術に優れていて、堀一族の娘たちに武芸を仕込む。隻眼のため素顔を見られると正体がバレるおそれがあり、般若の面をつけて行動する。般若の面、会津への旅道中以外は基本ずっと付けてた気がするけど大丈夫かな。他の男性陣と比べるとすごくピュア。濡れ透けをみて頬を赤らめたりしている。公演解説では「惚れ惚れするほどの格好良さ」とありますがたしかに強くてかっこいい。あと隣で女が寝ていても強姦しないという常識がある。当たり前だわ。

堀主水:堀一族のトップ。主である会津藩主・加藤明成の色情狂っぷりに愛想を尽かして出奔したら加藤明成にキレられて一族郎党皆殺しになった。序盤で出てきてすぐ死ぬ。

沢庵宗彭:40~50代の、わりと位の高いお坊さん。兵法にも造詣が深い。柳生十兵衛と堀一族の女たちが復讐を果たす手助けをするため、同行する。エロシーンがない(お坊さんだから)。序盤~後半にかけて出番が多いのでもしかしたら2~3番手あたりかもしれない。

堀一族の女たち:会津七本槍に一族郎党を惨殺された恨み晴らさでおくべきか!必ず私たち7人の手で殺してやる!と発起する(つまり柳生十兵衛は七本槍を殺さない、というルール)。全員美女。お千絵(一番美人でリーダーだけど別に出番が多いわけではない)、お笛(ロリ枠、登場時は坊主頭)、お鳥(おしゃべり)、さくら(中世的な見た目)、お圭(未亡人)、お品(未亡人)、お沙和(未亡人)の7名。全員出番の量は同じくらいで、どんな酷い目に遭うかがちょっとずつ違う。

おとね:後半からの登場なわりに出番が多い。上記の7人よりキャラが立っている。物語中盤で拉致されて加藤明成の旅の篭に投げ込まれ強姦されながら旅のお供をさせられる。かわいそう。終盤は沢庵和尚とニコイチで、ずっと気がふれた演技をしている。かわいそう。娘2~3かな?って感じの立ち位置。

天樹院(千姫):復讐を誓う堀一族の女たちの後ろ盾となる。豊臣秀頼の元妻なので、政治的に超強い立場にある。メイン女性キャラの中でたぶん唯一ヨゴレ場面がない。年齢は40〜50代くらい?娘がいる。娘2~3かな?って感じの立ち位置。

敵側
加藤明成:会津藩主。敵。色情狂のエロ殿様。特殊性癖全部持ち。下半身の元気度と本人の元気度が比例するタイプ。国を治める能がない、二代目ぼっちゃん。治世能力がないのも色情狂なのも世間にバレている情けない人物として描かれている。最後は性器を切り落とされ、妻おゆらに捨てられ、島流しにされるけど、全編通して出番が多いのでもしかしたら2~3番手あたりかもしれない。

おゆら:会津藩主・加藤明成の妻。芦名銅伯が80歳の時にもうけた娘。いわゆるエッチな人妻美女。夫へのサプライズ♡裸の男女を200人集めて生きたまま部屋の床と壁に敷き詰めてみた!を素面でやる。加藤明成の精力が大好きなので、加藤明成の性器が切り落とされた瞬間に柳生十兵衛に心変わりして自ら媚薬を嗅いで文字通りまとわりつくようになる。最後は銅伯から十兵衛をかばって刃を受けて死ぬ。←この辺が宝塚っぽ~い!って大野先生が思っちゃってたら娘1確定枠。

会津七本槍:会津藩主・加藤明成の手下。それぞれ武術に優れている。人を嬲り殺すのが大好きだし特に美女殺しが好き。加藤明成が抱き飽きた女をおさがりでもらって、強姦したあと殺して床下の井戸に捨てる趣味がある。物語後半に差し掛かる前から柳生十兵衛と堀の女コワイヨ〜!ってビビり始める。敵キャラのわりに小心者集団。宝塚版ではせめてもうちょっとかっこよくしてほしい。最終的には全員死ぬ。
①具足丈之進:3匹の犬を使って戦う。犬使いなのに見た目は猿そっくり。前半で死ぬ。(犬も3匹とも死ぬ…)
②鷲ノ巣廉助:巨男でなんでも壊す。寺の分厚い扉に穴を開けたり、指一本で竹にプスプス穴を開けたりする。生きた女の足首を縛ってネックレス代わりに首から2人ぶら下げてご機嫌。中盤で死ぬ。
③大道寺鉄斎:鎖鎌を投げて戦う。若いモンには負けんわい系爺さん。七本槍の中で最初に死ぬ。
④司馬一眼房:隻眼。超長い鞭で戦う。七本槍の中ではわりと頭使うほう。後半で死ぬ。
⑤平賀孫兵衛:超長い槍で戦う。人とか馬とかを突き殺してそのまま死体を振り回す。前半で死ぬ。
⑥香炉銀四郎:顔の真ん中に縦に傷がある美少年。女の髪を編み込んだ網でいろいろ捕まえる役割。終盤で死ぬ。死んだ後も切り落とされた手首だけで動いて網を操れる。←こわい。
⑦漆戸虹七郎:片腕の剣士。血の臭いが嫌いなので人を斬る前は花を折って咥えるらしい。七本槍の中で最後まで生き残るけど死ぬ。

芦名銅伯:魔法が使える107歳のワンダーじいじ①。会津のブレーン。後半~終盤の出番がめちゃくちゃ多いのでもしかしたら2~3番手あたりかもしれない。そうじゃなかったらベテランさんの役。

その他
南光坊天海:魔法が使える107歳のワンダーじいじ②。超えらいお坊さん。たぶんベテランさんの役だけど出番が少ないからわからん。

まとめ

 宝塚版はエロくもグロくもないと思うので普通に通うつもりです。モアダンディズム楽しみだしね!

 この表現を宝塚でできるわけがないので、設定だけを借りた全くの別物になるだろうし、それを「柳生忍法帖」と銘打って世間に発表するのって宝塚サイド・原作サイドの双方にとって得にならないんじゃ?って思います。
 タイトルじゃなくてサブタイトルを柳生忍法帖にするとか、「原案・柳生忍法帖」にするとか、とにかくそのものズバリは回避して…ほしいなあ…。ポスターだけ見た人に「宝塚があのエロ本を舞台化するんだ」って思われるのめちゃくちゃハイリスクじゃないですか?演目にGOサイン出したえらいひとたち、その辺考えたのかなあ。宝塚歌劇団って、未婚の女性しか所属していない劇団なんですよね…?

 男性客を取り込みたいのかな、とも思うんですけど、「男性客を取り込みたい!よし!シティハンターだ!」まではまだわかる。でも、「よし!柳生忍法帖だ!」はわたしにはわからない…。エロ本だし…。「こんなの全然エロくない!お前が過敏なだけだ!」って言われたらもうそりゃそうですね価値観の違いですねとしか言えないけどさ。

 とにかく、星組生たちが公演に向けて予習するにしても、前情報無しでこの原作を読んでほしくないなぁ…。彼女たちには「出演する・出演しない」という選択権が(事実上)ないので、原作を読んでウワッと思っても、やっぱやーめた!という選択肢がないんですよね。モヤモヤを抱えたまま役作りをする羽目になるくらいなら原作は読まず、宝塚ナイズされてクリーンな状態になっている脚本だけを読んで、翳るところなく公演に臨んでほしいなあと願ってしまいます。宝塚ナイズされてクリーンな状態になった柳生忍法帖はもはや柳生忍法帖ではないと思いますけどね。

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