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夢を語る

吹奏楽の甲子園、通称『ブラックステージ』に立ちたくて、中学高校の6年間言い続けた言葉がある。

「目指せ全国大会金賞!」

本気で目指したいと思ったのは、吹奏楽コンクールの一番下の大会で敗れた中学2年の夏。

来年、吹奏楽コンクールで全国大会に行くためには、アンサンブルコンテストに出て上手くなるしかない。
吹奏楽コンクールは約50人で出場する吹奏楽のメインイベント。主に春から夏、そして全国大会が秋に行われる。
アンサンブルコンテストはその後、冬から春にかけて行う3人から10人までのグループを作って出場するコンテストだ。
前年、SAXパートの同級生がアンサンブルコンテストに出ていた。中学1年生だったのにかなり上手くなった。そうか、アンサンブルの練習をすれば上手くなるのか。SAXだけが上手くても吹奏楽コンクールで上にはいけない。金管楽器も上手くなるしかない。
顧問の先生に相談した。

「まずは、練習曲から持ってこよう」

先生が持ってきてくれたのは、プロが演奏しているようなCDも無い簡単な曲。
しかし、この後私たちはこの曲と半年以上向き合うこととなる。なんと、先生が初めに持ってきたその曲で全国大会までいったのだ。曲が簡単すぎて後にコンテストの審査員に「選曲はもう少し考えましょう」と書かれる始末だった。

特に特別な練習をした記憶は無い。
先生から言われていたのはシンプルなこと。
良い音を聴くこと。そして、音を出す際に綺麗な発音が出来ること、良い音でハーモニーがきちんと合うこと。秋口から練習し続けたのはこのシンプルなことだった。速いタンギングの練習や難しいパッセージの練習など無かった。シンプルなことが一番難しいのだけれど。

世の中の吹奏楽部でやっているのを見かけることも多い筋トレや、歌うことも体操服で部活をすることも無かった。朝練もしたことが無い。外部レッスンも無いし、怒鳴られたことも無い。
でも、全国大会に行けた。

顧問の先生がすごい先生だったのはあるけれど、何よりも一番は
「全国大会に行くぞ」
と先生が言い続けてくれたこと。
これが大きかったと思う。
部活の中で、「目指せ全国大会!」と口に出すことはなんの躊躇いもなく出来ることだった。
思い返すと、口に出すのも憚られるくらいのレベルの時から、みんな「全国大会に行く」と言い続けていた。

言霊はあるのだろう。

結果的に、中学2年の一番下の吹奏楽コンクールで敗れた私たちは、半年でアンサンブルコンテストの全国大会に出場した。
1番の目標だった夏の吹奏楽コンクールは、全国大会まであと一歩。支部大会で4位だった。3位までが全国大会へ出場できた。

悔しい思いはたまの同窓会でも出てくる。
そして『ブラックステージ』は憧れのまま取り壊しとなり消えてしまった。

今年の夏も、吹奏楽コンクールに向けて頑張っている学生も多いだろう。
大事なのは良い音を聴くこと。そして、綺麗に発音をして良い音が出ること。
シンプルだけど1番難しい。
でも、これが1番全国大会への近道だと思う。
曲の難しさに翻弄されないで基本を見直して頑張ってほしい。

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